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幾度とない危機を乗り越え

この章の最終話です。

 …………チンッ


 ギルガメシュさんがそう叫ぶのと僕が(キャロン)を鞘に収めるのは同時だった。



「倒しました。 もう大丈夫、他にいる気配はありません」


 僕の事は名前だけしか知らなかった奴隷たちが首を傾げながらギルガメシュさんの指示を待っている。



「ちっ……随分と化けやがって」


 ギルガメシュさんが不機嫌そうにそう言うと、バジリスクの死体を探し出すように命令する。


 運んできた8本足の爬虫類は背中が骨ばった突起が並んで、目は君の悪い緑色をしている。

 傷1つなく動かなくなっているバジリスクに驚いていると、ギルガメシュさんは躊躇する事なく矢を突き立てて血を抜き取りはじめた。



「何をしているんですか?」

「貴様はそれだけ力を得た癖に未だにど素人なままだな。 コイツに石にされた者はコイツの血で治せる。 覚えておくといいぞ」


 彫像になった奴隷にバジリスクから抜き取った血を塗るとすぐに生身へと戻っていく。


 前々から思っていたけれどギルガメシュさんって喋り方は命令口調だけど、なんだかんだで優しい親切な人だと思う。 奴隷に対してだって決して雑な扱いはしないし、カルラも元主従関係とはいっても尊敬している様子が会話から感じられた。

 もっとも、これを言ったら怒るんだろうけどね。 ちょっとだけギルガメシュさんの過去が気になったけど、今優先する事はそれじゃない、いずれ分かる機会も来るだろう。



「なんだ? 何か言いたい事でもあるのか『(オーラ)斬りのマイセン』」

「何でもないですよ」

「気になる言い方だが、聞かないでおいてやる。 それより貴様、随分と力をつけたようだな?」


 僕がとっくにバジリスクに気がついていた事に勘づいたギルガメシュさんが不機嫌そうに聞いてくる。



「まぁいい。 お互いのことを探り合う事はやめておくべきだろう。 な?」


 ウインクするように言ってくる。


 どうやら僕がギルガメシュさんの過去を気になっているのを釘を刺されたようだ。




「この辺りなら休むのに適してるだろう。 お前ら、ここで野営だ」


 バジリスクのテリトリーであれば早々近づくものもいない。 ここで休憩を取ったら一気に行けるだけ進むってギルガメシュさん僕に言ってくる。



 食事も済んで一息ついたところで、ギルガメシュさんに弓の事を尋ねてみる。 とんでもなく強力なギルガメシュさんの持つ弓に興味を持ったからだ。



「コイツか……」


 そう言うと僕に顔を向けないで、まるで独り言のように話しだした。



 その昔、地上に悪鬼(デーモン)が溢れでた頃の話らしい。 その時に悪鬼(デーモン)を倒してその弓を手にいれたレンジャーがいたんだそうだ。

 そのレンジャーは10年も経たないうちに呆気なく魔物に敗れて殺されたらしいんだけど、その時に仲間だった1人が貰い受けたんだそう。 それがギルガメシュさんの先祖なんだそうだ。


 でもそうなるとなんでお兄さんではなくギルガメシュさんが持っているんだろう? そういうものは普通は家宝としてお兄さんが引き継ぐものじゃないのかな?

 こういう事は深く追求するものじゃないだろうから聞くのはやめておくべきだろう。



「……おい、そこはなぜ俺様が持っているのか聞くところじゃないのか?」

「あ、聞いてよかったんですか。 探り合うのはってさっき言われたばかりだから、聞かないほうがいいものだと思ってました」



 聞くなと言ったり、聞けと言ったり、正直この人の掴み所が分からない……


 まぁつまるところギルガメシュさんは次男なのだそうだけど、お兄さんは小さい頃より病弱だとかで、旅立つ日にお兄さんに弓を渡されてもしもの事があった場合、ギルガメシュさんまで死なれていては困ると渡されたんだそうだ。


 でもそれって、お兄さんに子供ができたらどうなるんだろう?


 そこはきっと複雑な家庭環境っていうやつで、孤児院育ちの僕には決して分からない事なんだろう。






 数日後、僕はついに麓まで生きて帰ってこれた。 ギルガメシュさんとはそこでお礼を言って別れて、走って最初に向かったのは荒れた町並みを抜けて町外れにある孤児院だ。

 そこで僕を待っていたものが、この世界において最も最悪にして絶望的なことだとはこの時思いもしなかった。




次話更新は明日です。


次話から新章に入ります。

過去の作品に大きく関わってきて、徐々に謎も解けていきはじめます。


ちなみにマイセンの居合斬りは『(オーラ)』を絶つため、防御力無視で相手の生命を断つことができます。

しかも魂の呼応から、気配さえ感じ取れれば鎧はおろか、遮蔽物すら無視して攻撃することが可能です。

欠点としては、気配が読める距離にいる事と、気配を特定できる条件が必要になること、刀が鞘に収まっている必要があります。

不特定多数がいる場所になると、正確な気配を読むために距離も狭まります。


という設定です。


ちなみにウィザードリィのベインオブコズミックフォージだったかと思いますが、あのルールの侍を意識しているため、攻撃の際のスタミナ消耗が激しい=気力消費と考えているので、知っている方は知っていると思いますが、攻撃回数こそ多いけど、非常にガス欠を起こしやすい戦士をベースにしています。



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