ゴーストタウン
建物を出て僕が目にしたものは、ごく普通の町だった。 人が往来していて暮らしている。 ただ違うのは僕が気配を読めないこと。
つまり、全員ゴーストということになる。
あまりの光景に呆然と立ち尽くしてしまい、正気に返って危険が無いことにも驚かされた。
「どういう事これ……」
“間違いなくここにいる人たち全員ゴーストなのは、私が保証するよ”
いや、そんな保証はしないでほしい。
女のゴーストが1人、僕たちに気がついて近寄ってくる。 当然身の危険を心配したんだけど……
“ちょっとあんた服ぐらい着せてやりなさいよ!”
「はい?」
“はい? じゃないわよ。 恋人だか遊女かは知らないけどさ、せめて事が済んで家を出るんなら服ぐらい着させてやるもんだろう?”
ハッとキャロの事だと気がつく。
エルフのアラスカよりももう少し大きめの形のいい胸に突起がツンとあって、視線を下に向けていくとおへそが見えてその下にはちょぼちょぼと毛が覗かせている。
“えっちぃ”
「失礼しました! 失礼しました!」
キャロと指摘してきたゴーストに謝って速攻で家の戸を閉める。
「ちょ、これどういう事なの?」
“ゴーストの町っぽいね”
襲ってくる事もなく、キャロが裸である事を怒られただけだった。
わけがわからない。
ひとまず家の中に身を潜めてキャロと相談する。 念のために奥まった場所にベッドがあったから、身体を休ませるついででうつ伏せになった。
「キャロはどういう事かわかる?」
うーん、そうだねぇと言いながらキャロを見ると、うつ伏せになった僕の前で女の子座りをしている。
つまり僕の目の前には秘密の花園が見えそうで見えない状態だ。
「キャロさ、さっきからわざと僕のこと挑発してるの?」
膝をペシッと叩こうと思ったんだけど素通りして、それを笑いながらキャロが見てくる。
「キャロは触れて僕は触れられない。 これってどんなインチキ?」
“正確には私も触ってないよ。 うまく説明できないけど、さっきのもマイセンに触ったんじゃなくて、マイセンの生気に触れた感じかな?”
要するに僕は触られた感じに思うけど、キャロは言ってみれば僕の『気』に触れている感じみたいだ。
「それでもキャロは僕のことを触れるんだからいいよね」
“でも触るって事は、マイセンの生気を吸い取っちゃう事になるから”
改めて僕は生者でキャロは死者だと認識させられる。
「と、とりあえずは服を探そう。 じゃないと家の外出られないよ」
“別に刀の中に戻ればいいだけだけど?”
それは実はわかってた。 ただ……
「だってせっかくだし一緒に歩きたいじゃん……」
“うん……ありがとう”
そんなわけで家の中にある者をキャロと物色しはじめるんだけど、どうやらここにあるものはゴーストタッチできるもののようでキャロも触れることができるみたいだ。
とりあえずローブやらが見つかったからそれをキャロが着れて問題は解決する。
“デザインが可愛くない……”
ゴーストの癖に……と思ったのは内緒だ。
改めて家の外に出て町をうろついてみると、みんな極普通に暮らしているようにしか見えない。
普通ゴーストはそこに残りたいと思う思念が原因だとか聞いた事があるけど、この場合おそらくだけど死んだ事に気がついていないといった感じなのかもしれない。
となれば食料も売っているけど、全てゴーストタッチできない僕には触れる事もできなかった。
町外れまで来てその先にダンジョンが広がっている。 随分ふざけた景観だと思う。
その時町の方から悲鳴があがりだす。 ゼノモーフたちの姿が遠目に見えて、次々とゴーストたちを襲っていた。
“そういう事なのね……”
キャロがボソッとつぶやいて、あの町の謎を教えてくれた。
“きっと同じ日を延々と繰り返しているんだよ”
次話更新は明日です。
今回のゴーストタウンはもう少し長く書こうか迷いましたが、食料と水の問題があるのでサクッと終わらせました。
いずれ別の話のときに……




