救ってくれた人物
新年明けましておめでとうございます。
ここは……
目を覚ますとそこは見知らぬ場所で、すぐ側には1人の男の人の姿が見える。
「気がつきましたかな? あのバケモノを1人で倒すとはさすがは『気斬りのマイセン』ですなぁ」
ハッキリしてくる頭でその人物を見て、口から心臓が飛び出しそうなぐらい驚く。 なぜなら今目の前にいる人物こそ、ハサンのところにいた人物だったからだ。
「あ……あああ……」
指をさして声にならないでいて、更にそこで驚かされる。
切断されたはずの指が元どおりに治っていたのだから。
「ああ、怪我なら治しておいてあげましたよ。 貴方にはこれから大事な仕事があるんですからねぇ。 それと……私とはどこかでお会いになられましたかな? 酷く怯えてらっしゃるようだ」
どうする、ここはどう答えるべきだろう。 素直に言うべきか、それともごまかす方がいいのか……
欠損した指を治せるような神官であれば、嘘をついたところで見抜かれるかもしれない。 ここは素直に答えるべきだろう。
「実は……広間での一件を見てしまいました」
「なるほど、それでは驚かれても致し方がありませんですなぁ」
別段何かしてくるでもなく変わらずに接してきて、傷も治してくれたこの人物は危険な人ではないのかと思えてきた。
「まぁ見られていたのならば商談は早めに取り決めるべきでしょうな?」
「しょ、商談? あ、治療費とかですか?」
突然その人物が拍手をしてきて、素晴らしい、理解力が良いのは大変良いことですよなんて大げさに言ってくる。
「実はですねぇ、貴方のその腕を見込んでお願いしたいことがあるのですよ」
「僕にできることなら……」
「さようですか! それでは驚かずにお願いを聞いていただきたい。 実は……」
その人物はキャロの一件をどこかで聞いたらしく、大切な人をどうしても助けたいからと僕に『気』で体内にいるチェストバスターを殺してほしいと頼んできた。
「待ってください、そんな事をしなくても貴方なら治癒魔法でチェストバスターが出た後で治癒すれば助けられます」
そう、わざわざそんなキャロの二の舞になるような事をしなくても助けることはできる。
だけどその人物は首を振ってきた。
「彼女を救うにはアレの力を借りなくては生きられない変わった病に侵されていましてね、私はどうしても救ってあげたい。 そこで町で貴方の話を聞いて一縷の望みをかけて試したいのですよ」
正直言って怪しい、怪しすぎる。 なのでとりあえずその彼女といった女性を見せてもらうことにした。
連れてこられた女性はまるで彫像のような美貌だけど意識が朦朧としていて、まるで生気が感じられず、薄いローブのようなものを身につけているだけだった。 そしてその胸にはもう1つの気配であるチェストバスターのものが感じられた。
既に植えつけられているようだ。
「いくら助けたいからといって……そこまでしますか!?」
だけどここでその女性が僕に向けて、力なく助けてと口が動いて小さく消えそうな声で救いを求めてきた。
「どうですかね? 彼女の意思なのですよ。 頼みを聞いてはもらえませんかね」
悩む。 本当にそれで良いのかわからない。 ただ本人も助けてほしいと望んでいるのに助けなかったら、もう卵破壊したから次はなくなってしまう。
もし彼女がキャロだったら……
「わかりました……」
「おお! それはありがたい!」
「1つだけ……あなた方のドッグタグを見せてはもらえませんか?」
「ドッグタグ? ああ、冒険者が持つといわれるものですな。 残念ながら私たちは冒険者じゃないのでしてな、持ってないのですよ」
冒険者じゃない!? アレだけの実力を持っているというのに!?
そうなると身分を証明するものは通行証や商人であれば商人ギルドや行商人であっても、なんらかのものがあるはず。
しかしこの2人にはそういったものは所有していないと言われてしまう。 そうなるとありえないけど、一般人となってしまう……
「それではせめて名前だけでもお聞かせ願いませんか?」
「ええ、もちろんかまいませんよ。 というよりもむしろ名乗りもしなかった私に落ち度がありましたねぇ、いやぁこれは失敬、失敬」
男は一度佇まいを直してから僕に向かって丁寧にお辞儀をしながらその名を口にした。
「私の名前はニークアヴォ、彼女はディア……そうですねぇ恋人のようなものでしょうか?」
探るような目で僕の事を見つめてくる。
僕は当然その名に聞き覚えなんかあるわけもなかった。
新年早々名前が出てしまいました。
ニークアヴォとディア覚えている方はいてくれるでしょうか?
そんな感じで今年もよろしくお願いします。
また知らない人は一応知らないままでも問題はありません。
次話更新は明日ですが、午前中に更新できないようであれば夜になります。
それでは。




