ゴースト
まだかろうじて生き延びているゼノモーフを刀で斬り倒していきながら麓の入り口へと入っていく。
ダンジョンに通じる道に向かって進んでいき、気配で見つけたゼノモーフは倒していく。 ハサンがいる場所はきっとまだダークゾーンの奥だとなぜか感じた僕は、決戦の場となるダークゾーンの先へと急いだ。
「キャロ、君の仇を討つ。 一緒に力を合わせてハサンを倒そう!」
“うん”
そんな声が聞こえた気がして足を止める。
僕の隣にゴーストのような霊体のキャロの姿があった。
「キャ、キャロ!? 本当に君なの?」
“うん、私はマイセンとずっと一緒にいたかったから、この刀に私の名前をつけてくれた時にゴーストになって残る事を決めたの。 もっともあの女にマイセンが取られたのは悔しいけどねぇ”
それを聞かされると当然アラスカの事だと気づいて気まずくなる……
“冗談だよ。 あの人とは……約束してくれたから大丈夫! さぁそれよりも仇をとってくれるんでしょ?”
「うん、ごめんキャロ……」
なんだか気になる満面の笑みを見せていた。
「それとさ……なんで裸なの?」
スッポンポンで見えるところ全てが丸見えになっている。
“し、仕方がないでしょ! ゴーストはゴーストタッチ能力のない物は装備できないんだから!”
「そ、そうなんだ……」
ちなみに今まで出てこなかったのは、ゴーストも姿を表すのにそれ相応のエネルギーが必要だかららしい。
「エネルギーって?」
“せ、生気よ、生きた人間から生気を吸い取るの”
なぜかキャロが照れだす。
「それが得られれば姿を保てるの?」
“そ、そうだけど……”
「なら僕ので良ければ吸い取ってよ」
“え、えーと……もう、貰ってるから……えへっ”
「そうなんだ……いつの間にどうやって?」
急にそろそろキツイからと慌てたように消えていったがなんだかアヤシイ。
ダークゾーンを抜けて大広間にたどり着いた僕は、ゼノモーフの姿が一切無い静かな空間にたった1人だ。
ハサンが暗殺者だったからか、潜伏能力を持っているようだけど、僕には気配を読み取れる。
……くる。
気配が近づいてくる……1、2、3、4……はい!?
数えている余裕はないほどのゼノモーフが、一斉に確実に僕に迫ってきていた。
「以前であれば逃げるしかなかったんだろうけどね……
刀行くよ!」
濃口を切って刀を抜いて構える。
最初のゼノモーフの姿が見えた時点で正面はあっという間にゼノモーフだらけになった。
「衝撃波!」
以前よりも遥かに凌ぐ威力の衝撃波がゼノモーフを襲い、一気に衝撃の波に呑まれて大半がズタボロに切り裂かれていく。 残ったゼノモーフたちは恐怖心などは持ち合わせていないようで、そのまま突進してくる。 もう一度衝撃波を放ってほぼ無力化して、僅かに残るゼノモーフを『気』で仕留めて刀を鞘に戻した。
「感じ取れる気配は……ないか。 でもゼノモーフがいた方角にいるのは間違いないはずだ」
キャロがやったように帰り道がわからなくならないようにコインを地面に置きながら進んでいくと、やはりというべきか、キャロが捕まっていた横穴に辿り着く。
「あそこには何かがあるのか?」
独り言を呟くとキャロがまた現れて、なぜかその顔は怒っている。
“あのねぇ、一応私はその刀に取り憑いたゴーストなの。 いい? ゴースト。 一種のアンデッドなのよ? あまり気軽に話しかけると、頭のおかしな人だって思われちゃうわよ?”
「え、いやぁ……独り言だったんだけどなぁ……ははは」
ゴーストのキャロはポカンとした顔をしたかと思うと、顔を真っ赤にしながら照れ隠しに必死に咳払いをしだす。
“……コホンッ、あそこはね、女王の産卵場みたいなの”
つまり、女王がいれば、単身で卵を産んでゼノモーフを増やせて、女王がいない場合は卵になり得る生物が近づくまで静かに待つみたいらしい……
「……という事はさ、キャロもあそこで卵を産むつもりだっ……」
“そんなわけないでしょ!! あんなバカでかい卵なんか産んだらいくらなんでも死ぬわよ!”
ちょっとだけキャロのゴースト姿を見ながら想像してしまう。
「……変態」
すぐに見抜かれたようで怒られた……
それにしても女王の産卵場……つまり街に溢れ出たゼノモーフは、ハサンが生み出すことで増やしたって事か?
本日もう1話更新する予定ですが、無理だったら明日更新になります。




