勘違い、そして……
アラスカさんが泊まっていくことになって、兄弟たちが7つ星の騎士であるアラスカさんに群がっている。 アラスカさんも兄弟を相手に普段あまり見せない優しげな表情を浮かべていた。
「マイセン様、いよいよなのですか?」
「うん、いよいよ仇を討つ時が来たんだ」
アラスカさんの様子を見ながらカルラに答えて、気がつけば拳を握りしめていた。
ところでアラスカさんはどこで寝るんだろう。 急に目下の問題点に気がついてシスターテレサに聞いてみると、僕とカルラが一緒に寝るか、それともアラスカさんと寝たらどうだいなんて冗談にもならない事を言い出して、なら僕が床で寝ると言えばカルラが床で寝ると言いだす。
それに気がついたアラスカさんは、私が床でなんて言いだして更に収拾がつかなくなってくる。
「わかりましたよ、じゃあ僕と一緒でもいいと思う方と寝ます! それでいいですね?」
半ば半ギレでニヤつくシスターテレサに当たる。
シスターテレサはクククッて笑いながら頷いてきた。
「では私と」
「私が一緒になろう」
カルラとアラスカさんがほぼ同時に答えてくる。 それを見たカルラはアラスカさんにお客様ですからと普段カルラが寝ているベッドを譲るんだけど、アラスカさんもそれは申し訳ないって断ってきて、いえいえどうぞどうぞと譲り合っている。
そりゃあ男と一緒に寝たいなんて思わないだろうから仕方がないのはわかるけど。
「それではマイセン様に決めていただきましょう」
そして僕に決めさせようとしてくるカルラさん……
2人の視線を感じながらどうしたものか考えてみる。 本音で言えばアラスカさんがいい。 だけどここはあえて下宿していた時は一緒に寝ていたカルラが妥当なところなのか、それとも素直にアラスカさんを選ぶべきかで迷う。
「なんだい、本心は決まっているんじゃないかい」
シスターテレサがニヤッと笑ってくる。
まさか神聖魔法で僕の心を読んだ? そんな魔法もあるの!?
「そういうのはズルいんじゃないですか?」
とはいえバレてるのなら仕方がないし、アラスカさんに狭くなりますけどってお願いした。
寝る前に兄弟たちと温泉に入る。 ここ孤児院にも湯水のように沸く、霊峰竜角山の源泉のおかげでお風呂だけは困らない。
アラスカさんと一緒のベッドで僕は寝られるのかな……
「兄ちゃんはアラスカお姉ちゃんが好きなのかぁ?」
「はい!?」
不意に兄弟に聞かれて返答に困る。
ちなみに僕の姉妹たちは、カルラにお願いしてるから、一緒に入っているのは男の子だけだ。
「ど、どうなんだろうねぇ……」
それを濁して誤魔化そうとするけど、子供は残酷だ。 一斉に兄弟たちがカルラとアラスカさんのどっちをお嫁さんにするのかなんて話にまで飛躍し始める。
「バカなこと言ってないで、もうお風呂を出て寝るよ!」
ちぇーだ、ケチーだ声が上がりながらお風呂から上がっていき、先に入った姉妹たちはもうほとんどが眠りについている。
寝かせつかせていると、体が温まったせいもあってか兄弟たちも次々と眠りについていく……僕のベッドに目をやると、アラスカさんがベッドに座ってそんな僕の様子を眺めていた。
最後の1人の眠りについたのを確認すれば、いよいよベッドに向かうことになる。
カルラは僕たちの方に背を向けて既に寝息を立てていた。
「そ、それじゃあ、寝ましょうか?」
「そ、そうだな。 よろしく頼む」
「……」
「……」
「なんだか、まるで新婚さんみたいですね」
余計な一言を口走ってしまい、慌てて訂正する。
「私は以前告白したように、君とそうなる事を望んでいるし、君も……待っていてくれたのだろう?」
僕の耳元で小さく囁いてくる……
え!? 孤児院の外で会った時のって、まさか……ゼノモーフの事じゃなくて、僕の事だったってこと?
「アラスカさんってもしかして、僕に会いにきてくれたんですか?」
「そうだが、もしかしてと言うのはどういう事だ?」
ゼノモーフの事だとばかり思っていたけど、僕の勘違いだったのか。 でもそうするとアラスカさんは本当に……
「い、いえ、なんでもないです」
勘違いだったことは誤魔化しておこう。
僕はいつも仰向けで寝るんだけど、顔だけアラスカさんの方に向けると僕のことをジッと見ていた。
「そういえば、どうするか聞いてきていたな……」
僕の顔を両手で掴んで口づけをしてきて、キャロの事は忘れなくてもいいから、今生きている私と生涯を共にしてほしいなんて言ってくる。
ハイと言いたかった。 憧れの人と生涯を共にできるなんて最高に贅沢な事だから。 でも僕にはその前にやらなければならない事がある……
「アラスカさんの気持ちはとっても嬉しいです。 それに今すぐにでも応えたいと思いますが、せめてキャロの仇を取るまでは待ってもらえませんか?」
驚いた顔を見せてきたから、僕はキャロのおかげで人を好きになる意味を理解できるようになった事を話す。
「なるほど、ならば私は私の伴侶となる男の手伝いを全力でさせてもらう。 それなら別にかまわないだろう?」
「……お、お願いします」
「なら今後は堅っ苦しい呼び方は無しにしよう?」
「わかりました、アラスカ……でもだったらアラスカもですよ」
「む……ど、努力しよう……」
2人向かい合いながら小さく笑って、もう1度口づけをした後眠りについた。
信じられないような気持ちだけど、同時にキャロには心の中で謝っておいた。
次話更新は明日の予定です。




