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キャロンの死

『封印されし場所』最終話です。

 数回だけハサンさんの素顔は見ていて、猫の獣人族である事は知っていた。 その特徴を持った一際大きなゼノモーフがゆっくりと近づいてきて、キシャーキシャーと口からヨダレを垂らしながら叫んでいる。



 ゾクっとするものを感じてキャロの方へ顔を向けると、胸を尻尾で貫かれて口から血を吹き出すキャロが……



「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! キャロ! キャロ!!」


 尻尾が抜けて胸からも血が溢れ出る。 だけどキャロは驚きこそしても、痛がったりする様子はない。



「痛み、全く無いんだ。 私やっぱり人じゃ無いんだね……」


 そうは言うけどキャロの体から『(オーラ)』が薄くなっていくのが嫌でもわかる。



「マイセン、ゴメンね。 私ダメみたい。 コレをマイセンに持っていて貰えると嬉しいなぁ」


 僕にドッグタグを渡してくる。



「嫌だ! 死んだらダメだ! 死なないでくれキャロ!」


 苦しそうな表情を一切しないで僕を見つめてくる。 まるでその目に焼き付けようとしているように見えた。



「私、君に会えてよかった」


 どんどんキャロの『(オーラ)』が小さくなっていく。 もう気配がなくなるのに時間はたいして無いだろう。 だから……



「キャロンに決めたよ!」

「え? なにが?」

「刀の名前。 生涯ずっと君の事は忘れないように、刀の名前はキャロンにするよ」

「じゃあ、これからもずっと一緒だ、ね……」


 そこでキャロの気配が消えた。 完全になくなってキャロは僕を見つめたまま動かなくなっていた。



「キャロ、仇は必ずとるから。 この(キャロン)と一緒に必ず!」


 刀を握りしめると刀が震えたように感じた。 まるでキャロ自身がこの刀に宿ったように思える。


 最後にキャロに口づけをして一度床に置いて振り返ると、そこにはハサンさんだったゼノモーフの姿は既になくなっていて、ディルムッドさんとカルラの姿しかなかった。

 気配も既になくなっていてまるで目的は達成したとでも言うようだった。



「アイツはどこに行きました?」

「わからない、気がついたらいなくなっていた」


 それならそれでいい。

 僕はキャロの亡骸を背負って歩き出す。 キャロだけは連れて戻りたかったから。 キャロの埋葬が済んだらここに戻ってきて、仇をうてばいい。

 背負ったキャロに話しかけながら歩く僕に、2人はただ黙って後からついてきていた。







 ダークゾーンの場所まで戻るとアラスカさんの姿が見えて、僕が背負っているのがキャロだと気がつくと気まずそうな表情を見せてくる。



「……キャロンの身に、何かあったのか?」

「ハサンが生きてました。 生きてるっていうとおかしいかもしれませんが、ゼノモーフになっていてキャロを殺しました」


 僕が背負っているキャロの体からだんだん暖かさが消えていく。



「キャロンをどうする気だ?」

「埋葬します。 人として」


 アラスカさんはそうかとだけ言って、否定してくることはなかった。








 地上に戻った僕たちはキャロの埋葬をシスターテレサにお願いして冥福を祈ってもらう。

 墓地には入れてもらえないらしくて、孤児院の横の大木の下に埋めることにした。



「マイセン、良くない知らせだ」


 冥福を祈り終えるとサハラ様が現れて僕にキャロが輪廻には還れない事を告げてきた。



「そうですか、神様って残酷なんですね」


 僕がそう言うとサハラ様が違うんだと僕の刀を指差してくる。



「彼女の希望で、魂はここに納められたらしい」


 それを聞いて慌てて刀に手をかけて鯉口を切って抜くけど、もちろん何か変わった様子はない。 違う、一か所だけ違った。 刀の根元に当たる部分、そこにいつの間にかキャロのドッグタグが埋まっていた。




 そして僕たちの情報からその翌日にはダークゾーンの場所は封印を施され、立ち入ることができなくされてしまい、仇を討つことも叶わなくなってしまった。

 僕と知り合い、仲間になった者はみんな死に、悔やむ思いを胸に抱きながら…………時は流れていった———————



次話更新は明日の予定ですが、大幅修正する事になってしまったため、もしかしたら明後日になってしまうかもしれません。

楽しみにしてくれている方にはご迷惑をおかけします。

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