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生きていたドラウ

 駆け寄ってよく見てみたけど外傷こそ酷いものの、まだ息があるようだった。



「マイセン様、コレを」


 カルラが渡してきたのはポーションだった。



「コレは?」

「私たちギルガメシュ様が私たちが危険な時のために渡されていたものです」


 神官が神聖魔法を使えば済むため、ポーションの需要があまりなくて高価な消耗品だ。 薬草なんかは安価だけど、その分即効性がないから持ちはこばれることもないけど、薬師が作ったポーションは即効性があって魔法のように働く。 ただし即効性がある物ほど高価だ。



「こんな高価な物いいの?」

「はい。 ギルガメシュ様はポーションは必要な時に使わなければ持っていても意味はないと常々仰っていました」


 まぁ確かにそうだけど……やっぱりギルガメシュさんはお金持ちなんだなぁ。 と、そんな事よりも……


 ディルムッドさんの口にポーションを注ぎ込む。 少しすると目を覚ました。



「ディルムッドさん!」

「目を覚ました最初の相手が貴公とはな」


 身体を起こしながら、出来れば美しい女性であればなお良かったなんて言っている。



「それで、なぜ未だここに貴公らがいる? 他の者はどうしたんだ?」


 僕が状況を説明してキャロの姿を見せる。 その手足と尻尾を見て、残念そうな顔を向けてきた。



「我らもその昔は魔物扱いだったからな。 貴女の気持ちはよくわかるよ」


 ディルムッドさんは他の人たちとは違って、キャロに対して同情を示して、それと同時にハサンさんに対して怒りを露わにして顔が凄く怖い。



「それで? これからどうするつもりかな? 助けられた命だ。 貴公らの好きに使ってもらっていいぞ」



 それを聞いて安心した僕たちはこれからどこかでひっそりと暮らしたい事を伝える。 だけどそれにはディルムッドさんも難しい顔を見せてきて、代行者や世界(ワールド)守護者(ガーディアン)が動いているのだとなると簡単にはいかないぞって笑ってきた。



「そこ笑うところですか?」

「いや、済まない。 だが手段はある」


 もちろんここを抜け出ないことにはどうにもならないみたいだけど、地下世界(アンダーダーク)に逃げ込みさえすればおいそれと手を出してはこないだろうって教えてくれる。



地下世界(アンダーダーク)……」


 キャロの悲しそうな声が聞こえてくる。 人の身で地下世界(アンダーダーク)に住むということ、それは罪人や人を捨てるようなものだからだ。



「なに、地下世界(アンダーダーク)と言っても地上に住むのを拒んだドゥエルガルの町もある。 そこでなら明かりもあって十分に暮らせるさ」


 それを聞いて少しだけ安心できた。

 そうなればここからの脱出になるのだけど、ダンジョン突破に加えて霊峰の町も抜けて遥か東の国、マルボロ王国までいかなくてはならない。 何より、世界(ワールド)守護者(ガーディアン)の追従から逃げ切らないといけなかった。



「ひとまずダークゾーンの近くまで戻ろうと思いますが、もう1人の方のドッグタグを……」

「死地を求めていたのだ。 気にすることはないさ」






 来た道を戻って大広間まで出る。 この大広間にもゼノモーフの姿がチラホラ見え出していて、何者かがまるでダークゾーンを探させているようにも見えた。



「ははっ……本当に襲ってこないんだな」


 キャロの命令に従って僕たちに危害を加えようとしてこないゼノモーフに、ディルムッドさんも驚きを隠せないでいる。

 でも僕だってあの最後に別れた状況から生き延びたディルムッドさんのほうがよっぽど驚かされるんだけどね。



 その時の状況をディルムッドさんが話してくれたけど、ドラウならではの瞬間移動のおかげだって簡単に返してきた。 ただあちこちの鎧の傷なんかから言っている以上に大変だったのは嫌でもわかった。



 —————————っ!



「みんな伏せて!!」


 叫んで伏せるのと同時にゼノモーフの尻尾が壁の陰から薙ぎ払ってきた。

 僕たちが伏せて避けると姿を現してきたのは、ゼノモーフはゼノモーフだけど大きさが他のゼノモーフよりも2倍以上大きく、そして獣のような耳と僅かながら体毛があって生前の名残が見えた。



「まさか……あれはハサンさん……」




次話更新は明日の予定です。


また、明日でこの章の最終話になります。

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