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いややっていうとるやろが~ぼけぇぇ‼

あるところに、ドケチのおばさんがおりました。


昔のように、寒い日にマッチを売ると言うことはせず、フリーマーケットで今まで集めたキャラグッズやぬいぐるみに、手作りのチャームを売っていると値切られ、大赤字をだしストレスで寝込むことが多いため、ネットフリマで売るようになっていた。


昔に比べて進んだ物語である。


しかし、昔はマッチ売りの少女のように生きるためにものを売っていたが、最近は、キャラグッズなど何でもものを収集するオタクでもあるおばさんは、家の中が片付かず置くことが出来なくなると言う理由だけで、泣く泣く使わず未使用のものをフリマに出すような変人であった。


特に売るものは食料品店で何かを買うと貰えるクリアファイルやバッジなどで、クリアファイルは可愛いが逆にもったいなく使わないので譲りたいが、送料がかかるので頭を抱えていた。


「折れ曲がったら困る。厚紙が高いわ‼ボケェェェ‼5枚で100Yenショップで買わないかんがね~‼じゃぁ単純計算で40円‼重みで送料が上がるのに、赤字やが~‼」


こと細かく計算するのは、自称フリマおばさんの趣味である。


「沢山売れへんかな~それに、ポイントをためて、ただいま集めとるJAの干支貯金箱と交換したいんよ~‼」

「こんなにドケチで、変だと結婚できませんよ」


たしなめる声に、嫌そうに、


「人の趣味にけちをつける人間は、結婚対象外や‼ボケ‼」

「その前に、この部屋を見て結婚したいと思う人はいませんよ。変人ですね」

「うるさい!結婚、結婚言うなや‼兄嫁じゃあるまいし‼二重人格で、車の中で3時間延々と、ドライブと称して人のことをバカだアホだくずだって言われてみぃや‼人嫌いと男性嫌悪症になるわ‼あの男のいっとったことを録音しとけば良かった‼結婚なんて夢なんかあるか‼夢もない結婚するよりも、テディベアと趣味の本に埋もれて暮らす方が夢も未来もあるわ‼」

「と言うか、貴方を早く結婚させてこいと、縁結びの神からくれぐれもと念を圧されたのですが……」

「圧すって言う字が違うわ!それにしたくない‼帰れ‼」


言いながら、ごそごそと探す。


「何してるんですか?」

「中国語を勉強するCDを聞こうかと」

「は?諦めてなかったんですか?」

「神さんの遣いかなんか解らんけど、失礼な奴やな」


CDデッキを引っ張り出しながら、嫌そうな顔になる。


「毎年毎年地獄を見てきたんや。今年はひとつ願いが叶ったんや。次の目標を決めて進まな。次は中国語や‼」

「じゃぁ、一応、クリスマスプレゼントとして……買いましょうか?」

「いらんいらん。それよりも月額料金が高いなぁ……。無料終わったら返そか……。CD焼けるかな……本は痛めたらいかんし……手書きで書き写して……毎日聞きたいよなぁ……」

「どこまでケチなんだ……」


呆れ返る縁結びの神の御使いを睨むと、


「ど阿呆‼32回払いで1回5000円や‼4枚払いだったら1000円分引かれるけど、8ヶ月も払えるか~‼」

「……」

「返却方法を明日にでも聞いておこう。やっぱりやめておこう……値段見ただけで、無理だわ……。電話じゃ幾らか教えてくれんかったで、あんた、それってあかんのやないんかね……」

「中国語習うんじゃなかったんでしたっけ?」

「無料視聴聞いとくわ」


本日届いたばかりの箱を丁寧に締まっていく。


「変な人ですね……」

「あんたもな……ほんじゃな~‼」


と、今度はとってのついたかごから何かを出していく。


「……何ですか?今度は」

「天然石の丸玉で、ブレスレット作るんだけど?それに、チャームを作ろうかと。ペチャット欲しいなぁ……」

「ぺちゃっと?」

「最近のおもちゃで、ぬいぐるみにつけて操作したら、ぬいぐるみがしゃべるのだよ。家のテディベアのお洋服につけておしゃべりを楽しもうかと……」

「寂しい老後が目に浮かびますね……」


しみじみと言われ、ペンチを振り上げる。


「武器反対‼ついでに、それで作るんでしょうが‼道具を何するんです」

「100Yenショップで買ったから、今度手芸店で良いのを買おうと思って。最後に使おうかと……」

「最後って……あんたは何考えとんですか‼しかも何で口を‼」

「歯を抜いてやろうかと……親知らずを二本も抜くと、痛みは解るけど、やろか?痛いで?親知らずって麻酔聞きにくいんやわ~」


ニヤニヤとペンチと手術で使う鉗子かんしをヒラヒラさせる。


「両手…‼」

「両利きやけん。ボールとか投げたり打つのも左やな」

「ご遠慮します‼」

「ほんならお帰り。いんどいでや」


逃げようと後ずさっていた青年はキョトンとする。


「インドイデ?」

「お帰り、や。いんでこうわいって帰る子は言うわ。ほんじゃ、もうこんでかまんで、だんだん」


後ろを向いて作業を始めたおばさんの背中を見つめ、


「また来ますね‼」

「こんでかまん」

「縁結びを成功させます‼それまで来ますからね‼」


スーツ姿の青年は部屋を出ると、ポケットの中のノートに書き込む。


『掃除、洗濯、疲れているので休ませること。やる気を出させること』


男性らしいかくかくとした文字を書いた彼はボールペンとノートをポケットに納めると、年末の道を歩いて帰るのだった。

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