第0章、彼らの日常(2)
「それではこれより、第一回、邪野荘会議を始めます。」
ここ、私立三位学園の一つの寮である邪野荘で初めての会議が行われた。
参加者は夙縁夜、カヨこと倖五花陽弧、ネッシーこと一極紫樹である。もうひとり住居人がいるのだが、用事があってすでに出て行ってしまった。
「話は聞いたけど、わざわざ会議することなの?」
「何を言ってるのしのぶさん! ナイトがこのまま不眠症になっていいの!?」
陽弧が食卓のテーブルをドンと叩きながら叫ぶ。
「それはそうだけど…」
会議をするのは普通、寮について、寮の中のルール、ルームメイトの人間関係に問題があった時である。
一人の不眠問題にこんなことするのは正直言って大げさだ。
「話を戻すけど、この時期暑いから窓全開にしたり扇風機つけっぱなしだったり薄着したりと僕なりに工夫はしてたんだけど…」
「ここじゃ扇風機とかは無理ね。」
邪野荘は正直言って三位学園の中で一番古い…、もとい、古風な建物だ。
森が近くにあり、時々野生の動物が寮の近くをうろちょろする。そのためか電柱も電線もアンテナもそんなにしっかりしていないため、最低限の電気しか使えない。それはガスや水道でも同じこと。
「ナイト、他に方法はないの?」
「少し難しいんだけど…、あるよ。」
「そ、それは一体…」
なぜか期待してしまう二人だった。
「冷たい抱き枕を抱いて寝る。」
「…は?」
つまりは一度冷やした抱き枕的なものを抱いて寝るということになる。しかし、
「一枚のタオルじゃだめだったから、特製の水枕を二つは使って夏を過ごしてたんだ。でも去年の秋の時、とうとう破けてしまったんだ。」
水枕ってそんなやわなものだっただろうか…
まあ聞いてた二人は使ったことないから、水枕ってそんなものなのかなと納得してしまう。
「じゃあ、今から買いに行く?」
「カヨ、僕が今までチェックしてないわけがないだろ? ここ近くの店何軒も探してみたけど、見つからなかったよ。」
寝ることとなると思わぬ力を発揮するんだなと改めて知った。
普段そんな外出しないのに…
「前まで使ってた枕はどうやって手に入れたの?」
「ネットで買った。」
「ああ、そりゃだめだわ。」
三位学園はデリバリー禁止だ。もう打つ手なし。
「ナイト、冷たかったら何でもいいの?」
「うん、一時期冷たい床で寝たことあるし。」
体バキバキになるぞ。
「じゃあさ、私が抱き枕になってあげる!」
「「は!?」」
夙縁夜 「いやー、本当に毎回大変だよ。寝るのにこんなに疲れるなんて、本末転倒だよね?」
一極紫樹 「いや、共感を求められても…」
倖五花陽弧 「夏と冬は毎回こうなるの?」
夙縁夜 「うん、もう春と秋だけにならないかな日本…」
一極紫樹 「日本じゃ無理だろうけど、外国に住めば解決するんじゃない?」
夙縁夜 「その手も考えてはいるんだよ…、でも一度行ったことあるんだよね、おじさんと。」
一極紫樹 「へえそうなんだ。で、どうだった?」
夙縁夜 「置き引きに会いました…」
一極紫樹 「た、大変だったね…。英会話に困ったとかカルチャーショックとかじゃないんだ…」
倖五花陽弧 「そっか…、もう嫌なんだ。一緒に行こっかなって思ったのに…」
一極紫樹 「あ、そうだ。話変わるけど、一話見た人から質問が来てるの。」
夙縁夜 「え、早いね。何て書いてあるの?」
一極紫樹 「えっと…」
ペンネーム:ミカエル 『陰陽見てます。一話見ましたが、なぜ倖五花さんはカヨと呼ばれてるんですか? ネッシーもそうですが…』
夙縁夜 「ああ、あだ名のことか。そういえばこれまだ説明しなかったっけ?」
一極紫樹 「そうだね。まあ本編でも出るけど、説明はしとこうか。」
夙縁夜 「そうするか。ネッシーはひとむねしのぶ、名字と名前の間の文字をとって、ねし、ネッシーとなったんだ。」
倖五花陽弧 「それと同時に、私もカヨとなったんだよね! 確かに知らない人からしてみればようこなのにカヨって誰よ、ってなるよね!」
夙縁夜 「他のメンバーもそう読んだり読んでない人もいるよね…、あれ? このペンネームどこかで見たことあるような…」
一極紫樹 「このように、質問コーナーを受け付けているのでどしどしご応募ください。」