給湯器
「はい、ごちそうさまでした」
今日のお昼はそうめんでした。暑い日が続き、外は蜃気楼が見えそうなくらいです。
「駅長、後片付けは私がやりますよ」
主任の瀬川くんが自分の食器を重ね、流し台に持っててくれました。
瀬川くんも随分、歳を取ったなと後ろ姿を見て思いました。まぁ、梢ちゃんが一番年下なので余計に思うのかもしれません。
「あ、駅長。風呂の給湯器、調子が悪いんです。あれ、もう駄目じゃないかな?」
「あら?そうだったの?まぁ、今時、浴槽の横に給湯器なんてないですもんね」
今時の人は知らないと思いますが、浴槽の横に給湯器があり、レバーを数回、回して点火させてお湯を作るタイプです。
「蹴飛ばして駄目ですか?」
瀬川くんは一瞬、目を丸くして笑い始めました。
「あはは、駅長、蹴飛ばすなんて(笑い)。昔の機械じゃないんですから」
「あら?昔は扉故障の時はドアエンジンを蹴飛ばして直したもんですよ」
昔の電車は、本当に単純な作りでした。調子が悪いとまずは数回、叩いて様子をみたものです。
「こう・・・?ペシペシってならないもんかしらね」
「あはは、無理ですよ(笑い)」
「仕方ないですね、雑多経費の金額と修理代を見積もってみましょうか・・・」
駅には営業関係のお金と別に貯金があります。そのお金で事務用品や調味料などを購入することが出来ます。
私は駅長の机に戻り、パソコンを開きました。経費ファイルを開いて、雑多経費・・・。
こう見えてもパソコンは人並みに操作できるんですよ。会社主催のパソコン教室、あとはひ孫に教わりました。
あとは、ガス会社さんに電話して・・・。
「いつもお世話になっております。私、瀬戸電気鉄道の・・・」
どうやら、修理は明日になるみたいです・・・。
「はい、それでは明日、13時に・・・。どうぞ、よろしく、それでは・・・。明日ですか・・・」
私は主任に今のやり取りを説明し、今日は様子見にすることにしました。
改札の方を見ると梢ちゃんの笑っている姿が見えました。
オンボロ駅ですが、人のと繋がりは変わりませんね・・・。