1話
1人が心地良いと思い始めたのはいつからだろうか。もう何千年も前のことではないかと錯覚するほどだ。罪家機関に封印されてからどれだけの月日が経ったかわからない。閉鎖された空間から逃げ出すことは可能だが、封印することを望んだ者達がいる以上無理に出ていく必要もない。俺は厄介者だからな。
見渡す限りの真っ白の空間。何も無い。あるのは自分の身体1つのみ。昔は友人や家族もいたが今も生きているのだろうか。時間の流れが止まっているこの空間ではわかるはずもない。
俺の姉妹はまだ生きているだろうか。俺の身を案じ、最後まで封印を反対してくれた彼女達にはきちんとお礼をしたいという気持ちがある。
この世の全てに興味がなくなり封印され、生きる意味すらないのではないかと思い始めた。
ドンドン
聞こえるはずのない音が聞こえる。これは幻聴か?とうとう頭まで狂ってしまったのか。俺は幻聴と決めつけて聞こえないふりをした。
ドンドンドン
さっきよりも音が大きく数も増えた気がする。誰かが俺を呼んでいるのか?
俺は不意に笑う。どれだけ考えても分からなかった自分の気持ちがようやくわかってしまった。
俺は誰かに必要とされたいのだ。
俺が存在する意味が欲しいのだ。
そして後悔する。あんなにも自分を必要としてくれていた姉妹の存在を思い出した。何か諦めたように微笑み、自ら殻に閉じこもったことをひたすら後悔した。
さぁ、行こうか。俺を呼び覚ましてくれた者の元へ。止まっていた時を取り戻すためにも。
その日、頂より神をも凌駕する存在が舞い降りた。
新たな時代の幕開けだ。