表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/10

結局どうなったかといえば

 魔法大国アッシュルカの第九王子。

 そんな存在をミラージュ王国の侯爵位についているものが、奴隷にしていた。それもただの奴隷としてではなく、自由を奪ったうえで――――。

 そのことを理解したミラージュ王国の面々はそれはもう青い顔をしている。

 「というか、リュシー、なんでリュシーはここにいるんだ? アッシュルカって基本的に国民を外に出さないだろ?」

 「うふふ、全てはグリード様を探すためですわ。それ以外ありえません。グリード様を探すために、国中探してもおられなかったので、それならば他国にいるってことですわ。だから、わたくしたちは国外に出るようになったのですわ」

 閉鎖的であったアッシュルカは、特に他国と交流を持たなくてもやっていけるだけの力を持っていた。そんなアッシュルカは他国との交流は最低限で、アッシュルカの情報はあまり外に出て行かなかった。

 そんなアッシュルカが、十年前より留学生を多く出した理由は―――グリードを探すためというたったそれだけだったのだ。

 「あいつはどうなった?」

 「あいつとは?」

 「俺に記憶封じの陣を押し付けてランダムで転移させやがったロリコン」

 「………むふふふふ、捕まえて拷問中ですわ。グリード様をそんな目に合わせておきながら死へと逃げさせるなんてとんでもありませんもの」

 さらっと恐ろしい事を継げたリュシーであった。

 そもそもの話、グリードが奴隷なんてものに落ちていた理由はたった一人の男が原因であった。

 ざっくりというと、アッシュルカでは珍しい何代か前に他国からやってきて貴族位をもらった新興貴族の男が、当時六歳であったリュシーを見初めていたというしょうもない事実があった。子供のリュシーに惚れたロリコンは、魔法の腕だけはあり、リュシーに惚れて行動を起こす前は全うな男であった。恋に狂ったというべきか、男の行動はアッシュルカにとって想像もしていないことであった。

 殺せば、聖獣からの報復が来るからという理由でわざわざ記憶封じまでして転移させたのだ。男の手は巧妙で、数年間尻尾をつかませなかった。まぁ、結局どんな事件でも証拠は残るもので、捕まったのである。

 しかも捕まえたとはいえ、グリードはランダムで転移されたあとでどこにいったかはさっぱりわからなかった。

 「……へぇ」

 「ふふふ、私とグリード様を十年も引き裂いた罪は重いのですわ。……それよりも」

 リュシーは、グリードと楽しく会話を交わしたかと思えば、ミラージュ王国の国王と宰相、アーティクル侯爵を見た。

 「よくも私の、グリード様を隠してくださいましたわね? グリード様を見つけたら報告してくださると約束をしてくださっていたのに」

 ふふと笑うリュシー。アッシュルカの王子が行方不明だという事は諸国にも公開していた。プラスしてどういう人物かについてもだ。それは見つけた場合、アッシュルカに知らせるか保護するように言づけてあった。

 アッシュルカを敵に回したくない諸国はそれに全面的に協力するという約束をしていた。

 が、実際はミラージュ王国にグリードは十年もいたわけで、その約束は守られなかった。

 「すまない! わしも、まさか、アーティクル侯爵がそんなことをしているなんて思っても居なかったのだ」

 「申し訳ありません! アーティクル侯爵は好きにしてまわないですからどうか国だけは……」

 「わ、私も知らなかった! そんな奴隷の中にそんな存在がまぎれているだなんて、だから許し―――」

 上から国王、宰相、侯爵の言葉である。

 「ふふ、とりあえずグリード様を長年拘束していたアーティクル侯爵についてはこちらで引き取らせていただきますわ。

 そして侯爵家自身にもそれなりの罰を、そしてグリード様から長年魔力を奪っていたその女と、グリード様に言いがかりをつけたものにもって思いますけれども、それを決定するのは国王様たちですから、後々彼らに対することが決まったら、連絡しますわ。

 ギッカ、トオル、その男、魔法封じて。そして連れてくから」

 笑って告げたリュシー。それにギッカとトオルは頷く。

 そしてグリードの手を取る。

 「さぁ、帰りましょうか、グリード様、アッシュルカに」

 「あ、ちょっと待て。ケイティ!」

 グリードはケイティの名を呼んだ。

 「へ、な、なんですか」

 「お前も来るか?」

 「え?」

 「お前も俺と同じ被害者仲間だし、こんなことになったらこの国で生きにくいだろ」

 「……いいんですか?」

 「ああ」

 どうやらグリードは同じ被害者仲間であるケイティの身を案じていたらしい。

 「いいだろ、リュシー」

 「グリード様が望むのなら、私は異論はありませんわ!! それよりもはやく帰りましょう。皆様、グリード様の帰りを待ってますから」

 リュシーとグリードの間で話は進んでいく。

 そしてミラージュ王国一同の事をほぼ置いてきぼりで、グリードとリュシーはギッカとトオル、ケイティを連れてその場を後にするのであった。






 ミラージュ王国があわただしくなるのは、それからしばらくしてアッシュルカから書状が届いてからの事になる。





あと一話で終わります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ