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質問攻めと陣の解除

 「貴方、奴隷だといいましたわね。その前は何をしておられましたの?」

 まっすぐにクリスを見てそう問いかけるリュシー。射抜くようにクリスの目を見据えている。

 ミラージュ王国の国王も宰相も、ミラージュ王国よりも圧倒的に国力の強いアッシュルカの者が突然そんな風に問いかけ始めるわけだから、何が何だかわからない。

 ちなみにアッシュルカは元々閉鎖的な国だったが、とある理由により十年前より他国に進んで王族貴族が留学するようになっていた。アッシュルカの者は様々な魔法技術を持っていたりするため、皆喜んで留学を受け入れる。

 「わからないです」

 「わからないとはどういうでことなんですの?」

 「……俺には記憶封じの魔法か何かがかけられているんです。自力で解けないし、自分が誰かなんてわからないです」

 「先ほど叫んでいた体の魔法陣が全て消えていないというのは、そのことだけですの?」

 「いや、他にもあります」

 「何の魔法陣ですの?」

 「……魔力譲渡の魔法陣です」

 「まぁ、そんなものまで。その魔力を与えられる存在はそこにいる少女ですの?」

 「……そうです」

 なんで俺は魔法大国出身の少女にこんな風に質問されているのだろうかとクリスは何とも言えない気分になる。

 「あ、俺もです。俺の魔力もスフィネラ様に――」

 「貴方には聞いておりませんわ。ちょっとだまっていてくださいませ」

 ケイティが自分も同じ魔力譲渡の魔法陣を刻まれているという言葉を告げたが、ばっさりといわれた。ケイティがショックを受けたような表情を浮かべている。が、リュシーはケイティに一切の興味と関心がないらしく、視線をちらりと向けただけで、あとはクリスの方を見ている。

 「ギッカ、トオル」

 そして後ろに控えている二人の従者の名を呼ぶ。銀色の髪の少女と、赤髪の少年は「なんでしょうか」と声をそろえて問いかけた。

 「その者の、陣解きなさい」

 「了解しました」

 「はい。解きますよー」

 リュシーの命令に、二人はなぜかとても楽しそうにそんな風に答えた。

 そしてじりじりとクリスへと近づいていく。

 「解いてくれるのか?」

 クリスが喜んだように声を上げれば、二人は答えた。

 「ええ、といてあげますわ」

 「ちょっと気になる点があるから解かせてもらう」

 二人はそう答える。

 「な、なぜ魔法大国のものがそんなことをする必要がある!? 魔力譲渡が解かれれば―――」

 「お父様……。私の魔力、他人から与えられたものだったのですか?」

 「そ、それは……」

 アーティクル侯爵は、スフィラネに問いかけられて狼狽している。スフィラネ・アーティクルの魔力は、歴代でも有数の魔力であった。姉であるクリス・アーティクルが平均ほどの魔力しか持っていないのに対し、スフィラネ・アーティクルは最高峰の魔力量を所持しているとされていたのだ。

 ―――しかし、それが与えられたものだとすれば与える側であるクリスとケイティの魔力がよっぽど多いことになる。

 「私が何故、この者の陣を解くかを知りたいのかしら? そもそも、魔力譲渡は便利だけど色々と条件があるのはご存じでしょう?」

 リュシーは、冷たい目を浮かべてアーティクル侯爵を見据える。

 その後ろでクリスはドレスの背中部分をはがされ、そこの部分に描かれている魔法陣を消してもらっている。記憶封じの陣は背中に、魔力譲渡の陣は4つほど脇腹に描かれていた。こんな場でクリスは上半身ほぼ裸である。まぁ、男であるし、周りの人々はほぼ全員リュシーに注目しているから問題はないだろうが。

 「……魔力譲渡の魔法は、魔力の質の問題がありますよね」

 口を開いたのは宰相である。

 「そうですわ。宰相様のいうとおり、質の問題がありますわ。まず、うちの国は別として平民は魔力をほとんど持っていませんし、持っていたとしても魔力の質も悪いですわ。だから、まず平民から貴族に対しては質の違いで譲渡などできません」

 そう、そういう問題がある。魔力には質があるし、そもそも平民は魔力を持たないものが多い。尤もリュシーの国は魔法大国といわれるだけあって、平民でも魔力もちは多い。

 「貴族に魔力譲渡をするのならば、特にこのミラージュ王国において魔法使いとして優秀なアーティクル侯爵の娘に与えるというならば、質が高い必要がありますの。―――そこから導き出されるのは、その者は少なくとも貴族階級であったという事」

 リュシーはそう告げて、目を細める。

 「あれ、俺は? 俺も元貴族だよ? 没落したけどっ」と声を上げているケイティは相変わらず無視である。リュシーはなかなか酷い。

 リュシーはケイティに一瞥することもなく、クリスの方を見た。

 「よし、解けましたわ」

 「解けた。まずは魔力譲渡から」

 とりあえず魔力譲歩の方は解けたらしい。

 そうすれば、光が溢れて、クリスの体に膨大な魔力が戻る。逆にスフィネラの魔力はどっと減少した。

 「次は記憶封じの方ですわね」

 「助かります。自力で解けないんですよね、それ」

 「解きますからちょっと待ってくださいね」

 背中に刻まれたそれを見て、ギッカとトオルがいじくりだす。

 「---やっぱり」

 「……やっぱりとは?」

 「アーティクル侯爵、何故解くかという問いに答えましょう。記憶封じも、魔力譲渡も、解かなければならないのです。その者は我が国がずっと探している人に似ているから。いえ、たぶん、本人でしょう」

 リュシーはそう告げる。その言葉に周りが固まる。アッシュルカが探し求めている人に似ているという、おそらく本人だと確信したように告げる。

 そのことの意味を考えて、人々は途端に顔色を蒼くする。

 「解けました!」

 「よしっ、これで人違いだったら嫌ですからね!」

 ギッカとトオルがそう告げると、クリスは頭を抱えた。封じられていた記憶が一気に戻ったからである。

 そして記憶封じの魔法陣が消えたかと思えば、そこには一つの模様のように見える痣が見られた。それを見て、ギッカとトオルは笑った。

 「あー……まじか」

 そして頭を押さえていたかと思えば、クリスはそうつぶやいてギッカとトオルを見た。

 「ご自分の事わかりますか?」

 ギッカが問いかける。

 「……ああ、わかる。ギッカもトオルも久しぶりだな」

 「ええ、お久しぶりです。グリード様。見つけるのが遅くなり、申し訳ありません。流石に俺たちもグリード様が女性のふりをさせられているなどとは考えていなかったもので―――」

 グリード様と、親しみを込めて告げるトオルの言葉は途中で遮られた。

 「グリイイイイドさまあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 突如、魔法陣が解け、自分の従者と親しそうに会話をし始めるドレス姿のクリスもとい、グリードに向かってリュシーはさっきまでのクールな様はどうしたとばかりに叫んで、とびかかったからである。



 


もうちょっとだけ続きます。

誤字など訂正しました。

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