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裁判が始まる前だが。

 そして、裁判の行われる日がやってきた。

 クリスは騎士たちに連行されて、ミラージュ王国の王宮の一角へと連れてこられていた。

 裁判は王宮の一角で行われる。最高裁判が行われるとなると色々と見物人も多くなるものだ。加えて、クリスは実際は男だとはしても、体に刻まれた魔法陣の影響で女にしか見えないというのが現実であり、美しき侯爵家令嬢が最高裁判で裁かれるという事で、注目を浴びているのだ。

 妹を苛めたというそういう理由だけでそんな裁判にかけられるクリスに同情の目を向けるものもいれば、最高裁判で裁かれたのちのクリスを自分のものに出来ないか画策している変態もいる。

 クリスの見た目の設定は、美しく、スタイルも良い、気品のある侯爵家令嬢である。幾ら実際の胸がぺったんこであろうとも、周りから見ればクリスは大きな胸を所持しているのである。加えて、ただそう見えるようにしているだけではなく、実際に触れることも可能という再現具合である。そういう魔法陣をかけられているクリスでさえもそれがどういう仕組かよく知らない。そしてその事を考えると無駄な事に能力使っているんじゃねぇよとアーティクル侯爵に言いたくなった。

 (嘗め回すような視線が気持ち悪い。つか、本当俺なんでこんな所にいるんだろうか)

 クリスは周りから視線を集めながらそんな事を考えていた。

 どういう経緯で自身が奴隷へと落ちたか、しかも記憶封じまで使われたうえで、というのはクリスにはさっぱりわからない。しかし、本来のクリス自身は記憶封じまでされてこんな場所にいるということは、記憶を持ったまま奴隷になるのは困ったことになったからではないか。

 なら、本来の自分は誰なのだろうか。そういう疑問はクリスの頭にはよくわいてくる。

 この場には現在沢山の人間がいる。

 学園に通っていたクリスの同級生―――クリスを冤罪にはめた取り巻きとか、クリスに振られた腹いせか証言をした男子生徒とか、あとなんでいるかはわからないが、ここから大分離れた国からやってきた留学生とか、いろいろだ。クリスがどのような判決を下されるのか興味本位で来ているものも多いだろう。

 あと、王太子の決定で決まった最高裁判ということもあって王族たちもいるみたいだ。

 クリスは騎士たちに連れられながら法廷へと歩く。

 (………女のふりさせられて、自由を奪われたうえでわけのわからない冤罪かけられるとか、本当ありえねぇだろ)

 内心ではぁ、とため息を吐きながらクリスはそんなことを思う。

 いや、もう本当にクリス的に言えばこんなアホみたいな状況に自分が陥っている事はありえない事であった。そもそも奴隷とはいえ、十年も自由を奪われ、女のふりをさせられ、ここまで苦労する人間なんてそうはいないだろう。

 「おい」

 法廷へと騎士たちに連行されながら移動しているクリスは、声をかけられた。

 そこに居たのは、スフィラネ・アーティクルとその取り巻きたちである。クリスに声をかけてきたのは王太子である。

 王太子は不遜な顔をして、こちらを睨みつけている。

 (うぜえええなぁ、もう。お前なんかどうでもいいっつーの。なんで俺に話しかけてくるんだよ。クリスの事嫌っているならもうおとなしく裁判にかけられるの見とけばいいだろうが)

 『クリス』は王太子に恋慕しているように動かされているが、中の人は王太子の事が嫌いであった。そもそも女にキャーキャー言われて、地位も名誉も、顔面偏差値も、実力も、全部持ち合わせている癖に『王太子としての重圧が――』と謎に苦しんでいたり、『女は私の地位と顔しか見ない』などと嘆いていたりするらしい王太子の事は気に入らなかった。

 王太子としての重圧がどうのこうの言うのならば『自分は王太子の器ではありません』とでもいって辞退して他の兄弟にでも譲れよと思うし、地位も顔も王太子の一部であるのだからそれがあるのを喜べよというのがクリスの思いである。

 というか、妹を苛めたという理由だけでこうして最高裁判にかける時点で王太子は色々と終わっていると思っている。というか、そんな王太子の無理が通じるあたりもこの国終わっていると。

 「王太子殿下……」

 クリスの口からは悲痛そうな声が漏れているが、実際のクリスの思いは『王太子うぜー』である。

 「何か言う事はあるか? 優しいスフィネラに謝るなら最高裁判を考えてやってもいい」

 それを聞いたクリスは、ここまで開廷の準備整えておいてやめるとかも選択肢にあるのかよという突込みをした。もちろん心の中で。

 「私はやっておりませんわ」

 事実であるし、クリスの口はそう動く。

 「お姉様、どうして……っ。罪をみとめれば……」

 スフィラネがそんな事を言っているのを、クリスの中の人は冷めた気持ちになる。

 「ふん、貴様は本当に性悪だな。罪を認めないとは……。だったら最高裁判で裁かれてくるが良い」

 王太子はそんな言葉を言い放った。

 そんなわけでクリスはその後そのまま騎士たちに連行されて、まずは法廷の中へと入るためのゲートをくぐった。そこでは反応はしなかった。

 「魔法具は持っていないようだな」

 横で騎士がそんなことを言っていた。

 (……魔法具所持の審査からか。ふーん。っていうか、最高裁判がどんな感じのものか俺は知らないけど、これって……)

 ちょっとあることを考えて、もしかしてという期待を感じたクリスである。

 というか、この裁判が本当に『偽りを許さない』といったものであるならクリスは無実であるし、最悪処刑にはならないだろうとクリスはこのころ思っていた。処刑さえならなければなんとかなると。

 そして法廷の真ん中へと、クリスは連行される。その下には巨大な魔法陣が存在する。

 裁判長―――というか、この場合国王なのだが。国王陛下は言った。

 「この場では偽りは許されない」

 そう、その一言を。それと同時にクリスの足元の魔法陣が光り輝いた。

 そして、クリスも光る。

 国王はそれに驚く。なぜならそれは、偽りが何かしらあった場合のみ発動するものだったから。

 王太子たちは、クリスが魔法を行使してまで自分の罪を認めないようにしようとしていたのだろうとニヤリとする。

 しかし、光が収まった後に存在したのは、その場にいるものたちにとって予想外のものであった。

 光が収まった。

 そこには一人の少年がいる。髪は腰まで伸びているが、その顔は確かに少年である。何より巨大な胸もなくなっており、その体つきは少年である。

 「は?」

 その言葉をつぶやいたのは誰だっただろうか。

 クリスはざわめく周りに驚き、そして次の瞬間動く身体に驚いた。

 そしてもしかしてと「あ」と口にする。自分の意志で口が動いたことに、次の瞬間、

 「よしゃあああああああああああああああああああああ!!」

 と心の底から叫んだ。






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