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クリス、義父に怒鳴られる。

 「お前はなんて嫌疑をかけられているんだ!!」

 クリス・アーティクルは、裁判を告げられた翌日、義父であるアーティクル侯爵に呼び出され、領地に戻った。そうすれば思いっきり怒鳴られた。

 クリスも、クリスの横に並ぶたった一人の侍女もびくりっと体をびくつかせた。

 大声で怒鳴られて何とも言えない心情のクリスである。

 (なんて嫌疑をかけられているんだとかしらねーし。んなの知るわけないし。大体クソ侯爵が設定しているクリスの性格が色々とそういう嫌疑をかけられても仕方がないものなのが悪いんだろうが)

 クリスは苛々していた。最も勝手に動く身体のせいで、その表情は困ったようなものになっているわけだが。

 「最高裁判にかけられるなど、アーティクル侯爵の歴史における汚点だ!!」

 アーティクル侯爵は、美しい男性である。見た目的には、優しげな印象を人に与えるものだ。とてもじゃないが、一目見ただけでは傀儡の魔法などという外法を使って人の自由を奪うような外道には見えない。

 しかし、実際は色々とアレな大人であることをクリスは十分知っていた。

 (汚点とか。俺アーティクル侯爵家じゃねぇし。つーか、俺の生まれはマジ何処だよ。誰かに教えて欲しいものだ。しかし最高裁判ってよくわかんねーんだよな。どんな感じなのだろうか?)

 この十年でクリスは自分で返事を出来ないのもあって、アーティクル侯爵の言葉を適当に聞き流す技術を持ち合わせていた。

 (マジこのクソ侯爵だまらねーかな。俺の口が正常に動くのならばうるせーっていってやりたい。つかさ、このおっさん、実は一部ハゲなんだぜ。本物の髪で作られた鬘を装着していてわかんねーみたいだけど。盛大にばらしてやりたい)

 クリス、怒鳴られながらそんな思考である。思考する以外にすることがなかったのもあって、この十年、クリスの脳内では様々な思考が繰り広げられていた。

 「これを機にお前を奴隷に戻すのもいいかもしれんな。アーティクル家に連なるものとみなされるのは問題だ」

 「それは……っ」

 口ではクリスはショックを受けた様子であるが、脳内は違う。アーティクル侯爵もクリスの中の人がどんな思考をしているかなど知ったことではない。

 (え、本当か!? 奴隷は奴隷で嫌だけど、このクソ侯爵に使われるよりはましじゃねぇか? こいつの庇護下ではなくなるって事は傀儡の魔法とかはどうなるんだろうか? いやでも、流石に奴隷にまでそんなのしないだろうな。まぁ、俺がアーティクル侯爵について知った事は言わないようにはされるんだろうけど。でも女のフリさせられる日々からはさらばできるかもしれねーのか! 何それ、いいな!!)

 クリス、奴隷に戻される発言にそこまで思考していた。全然悲観していなかった。

 というか、十年もアーティクル侯爵でわけのわからないことを「娘のためになれ」という言葉で無理やりやらされていたため、そんな状況よりは奴隷の方がましだと思っているようである。

 「そして、お前もだ。ケイティ」

 そうしてアーティクル侯爵に視線を向けられるのは、クリスの唯一の付き人である。

 (んー、てかこいつも謎だよなー。俺と同じなのかなって思うけど正直自由行動できねーしな)

 クリスにたった一人の侍女としてつけられているケイティ(クリスの我儘で一人しかいないとされているが、アーティクル侯爵がクリスの事がばれないように一人だけにした面もある)は謎である。

 正直クリスは自分と同じように行動を制限されているのではないかと考えていた。

 (だってこいつ馬鹿だしなぁ。だって娘のためにって奴隷に傀儡の魔法刻んだりするとか普通しねーし)

 アーティクル侯爵は親バカである。娘が可愛くて仕方がない。というか、クリスはスフィネラの踏み台になるように、スフィネラが成功するようにとこんな真似を十年もさせられているのだ。

 そのことを考えれば、ケイティも同じ可能性も十分ある。

 「お前はクリスの行動をちゃんと見ておくようにいっただろう! お前も奴隷に戻してやろう」

 などといっているアーティクル侯爵にクリスは突っ込みたくて仕方がなかった。

 (いやいや、『クリス』はなんもやってねーし。『クリス』の行動はちゃんとケイティに制限されてたし。やらかしたのは、絶対あの自称『クリス』に無理やり命令されたっていう取り巻きたちだろうが。

 こいつ、普段は冷静沈着だって噂なのに、娘の事になるとなんもかんがえてねーだろ)

 クリス、呆れ顔である。

 しかし、クリスの中の人に「こいつ馬鹿だろ」っていう視線を向けられているだんんて知りもしないアーティクル侯爵である。

 「ふん! 二人仲良く奴隷に戻してやる。まぁ、最高裁判が終わった後の話になるがな」

 最高裁判を行うと王太子が宣言した状態で、その前にクリスをどうにかするのもどうかと思ったのだろう。というか、スフィラネはクリスのことを姉だと思い込んでおり、そんなことはしにくいのだろう。

 (多分、最高裁判が終わった後に理由を適当につけてあのお花畑には療養のためとかいろいろ言って、俺を奴隷に落とすのかな。つか、それより、最高裁判って死刑とかされる可能性もあるか。俺どうなるかな、マジ)

 クリスはそんな風に考えて、内心溜息を吐くのであった。




 最高裁判は迫っている。




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