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矛盾領域・図書館都市‐タクミとシャロの洗脳術

 

 

 寮生活だ、毎日なにかしらの文章を一定で書かせられる。

 ドクトリンと奴は言った、それは情報量至上主義、というモノ。

 どんな粗悪品でも良いので、量産するが良し、というモノ。

 

 毎日とにかく多読する。

 人間知らないことは知らないままで、決して描けない。

 脳の奇跡的な機能である所の想像力、それも所詮は物理現象でしかなく、限りなく限界がある。

 

 全部須らく速読だ、無意識下で情報を処理して脳に刻み付けるので、娯楽性は皆無。

 情報収集活動全般は事務作業のようなもので、まったく全然楽しくない、むしろ苦行だ。


「ほら、さっさと書きなさい、量出しゃいいのよ?

 変なプライドは捨てなさいっ、え? 最初から持ってない? そうなの、へー」


 自分が既に終わったから、煽っているのか?

 コイツはシャロ、天才だ、それ以外に特に尊意を抱けるポイントは稀少。

 なぜか、俺を煽ることに生涯の生き甲斐を感じる奇特な存在。


「つまらな、ゴミゴミ」


 提出した原稿用紙千枚を放り捨てて、罵倒された。

 

「まあしょうがないわね、後発人類だし、これから一生掛かっても私に追いつけないけど、ま、ガンバ」


 そうなのだろう、博識になったつもりでも、明確な差と意識できる。

 

「なにか喋って言ってみなさいよぉ、え? ああ、もういいわ、貴方ボキャブラ貧困過ぎるからね」


 俺はその場を後にしようとする。


「あら、何時ものランニング?」


 どうやら着いてくるようだ、何時もどおり。


「身体を鍛えても無駄よ、その程度で至れる境地じゃないもの。

 ノリとテンションと勢いで、どうにかなるレベルじゃないの、分かる? 

 どれだけ地獄の鍛錬を積んでも、決して届かない高み、だからこそ絶対に比する価値がある、お分かり?

 貴方はもう終わってるの、私には一生を賭しても勝てなくて、馬鹿にされる運命の道中を永遠と歩き続けるの。

 まあ、だからこそ傍に寄り添って、煽っているのだけれど。

 ねえ、不可能を可能にしてみせてよ。

 そうすれば、私が不可能を可能にした、そういう気になれるからさぁ」


 無理だろう、不可能は不可能だからこそ不可能なのだから。


「そう、諦めるんだ、、、だったら殺すわ」


 いつも腰にぶら下げるように保持する、レイピアを神速で解放、次の瞬間には喉もとに切っ先が食い込んでいる。

 

「ああ、いま、貴方の命を掴んでいる、支配している実感、加虐の衝動を抑えられないかもしれない。

 ねえ? わたしに生殺与奪の権利を、酷く気紛れな心で握られている、どんな気持ち?

 ここで死ぬかもしれない、殺されるかもしれない、ちゃんと想像できてる? 怖がってる?

 イメージして? 貴方の命は風前の灯、今次の一瞬には消えてなくなってる、、、、、かもしれないの。

 わたしがちょっと力を込めれば、喉元突き破り、激痛と共に鮮血が溢れ出すの。

 己の血を目撃したことある? それも大量に大量、一目で致命的と分かるほどに大量の大量。

 やっぱ、そういう鮮血に濡れないと、実感なんて湧かないかっ。

 でも、殺せないのよね、いろいろと勿体無くて。

 そうだわ、それじゃ、こうしましょうか、多分、実感湧くと思うから」


 利き腕じゃない肩を刺された、普通に、絶叫が迸る。


「あら、肩を串刺しにされた現実は初体験? だったらおめでとう。

 貴方は新しい扉を開けたようなものなのだから。

 やっぱりどうせ生きるなら、こういう現実体験を実際試してみないといけないの。

 そうでないと、生きている内に入らない、所詮は視界に切れがなく、見えているもの全てが色褪せている」


 肩を踏まれる、ただただ激痛が紅に迸る。


「まだ掃除が必要? 

 こびりついた汚れ、濁りに浸かって培養された、堕落の汚れを綺麗にサッパリ贖罪しないと。

 貴方は、ただ生きているだけでも罪深く、わたしが見ているだけでも吐き気を催すの。

 ああ、やっぱ、死なないと、もう無理かな? 致命傷なのかな? コレ。

 貴方が再起不能だと確信できた時に、また殺してあげるから、覚えておいて」


 解放される、しかし、痛みは消えず、脳髄に刻み付けられたままだった、恐怖と共に。

 次の邂逅、何食わぬ顔で近寄って。

 

「あら、頑張ってるじゃないの。

 どうしたの? 何時もよりオドオドビクビクしてるわ。

 面白いわね、やっぱり乱暴されると、犯された女の子みたいに殊勝になるものなのね。

 うっふっふ、ああ楽しい、可笑しい、貴方が可愛く見えてしまいそう。

 特に、その目、いいわね、酷く怯えている人間だけが醸せる色があるわ、ソソらせてくれるわ。

 ああ、もう一回やってみたら、今度は、より濃い色が見えるのかしら? それとも壊れちゃうかな?」


 肩を組むようにして、昨日の場所を圧迫させられる。


「忘れるんじゃないわよ? わたしは何時でも、貴方を害することができる、それも真底から常軌を逸して、ね。

 心底から地獄の苦しみだったでしょう? 貴方が実体験したことよ? とても、とても忘れにくいはずよ。

 まあ、痛みだけで洗脳できるなんて思っちゃいないわ、だけど、性的な事をするには、愛情が足りないし、どうしましょうか。

 まあいいわ、気長にやりましょうかね。

 次は、どんな事されたい? リクエストがあれば、最大限沿うようにするわよ?

 貴方に、一生掛かっても拭えないトラウマを刻みたい。

 たとえ、わたしが死んで無くなっても、ずっとのこり残り続けるような、そんな憎悪を抱かれたいと、そう想うの。

 可笑しい? ええ可笑しいでしょうね、わたしは他人とは絶対に違う、可笑しい異常だもの、自覚くらいあるわ。

 なぜなら、わたしは誰よりも不幸で、恵まれない、そんな悲劇のヒロインだもの。

 今まで、誰かの為に必死で、努力に努力を重ねて、苦しんで抗って、果てにあったものが無上とも思えるほどの絶望。

 こんな悲劇、ほかにあるとも思えないくらいの、全人類で自分だけが絶対の強度で、本当の意味で不幸だ、ってね。

 だから、貴方には期待しているの。

 もしかしたら、わたしよりも不幸に、なってくれるかもしれない。

 この気持ちを共感して、シンパシーみたいな、今まで決して味わう事がありえなかった、甘美なアレ、そう、あれ。

 わたしの人生に、唯一にして絶対の価値、意味を、与えてくれるかもしれない。

 生きていて、本当に良かった、なんて、陳腐でありきたり、だけど、今までわたしが絶対に味わえなかった、感情、感動。

 それを貴方の中に、わたしは確かに期待して、見出したの。分かってくれる?。

 押しつぶされるほどのプレッシャーを、感じるべきだわ。

 だって、こんなにも貴方を想う、わたしの気持ちが無視されるなんて、認められない、許せない、我慢がならない、もの。

 貴方は四六時中、苛まれるべきだわ、滾り続ける情熱に焼かれて、身も心も炎熱無限地獄に落ち続けるべき。

 そうでないと、報われない、気が狂いそうな、いえ、事実現実狂ってる、わたしを無視するの? ちゃんと受け取ってよ。

 貴方の受容器じゃ、幾ら増幅して拡大して拡張した果ての、水増しされたモノでも、足りない。

 わたしは余りにも巨大な精神世界、感情を宿してるから、貴方が感じれるのなんて、氷山の一角の氷一粒程度なの。

 だから、もっともっと、感じて? 気が狂ってもいいの、発狂死しないギリギリで、わたしに必死になって頂戴ね。

 そうすれば、きっと、貴方だって、幸福になれる。

 だって、わたしを幸福にしたんだもの、貴方も嬉しいでしょ?

 世界的に見ても、最大級の悲劇のヒロインを救う、なんて、男の子の願望そのものの体現じゃない?

 わたしは貴方に求められるだけの、素養を持っている。

 こんな涙を誘うほどイジマシク、必死で、惨めで、哀れで、実際可愛そうな女の子が、どこかにいる? いないでしょうよ。

 貴方はわたしを愛さなくてはいけない、世界で最も愛情に溢れた、そんな人にならなければ嘘よ。

 そうしなきゃ、きっと神様だって、貴方を許さない。

 世界が牙を剥いて、貴方を無限大の不幸に落とすほどの、強制力の伴った最悪級の罪業でしょう?

 実際、わたしも愛されたい、その為の全てを一切厭わない、貴方だけを愛したって構わないわ。

 貴方を糧にして、幸福に導くことを、生涯の事業にしたいと、心の底から想って、その姿を余すところなく完全再現もできるでしょう。

 この無尽蔵にすら思える、溢れに溢れる感動を、どう伝えたらいい? おしえて?

 きっとね、貴方からも、貴方も、わたしと確かに同一、同じなんだって感じれたら、そのとき、何かが全て、どうにかなる気がするの。

 死んだって生きたって、どれだけ幸福にも不幸にも、なっていいって、後先考えずに思える屈指の強制力を持つのは、わたしの中で、この事象を置いて他にない。

 だからお願い、わたしを誰よりも、何よりも、どんな無限の森羅万象よりも確かなモノとして、愛してちょうだい? わたしも、同じように、そうするから、信じて?

 事実いま、わたしは貴方をそのレベルで愛してる。

 嘘じゃない、唯一と心に決めて、見続けると決意して、絶対の思考停止を完結したの。

 こんな、一方的な愛で構わない、それすら忘我してる、なぜなら、両思いになれれば、さっきのを得られると確信するから。

 わたしを、わたしの満足のいくままに愛して?

 無尽蔵と思えるくらいの、なにかをちょうだい?

 そうじゃないと、絶対にわたしは満たされない、不幸なまま、死んで無くなるのは、きっと昔から見え透いていた。

 無限の不可能を可能に変えて、して、此処に上り詰めて、わたしを捕まえて、ずっと待ってるから。

 幸い、貴方には無限の時が許されてる、でもね、それでも一瞬でも早くで、お願い。

 わたしはずっと無上の苦しみに喘いで、今も塗炭の日々を生き続けてるんだから、貴方だって悲しいでしょ? 悲しい話でしょう?

 フィクションみたいな話だけど、実際、わたしは無限大に強度で求めている。

 少なくとも、わたしが無限と認識し認める、そんな強度の激情を抱えている自覚がある。

 何もかもを飲み込み消滅させるだけの、自分すら含めた、世界に対する悪意と憎悪、とか。

 弱者を踏みにじり、利己のみ以外が掛け値なしで無い、己の力や益にならなければ、害悪、世界のリソースを無駄に消費するだけの宿敵。

 そんな、ただ無限に強くあるだけが全ての、そんな、目前に無限に広がる不幸から少しでも逃げる、力だけを唯一求めている、最弱に弱いわたし。

 それを打ち砕けるのは、同程度のモノだけなの、つまりは最強ね。

 最強を目指して、頑張って、それ以外に、わたしが救われる道はないし、貴方だって、最も幸福になれないと想うの。

 お互いに利益になる、神格の関係性よ、無条件で相思相愛に、私達はなれるのよ。」


 俺はずっと耳を傾けていた。

 発する言の葉一枚一枚が、俺の頭の中をカチリカチリと動かし、頭の螺子とも言えようか、絶対に固定している、そんな感覚を味わいながら、、、。


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