表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/407

黄金の兄妹‐銀の世界にて

  

 

 突然だが。

 光速以上は存在しないが、宇宙は光速の三倍で膨張する。

 なんだか、可笑しな話だ。


 素粒子、光が、情報の最小単位、質量が限りなく0。

 あるかない、0か1、暗か明、それが事実上、この世界での最小単位の事象だ。

 最小単位の事象移動が、光速、秒速30万キロメートル、それ以上が、ない。

 なのに、それ以上が、宇宙の膨張速度だ。

 秒速90万キロメートルで永遠に思えるほど拡大し続けている、現在進行形で。

 可笑しな話だ、不思議な、不可解な、不可思議な、事由だ。


 と、まあ、茫洋とさせる大地、遥かに続く地にて。

 どこまでも寒々しい、氷雪だらけの荒けて何も無い、不毛すぎる場所だ。

  

「ちょっと、兄さん」


「ああ、なんだシャル」


 横手から声。

 こんな場所でも、妹の金色滑らかな流麗な長髪は変わらない。


「ほら、着いたみたいだけど?」


 俯いていて気づかなかったが、そのようだ。

 こんな銀世界に、なぜこれほどのっ、と思わせる不可思議な威容。

 超絶に壮大すぎる、超超高層人工建築物体である。

 全長はどれほどか? 目側で3キロメートルは下らない。

 

「シャル、切り札の準備はよろしくな」


「分かっているわ、まあ、使いたくはないのだけれどね」

   

 話しながら構造物に近づいていると、その正面扉が独りでに開いた。


「どうやら、向こうは俺達を待ちわびていたみたいだな」


 巨大通路を進み続けると、広大な吹き抜け空間。

 遥か高みまで、空が見渡せる、そんな構造物の中心点に辿り着いたようだ。

 周囲には沢山のテラスみたいなモノがあり、ここはまるで中世のコロッセオ、格技場のような趣を抱かせる。


「黄金卿、何の御用かな?」


 その一つから、現われる影。


「彼が、銀の妖精王?」


「おそらくな」


 俺達は互いに聞こえるくらいの声量で呟きつつ、相手の姿を捉える。

 銀の髪に銀の瞳、そして老練した見目ながら、まったく若々しさが抜けない、怪物の姿。


「そうだな、用というのはそれほどじゃない、ただちょっと、威力偵察がてら、略奪をしにきた」


「ほお、略奪か」


「そうだ、銀のクリスタル、大量にあるんだろう? それが欲しくてね」


「略奪者とは、これはまた、久しく見えなかったが。

 まあよい、最果ての魔女たち以来だ、存分に歓迎しよう」


 その時、別の大門が開き、大量の有象無象、そうとしか形容が出来ない、敵と見える一群が殺到してきた。

 ざっと見ただけで、万を越える軍勢、それが隊列など関係なしに、雪崩のように血気を溢れさせて迫ってきている。

 

「正直、まだ我らの実力を見誤れるモノが現存していたとは、想わなかったのだが」


 上から観戦を決め込んだらしい奴を尻目に、俺は前に出る。


「どうするの?」


「そりゃ、やるだけだろ」


 黄金の剣を抜きざま、駆ける。

 駆けて、駆けて、接触。

 ぐっしゃぁ、っと、万の軍勢の先頭集団と、酷い衝撃。

 身体が全壊しながら超再生し、ドロドロに溶けながらも、剣を振るいに振るう。


「惨めな戦い方」


 後方で妹が、何かいっているのだが、聞こえていない振り。

 その時、上方から何かが落ちてきた。

 パッと見、銀のクリスタルに見える。


「使ってみよ、見物料だ」


「気前が良いな」


 走って、クリスタル、それを吸収すると、力が溢れた。

 先ほどとは比べるのも馬鹿らしい、物理強化が促された力の波動。

 万の軍勢を一太刀で、十分の一ほど斬減させる。


「なるほど、クリスタルを欲しがるというわけか」


 得心したような声を背後に、一気に畳み掛け、敵軍を駆る。

 妹が、飽きたような溜息をしている。

 更に、上方からクリスタルが落下、そばから吸収。


「あっ兄さん、それはまずって、言おうかと、もう遅いですが」


 その一つ、微妙に赤色を帯びていたモノ、吸収と同時に身体が痺れ、動かなくなる。

 その時にはもう、妖精王が階上から飛び降りて、俺に向けて銀の剣、刃を振り下ろしていた。

 キィンっと、澄んだ音が鳴り響く。


「我が一太刀を止めるとは」


「こんなの、なんでもない」


 妹がそれを正眼から受け止めていた、敵はバックステップで距離を取る。


「兄さん、馬鹿も大概にしてください」


「いや、わざとだけどな」


 動けないながらも、口だけは動かせたので、そう言う。


「率直に聞きますけど、兄さん?」


「何かな?」


「勝てませんよ?」


「そら、妹で勝てないなら、俺でも勝てないから、負けるわな」


 歌姫属性持ち、クイーン級信仰力の偏在集結点、時空間振動式の魔法、諸々持つ妹。

 だが、銀の妖精王の方が、おそらく若干勝る、そのように力関係が形成されているのはもう知れていた。

 

「今回の、その肉体、幾分に投資しているようだな?」


「ところで兄さん、当然ですが」


 突然、風が変わったような、異質な気配。

 周囲空間から、一切の光が消失し、歪ながらも美しい歌声が鳴り響き、一旦静止。


「積年の恨みつらみ、その矮躯にぶつけて、よいという僥倖、謹んで受けさせて頂きます」


 蹲る俺を見下ろす位置に立ち、とりあえずとばかりに、妹は打ってきた。


「おいおい、どうした?」


「兄さん、言ったじゃないですか、それは、駄目だと。

 わたしは兄さんを愛していますが、恨んでもいますと。

 余りにも苛烈な羞恥攻めなどなど、兄さんのわたしに対する、一側面ではありますが、酷い扱い、仕打ち、忘れられたモノでは、ないんですよ?」


 台詞の間に、周囲の世界から集めたエネルギーが収束される。

 真っ暗な場所で、彼女は放つ直前に、一拍入れる。

 

「そして、怨恨合わせて力量持つ、妹わたしが、単機で兄さん、貴方に勝るでしょうか?」


「勝るとも」


「ならば、試させてもらいますよ」


「おい、やめろ、俺が死ぬ」


「妹に劣るという、醜態、恥辱、許されない罪、兄さんはもっと恥を知ってください」


 兄には、妹よりも、実際上の力で、強くいて欲しい。

 そういえば、そういう信条を持っていた。

 という事を思い出しながら、俺の意識はそこで途切れされてしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ