‐ナルディアとクリスタル戦線で真無と
「抉れ潰れろ」
そこから出現したモノには、因縁があった。
怨念であり、愛情のようでもあり。
とにかく心の底から、互いを敵として認定認識した。
お互いにとってお互いが、それは世界の歪みだった。
カヤの目玉から溢れ出した、泥のような暗黒の塊は、ずびゃーっと此方に襲い掛かってきたのだ。
もちろん、俺なんかがそれをマトモに食らう言われはない、即刻、世界から限りなく処分した。
コイツが表れた場合、俺も人間として全力を出さざるを得ない。
人とは、極限まで意識を集中すればするほど、無上に活性化し続ける脳細胞が、ある。
体感時間をどこまでも長く、圧縮してくれる。
一秒が十秒にも百秒にも、もっともっと果てしなく長くなっていく。
敵は強い、だが、神ではない。
俺の意識化に存在するアレ、にはほど遠い。
意味不明に先鋭で現代的な、前衛芸術で、馬鹿みたいに巨大なオブジェクトみたいに見える。
暗黒色に塗り固められた、虚像の塊、偶像。
所詮は無機物のような、モノに過ぎない。
凡俗なる存在なら、人間には勝てるはずがないと、直感的に思えてしまう。
だがそれは逆だ、人間に勝てない存在など、存在としては存在し得ない、それがこの世の唯一絶対の真理法則。
「まさかっ! 混沌の神か?」
いち早く変化して、青の吸血鬼の本領を垣間見せ始めた奴が言う。
「そのようね」
合いの手を入れるは、全身に闇の衣を纏い、まんま魔女の装いを始めた奴。
「ちがうね」
俺は呟く、奴も所詮は、俺と同じ人間だと。
神の領域とは、絶対停止のイデア領域に限定されている。
幻想の領域の、エクストラゼロ領域と呼ばれるポイント限定で降臨現界できる臨界存在。
まあ一般の俗には、クリスタル戦線と呼ばれるところなのだがね。
「ならば、俺とは同格なんだよ」
朝見た映画の再現のように、光り輝く秩序の力が身からあふれ出す。
対の一手は読みどおり、同規模のスケールの爆発、対消滅が起こり、お互いの概念が世界にエネルギーとして拡散する。
「あはっ」
対手は、それを見届けると、身体を収縮させて、初め見た美女の姿に戻っていった。
「クリスタル戦線」
「はぁ」
「そこで得られたモノが、世界を維持する燃料、糧」
会話の内容を予測して、俺も輪唱するように。
「無限に、永久に、収縮する世界」
「特殊な機関で、私達だね、クリスタルを燃焼させることによって、世界を満たし膨張させる熱とする」
「つまりは、こういう事か。?」
パチンと、指を鳴らすと、周囲の風景が一変する。
「そう、現に、味方は既に周囲で幾百の屍を晒している」
「なぜだ? 絶無の勢力は、まだまだ蓄えを溜めるのに忙しいだろ?
なにが此処までの障害を発生させたんだ?」
訝るように、周囲を観察すると、観測できない領域、感じれない想像の範疇外に、何か歪に感じれるな何かがあった。
「そう、だが、彼らが自分なら”できる”という、確信が。
どうやら、一定数量を越えて、一切揺るがないのはずの世界に、できる力を、結集。
まさに今この瞬間に得たからだろう」
どんな意味があるのかないのか一切不明、片言のわざとなのか、崩れ過ぎた言語で状況を表そうとしている。
「ああ、なんだ、つまりあれか、仮定の世界に存在を予測された、真無の勢力の仕業か?これは?」
「そう」
言いながら、お互いが完全にフルな概念を装備する。
軽装の衣装を閃かせながら跳躍。
即刻の間合いで、複数の鞭のような、しなっているが硬いだろう、破滅的な物理攻撃の刃の応酬が来たのだ。
「アブソリュートゴールド」
「ナイトメアカオス・ハイエンドブルースフィアデッド」
進化した反射神経で見た視界は、事実を克明に写した。
何もない空間から、何かが現れて、何もない空間に消えるように退避したのだ。
お互いの対概念がぶつかり合い、対消滅、計算された攻撃だった。
もしお互いの概念がぶつかり合わなければ、軽く攻撃が乱反射して、この場で小規模ビックバン現象が巻き起こったろう。
「真無に対抗するには?」
「この肉体は、如何にも道化で、不思議なほどに超越的なヴィジョンを写す。
だから、それを写したこの身で、それを超越した存在性で否定すれば、現象は収縮するだろう」
またも、先ほどと全く同じ攻撃、テンプレートのように二重に見えた。
ならば、すべてを楽々に回避。
最適進路で前進する為に、幾つかはわざとギリギリの、掛け値なしに紙一重でかわしもした。
絶対零度に圧縮された、神域とも呼べる時間軸で、しかも空中で方向転換など、空気抵抗さえあれば、十二分以上に可能だと知れ。
右手に持っていた剣、使う必要がなかったが、ここが使い時だろう。
敵の部位、胸部と思えるに叩きつけるように、突き刺す。
ぐぐっと、豆腐にナイフをねじ込んだような、酷く柔らかい手ごたえが、あっただけだった。
秩序の剣は、対象の事象が、秩序的でないと断定、裁定を処理、絶無に転換する用意を整える。
なるほど、このロジックからすると、真無は、絶無の亜種に分類できると推理しながら、
「っ、あぶな」
飛んできた物体、先端が尖っている以上に、その速度が既に致命的。
速度なんてのは、突き詰めれば、事象の一側面に過ぎない、はず、だが、真に無いはずの虚数レベルだと不味いだろう。
避けることは、不可能。
そも、突き刺しながら、突き刺している対象が後退しているのだ。
同スピードで高速で前進しつつ、ほぼ真横に移動するのは、思っている以上に難しいのだ。
難易度の高い現象は、発現までどうしてもタイムラグを生じる、それはこの場合、いただけない。
だから、あらかじめ武器を、前面に振れるように構えているのだ。
「おらおりゃ」
武器と武器の接触時、触れ合う瞬間すらも逃さず、明確で明瞭な視界と頭脳で直視する。
ガギィイン!っと、思っていた以上に凄まじい音とスパークが弾け飛ぶ。
いま活躍した武装を投棄、完全破壊するのに最適な、強度十分しかし最大軽量のモノを想定。
第二第三射物から、手に長刀を展開、現出。
それら上下に振り回すように、咲き誇る花々のイメージ、百花繚乱に狂う乱舞のように。
乱雑に、それ自体を、自分でも客観的に見ることが出来る。
が、実際は、精確に正確に、一部の隙も無駄も無く、精密機械のように最大限感覚を研ぎ澄まして実行、全弾撃墜。
「もう、残りはないよな? では、消え去れ、エクセキューターイレイザー」
巨大な秩序に押し潰されて、敵と呼べた存在は、絶無の中へと舞い戻っていく。




