エクストラシャペルン学園物語‐イザクとシャルと、ミッションとか
「よし、掃討完了、次のフロアに行くぞ」
夜中、巨大な基地の、複雑な迷路のような回廊を行く。
「イザク、こんな本格基地、いつの間に建造されたんだろうな?」
「まあぁ、タクミ、講師陣なんて全員ばけモノみたいな奴らだ、常識じゃなにもかも測れねーんだ、考えるだけ無駄だぜ」
言いつつ、十字路の左右から現われた敵に対して、お互い即座に逆を向いて、アサルトをぶっ放す。
「はっは、抜け目無いなぁああ!!」
「にゃっはは! そっちこそぉおおお!!!」
バババン!バババン! 時間にしては数秒程度だが、マガジンが空になったので弾装交換。
しかしその甲斐なく、既に一端の敵は駆逐されたようだ。
「今回の宝の位置は、割と奥の方に設定されてるんだな」
「ああ、割と難易度高めだな、普通なら、こんな中核じゃなくて、すこし外れた位置にあるモンだからな」
それでも、二人助け合い力を合わせれば、まあ簡単とまではいかなくても、爽快に任務を完遂できるのだが。
そして、まあ、その後は語ることも無い、俺達は二人であっさり敵を掃討、黄金に輝くインゴットみたいなのを手に入れた。
「これって、講師に提出せずに、持ち帰ってセシメテモいいのかな?」
「にゃはっは、いいかもな、だけど、単位を落とす事になるぜぇ」
「そうだな、やめとこっと、だいたい、金なんて幾らあってもなくても、邪魔になるだけだし」
「はっ、カッコつけてんなぁカッコいい!」
侵入経路とは別の、高射砲が沢山外向きに並べられた、テラスのような場所から、ラペリングで地上まで降りることにした。
この陣地を昼間に、侵入じゃない形で攻略するなら、これらが火を噴いてたんだろうなって、何気ない感慨を抱く。
「おおぉ、夜更けらしいぜ」
相方の言うとおり、基地から見える山の稜線に、薄闇を茜色に染め上げようとする、太陽の黄金色が見え隠れしていた。
「ああ、もう少しココにとどまって、朝焼けを鑑賞したい位だ」
そう言った時、何気ない感覚の違和感を知覚した。
そのトキには、既に反射で身体は動き、その必殺の一撃を、掛け値なしの紙一重で交わしていた。
「っ!! だれだぁ!」
スチャっと、硬い靴音だけを響かせて、着地したような音。
振り返った先には、暗闇でもハッキリ分かる黄金色の髪を翻す、。
「って、シャルかよ、下らないことするな、クタバレ」
「あら、御挨拶ね、せっかく近くにいるようだから、ちょっかいだしてあげたのに、感謝してくれてもいいのよ?」
戯言吐く口の弧の形に溜息吐きつつ、抜きかけた獲物から手を離す。
パチパチとイザクが拍手しながら、こちらに近づく。
「にゃはっはぁ!いやいや、シャルさん、流石だねぇ、殺気を一切感じさせない、まるで一流の暗殺者のような手並みだったぜぇ」
「イザク、馬鹿ね、私は元でもなんでもなく、現役のプロの暗殺者よ?」
サーベルのような鋭利な刀剣を、見せびらかすように二度中空を回せて、彼女も獲物を納める。
「それで? 俺達は、これから夜勤の講師が暇を潰してるだろう派出所に、ミッションクリアを報告するんだが?」
「ええ、そうでしょうね、もう終わったこの場に、用なんてないんだからね」
「あーあ、よし、かえろうぜ帰ろうぜ、決まったら即座に行動!
よっしゃ!誰が一番に派出所に着くか競争だぁ!」
おちゃらけた調子にイザクが言う。
俺もシャルも呆れたように肩を竦ませながらも、一瞬後にはスイッチを切り替えて、追いかける。
「馬鹿やろおぉ! ずるいぞぉ! その場で五秒またんかいぃ!」
「貴方達はレディーに対してハンデを背負うべきだわぁ!」
「はっはっはぁ! うるさいうるさい! これは実戦だぜぇ! 甘いこと言ってるなってのぉ!」
ちなみに、この競走は途中から、というよりシャルが大規模広域魔法を繰り出した後から
別ゲーと化し、もう意味分からないクソゲーになったので、もうゴミ、思い出したくも無い、どうにもなれってんだ。
「はぁ、はぁ、やっと、、着いた」
「にゃは、はぁ、ミッションよりも、疲れたぜ」
「ふん、貴方達二人とも、鍛錬が足りないわね」
なぜか余り疲れてない風なシャル、まあ当然なのか? どうなのか?
こいつは任務受けてないわけだし? それにしても別格風吹かしてる嫌な奴である事に変わりない。
「やあやあ、深夜にご苦労様、ほいなポンポンと、お疲れぇ~~、お休みなさーいぃ~」
なぜかパジャマ着の、派出所待機らしい講師が教師室ノック後だらだら出てきて、また直ぐに戻っていった。
「てか、いま何時よ?」
「さっきは朝焼け見たがぁ、どうやら実際時間じゃ、まだ夜中の三時か四時らしいね」
「ミッション用に作られた異空間の事象で、時間の感覚が狂っていたみたいね」
俺達はとりあえず、疲れた身体を休めるため、派出所内の休憩室、談話室みたいな所に全員向った。
「で、シャル、何しに来たんだぁ」
「さあ、なんとなくよ、なんとなく、深い意味ないわ」
四人掛け対面席で、俺の隣にイザク、は着席と同時に蹲って寝た、疲れていたんだろうかね。
それで、目の前のやつとちょい雑談に興じようとしている。
「にしても、毎度お馴染みの、不意打ちで暗殺してくる悪い癖はやめんか」
「いやよ、あれは私の生き甲斐、性質みたいなモノだから、矯正は不可能だから」
俺は「そうかい残念だ」と言って、一旦言葉を切る。
「ところで、貴方達、いつか暇なときある?」
俺はやっと本題に入ったか的なノリで、重々しく構えた。
「はぁ、今度はどんな難解ミッションに俺達を嵌めるつもりだ?」
「ちょ、そんな風に嫌な言い方しないでよぉ」
シャルは媚びてるつもりなのか、手を乙女みたいに合わせて、お願いをするようなポーズをする、形だけだが。
「それはしょうがない話だ。
毎度お馴染みになりつつある、お前からの誘いミッションは、
今まで一つの例外なく、ヤバイすぎてもどうにもならない、クソゴミ屑みたいな奴ばかりなんだ」
「ふーん、、、それでも、十分な見返りがあるから、いいじゃんっ」
反省の色見せず、開き直ったような声色で言う。
「見返りねぇ、、それも、どうだかぁ。」
ちなみに、今までのミッションだが、長期に渡って拘束される持久戦とか色々。
意味の分からない化け物染みたスペックを持つモンスターとの、血みどろの死闘等々、そういうのだった訳だが。
「あー、もううるさい! あんたは私様に従ってればいいでしょう! 命令聞きなさい!」
「むちゃくちゃだぜ、あと残念なお知らせだが、俺に奴隷願望も女王様に従いたいとか、そういうの期待しないでね」
シャルは馬鹿みたいに頬を膨らませて見せる。
微妙に可愛らしくもなくはないが、滑稽度の方が若干勝る、それはコイツが可愛い系じゃなく綺麗美人系だからだろうか?
「まあいいわ、どうせ、貴方達はわたしのお願いを無碍にできないんだからね。
私の事だいすきだから、本気でお願いすれば、なあなあで従ってくれるん、、でしょう?」
こちらを信頼して、信用してくれてるような、無垢で純粋な、ああ、普通に平常に逆らい難い女王だが、純然に少女の女の子の目だ。
「、、、どうしようもない屑が、くたばれくたばれ、お前なんて、死んでしまえ」
確かに、俺達は、なんやかんやで、毎度従ってるが、そんな言い方されたら、しまいには逆らいたくなるぞ。
「さて、ね。
これで予定は決まりとして、懸案のミッションだけど、当然、私一人じゃ難しいレベルなのよ。
足場の悪い荒波のような湖に生息する、飛行能力を備えた水竜でね。
攻略法としては、こちらを捕食せんと、水中から頭覗かせたところを、上手い具合にね、
その一瞬に満たない間隙ついて、頭部に捕まって、飛び乗る感じなのよ。
でもここから大変なところで、ああ、あとちなみに、水中で戦闘とか無理無理だから、敵は水中無双系って思っておいて。
で、そして、頭に飛び乗った後は、水竜は只管に頭上に飛び続ける感じなのよ。
だいたい大気圏かな? それくらい飛んだら、振り落とすのを諦めてくれる、もちろんかなりそれまでキツイわよ、覚悟しておいて。
で、そこから急降下、水竜は大陸のどこかに落ちるのよ。
でもそれが実は水中とは限りない、地面かもしれない、落下の衝撃は水中なら緩和されるけど頑強な岩盤だと最悪、これは流石に運頼み以外対策無いわ。
それからそれから、対水中戦と、対地上戦の役割フォーメイションの割り当て、、、うん? なに?、」
俺は手をあげたのだ。
彼女は中空に立体窓など閃かせながら、怪物の姿や図形いろいろ、同時に立て板に水で語っていたのだ。
「ちょっと休んでからでいいかな? イザクも一緒のほうが、たぶん、いいっしょ」
まあ、本音は、この苦行を俺一人だけってのは、ね、一緒に苦しんでくれっと思ったのだ。
「ううん、そうね、確かにそうかも。
それじゃ休みなさい、寝なさい、わたしも寝るから」
襲ったら駄目よ、なんて戯言吐きながら、その場でうつぶせった。
よし、俺も英気を養うために、ちょっと休むかと思い、同じ様に寝入ることにした。




