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矛盾領域の女王達‐テラスで世界語り

 

  

 概念使い、と呼称され呼ばれる存在が居る。

 世界には極々少数、代替のきかない、唯一無二の概念を持ち操る存在がいる。

 それは例えば魔王などなど、超有名な代表例ならばソレ。

 おおよその傾向として、唯一無二の頂点、という概念などがソレにあたる。

 そして、女王という、究極に位置する概念使いが、いまこの都市には四人、全員が珍しくも集まっている。


 ハートの女王、シャルロッテ=エーデルワイス

 スペードの女王、レイル=ルシファー

 クラブの女王、リディアンヌ=エクストラシャペルン

 ダイヤの女王、リリーローズ=シャドウ


 晴天の空から降り注ぐ日を浴びて、空に溶かすように言の葉などを、その内一人が呟いた。


「この世は、本当に救いようがない」


 この都市の頂点、並び立つものがない、最上階の一室の外。

「レイルちゃんのハイメガキャノンは!! 一撃で神話級のドラゴンを! 運命的に粉砕するのだぁ!!!」

 テラスから眼下を見下すように、麗しく金髪靡かせながら四人の少女の一人が言う。


「ちょっ、レイル、ちょっと静かにしてぇ」


「ううぅん? どうして? シャル?」


 他三人の内、対面に距離をとって座る二人には聞こえない呟きだった。

 だが隣、相対する彼女に引けを取らない麗しくも瑞々しい黒茶髪を、背中に流す少女が目線を向けて問う。


「レイル、世界は、全体的に八割の不幸と二割の幸福で出来ている」


「そうだね」


 なんでもない当然の事実を指摘されたように、レイルと呼ばれた少女は同意する。

 ここで、対面の二人も、対面の二人がなにがしか話したことに気づき、各々の目線をそちらに向けた。  


「だから、ありとあらゆる善と悪に意味はなく、全ては偽モノ、偽善と偽悪に溢れている」


「くだらない話してんな、お前らは」


 対面、位置的には金髪少女の真対面、座す少女が苛烈な語調で突っ込んだ。

 金髪の少女と同様の華麗な金髪を持ち翻す彼女だが、相対的に眼前の少女より陽の印象を振りまく快活さである。


「リディア、何がくだらないのかしら? 教えてくれる?」

「ばーか、善悪二元論で世界を語るそれだよ」

「っぅ!!」 

 激憤を抑えながらも顔をしかめる少女。

 碧眼が煌めき、陰の印象が深まる、それは既に睨みつけて殺意すら発しそうなレベルだ。

 対する少女は、からかいの色合いを黄金の瞳に滲ませる。


「リリー、貴方はどう思うんですか?」


 苛立ちを散らすように、もう一つ隣で事態を茫洋とした海のように見ている少女に問う。

 ちなみに彼女は、この中では無感情な方で、問われなければ言を発さない性質である。


「基本的に、シャルの言う事は世界を表現するに叶っていると、思う。

 世界は救いようがない。

 なぜなら、世界にとっての悪、世界を殺す存在も

 世界にとっての善、世界を生かす存在も

 どちらも究極的には、究極的に正しいとは言い切れない」

 

 鋼鉄細工のような色彩の黒髪を、その色彩とは裏腹に、発声と共に綿毛のように繊細に軽やかに揺らしながら言い切る。

 隣の少女が矢継ぎ早に、その発言者に突っ込む。 


「なんで? なんで? あたしにはよく分からないだけど?

 もっと含蓄溢れる感じに、納得できる形で言ってくれない?」


「現状、世界は不幸が優勢、ゆえに、不幸な存在も慰められている、ということ。

 もしこれが変革され、世界の幸福が優勢になれば、その中で不幸な存在達の慰め、救いがなくなる。

 真に世界から拒絶されて、自己愛、他者愛はもちろん、不幸で可愛そうな世界への、全体愛人類愛、それすら取り上げられるの。

 私は、これほどの不幸は、なかなか無いと思う。

 そして、これを幸福が優勢となった世界では、それなりの多数、全体の約二割程度の不幸な存在が味わう。

 ならば、そのような十二分に不幸な存在達が、世界への強固な復讐心を持つのは道理。

 全力で不幸をばら撒いて、世界の不幸を優勢に、世界を滅消させに掛かる」

 

 黄金の瞳を眇めつつ、真隣の彼女、リディアはふーんっと適当そうにソレを聞きながら、内容も言いたい事もしっかり把握している。

 

「ありがとうリリー、分かりましたか? リディア?」

   

 勝ち誇るような声色でシャルに宣言されるが、彼女はしかし、黄金の瞳で面白そうにニヤニヤ軽くソレを眺め。

 からかい気味に返答する。


「それが、くだらねーってんだ。

 なにを世界があーだこーだ言ってんだが、ばかばかしくて涙が出るね。

 世界ってのはつまり、この私だろーが。

 全員全員、馬鹿で無価値で無意味って言ってんじゃん、救いようが無い世界なんだろ?

 だったら、唯一無二の絶対の価値を有する、黄金の私の為に、世界は在って、利用されるままに在ればいいんだ」


「ねえねえ、みんなぁー! そんなことより遊ばない!! いつまでーもぉ友達ぃぃーってゲーム!」


 呆気にとられたように一瞬黙る面々、だがこの面々である、掛け値なしに一瞬である。

 険悪になる前にフォローするのは、この中で毎度お馴染み、第一人者は高確率でレイルだ

 隣のシャルに抱き付いて、甘えるような所作、で、おねだり染みた可愛い瞳をキラキラさせる。


「ああ、下らない議論、レイルの言う通り、そんなことより、だ、下らない相手とするのだからな」


「いつまでも友達っ、ていうゲームは名称だけでは意味が分からない」


「ハン、馬鹿共が、わかりゃーいんだよぉ」


 女王という特級の概念使いたちは、今は矛盾領域の最大都市で、このように過ごしているらしい。


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