SFの青髪青眼の高貴なるアリシエルの記録
「だんだんゲシュタルト崩壊してきた」
目の前で、旗艦のスペックを説明している少女は全く気にしない。
「で、あるからして、こちらの図面の方が分かりいいかな?
敵からの正面砲撃に対して、逆にリフレクトフレームの方が、より高密度に被弾する可能性があります」
全部概要が数千あるというに、この少女はどこまで事細かに説明する気なんだ?
「記念すべき一回目、初陣、処女出撃において。
当作戦艦が目覚しい戦果をあげれたのも、この新型防御フレームによる所が大きいのは明白。
旗艦でありながら突出、敵の集中砲火を浴びつつ撃沈されず、全体の被害を最小に抑えました」
「確かに、かのインフェリアル星聖域海戦では、我がメーラレン公国随一の活躍を記録した」
「うんうん♪だよねだよね!」
元気よく、髪の毛が踊り跳ねるように首振り。
身体全身も脈動して、てか見えない机の下でコレは飛び跳ねてるのか?
「さて、セルエネル級・第一番艦・メーラレン公国第四艦隊集団旗艦グート、の説明は、以上で終わりだよな?」
「え? はぁ? はいぃーっ??
いやいや、まだまだ全然、知ってもらいたい事の十分の一の説明してませんが、なにか?」
駄目だコイツ、速く何とかしないと、こちらが暗にもうやめろというに、まったく伝わってない天然だ。
こちらの渋い顔に気づいたか、机を叩いて釈明しようとする。
「だって!
我が国家企業純正の、しかも栄えある誇り高き、公国第四艦隊集団の旗艦だよ!
あとあと! 実践仕様の、もしかしたら宇宙初の技術が沢山詰め込まれた艦なんだよ!」
「それは分かるが、俺に説明しないでくれ」
「うえーん! いじわるぅー!!
だったらだったら、我が国の誇るクラフト級空母の真骨頂説明するよ!」
説明したいだけの説明厨か、誰か変わってくれないだろうか。
「その説明の手間暇費用は、これから誇ることになるだろう新型空母アイゼン級開発に回してくれ」
「うえぇうええん。
では、その話題の新型空母、その予想スペックと仕様を紹介します」
何処でどのポイントで、スイッチが切り替わったのか読めなかった。
いきなりキリッとしたかと思うと、中空の立体ウィンドウが瞬間的に変遷した。
「ああ、こほんこほん。
まず、この空母の凄いところは、第一に建造費用」
それもそのはずで、この艦は設計・建造当初から、我が国の経済事情を鑑みて計画が立てられている。
「初めからスペックよりもローコスト化が考慮されていたのです」
「なるほど凄いな、戦艦よりも、まして巡洋艦よりも格安とは恐れ入る」
「この空母の役目は、時空誘導機雷射出専用艦、つまり戦列艦の、射出する物が航空兵器ヴァージョンですからね。
特に防御も考慮されず、装甲はほとんど紙同然、攻撃兵器は隕石などを撃墜できる程度の、到底軍用特殊物質を傷一つ付けられないお粗末なもの。
しかし、それ故の圧倒的な低価格の実現!実に実に!そこを是非とも評価して欲しいのです!」
なにか、感極まって胸が一杯なったのか、机をドンドンたたき出す。
傍目から見ても、凄い感情を抱いているのが瞭然。
「その新型は、西側陣営の存亡を掛けた、東伐作戦に間に合いそうなのか?
開発だけじゃなく、しっかり数を揃えて、その上、新型空母にしっかり習熟した乗員も合わせてな」
「いえいえ、間に合いませんよ、全体配備じゃなければ局所的に可能ですが」
「という事は、試験部隊的な我が国の第零艦隊にだけ回すのか」
「ええ、が、難しい問題が。
我が公国は、大国に戦力の拠出をする場合、多く分けて、大規模な作戦集団か、または特殊部隊です。
この場合の特殊部隊とは、もちろん第零艦隊」
「ああ、つまりは選りすぐりの選抜精鋭を派遣しますって事で、多めに見てもらう」
「そうです。
だけれど、第零艦隊は常に人材不足です。
選抜精鋭に選ばれるのは確かに名誉な話です、ですが危険な特殊に任務に赴く等、割と辞退率異動率が高い」
「もったいない話だ、こんなに面白いポジションもないだろうに」
「そう思えるのは幸運なことです、普通は違います。
なぜなら、特殊作戦とはその字の通り特殊な役割と立場を背負うことになる。
その疎外感、プレッシャーはかなりのモノです」
一つ前のインフェリアル星聖域、あそこでも特殊、というよりも破天荒な任務をした。
「付け加えて、戦闘証明コンバットプローブンも済んでない艦に、意欲的に乗ってくれる奇特な人たちを探すのに苦労しそうです」
「別に戦域前線に赴いて、実際に戦うタイプの艦種じゃないだろ? そこまで神経質になるだろうか?」
「戦艦に変わる、巡洋艦に変わる、なにを建造するか、そこで現われたのが艦隊を躊躇できる航空兵器です」
「この新型だったら、従来の何倍も乗せられるな」
「そして、どのような空母を建造するかで、これだけ迷っていたのが、蓋を開けてみれば、ただ格安の戦列艦のような空母。
だったら、ガミラス旗を掲げた、かの人類帝国の旗艦級戦闘空母を想い、そうすれば良かった。
劣等感を抱きつつ、みんなが想起するのは当然です」
「ああ確かに。
俺も初めてアレを見たときは、見た目の派手さも含めて、何だこれは!マジでかっけえと想ったな」
「ええ…お金がないと、ロマンも追求できないのです」
「そうだな、お前は戦闘空母派だったな」
「押し切られてからは、ひたすら要求どおりに、最高のモノを仕上げましたので御安心を」
「そこは疑っちゃ無い」




