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矛盾領域の秩序の司書の‐サッカー勝負と放浪の少女達

 

 

「混沌連中とサッカー勝負だぁ!!?」


「ええ、そうよ、一刻後、早く準備して頂戴ね」


 俺は何時もどおりの仕事を終えて、タイムカードを切って帰宅していた。

 すると白のマリア様がふらりと現われて、そう今のように告げたのだ。

 そして、何処とも知れない、平凡たる緑溢れる木々の間の、だだ広いだけの芝生コートに立ってる今。


「本気で世界を変えられる、そんな勝負だからな、気合をいれてけ」


 長身の男にそう言われる、マリアの第一の信奉者である。


「そうなのか? 根本的に、この世界のシステムっていうか、なんていうか、変えられんの?」


「少なくとも、本気で本当に世界を根底から、良くしようとしているお方はいるのだ」


 話してるとピピーと笛が鳴った、どうやら始まるようだ。


「なんだってぇ!!!」


 俺の声である。

 聞けば、このサッカー勝負、酷く不平等なルールだった。

 簡潔に言うと、はじめはマリア様が一人でコートに立つ、相手はフルメンバー。

 そして、こちらが一点入れるごとに、マリア様が指名した一人を復帰させられる、って馬鹿かとアホかと。


「どうすんだこりゃ」


「慌てることはない、勝利は常に我が側に存在するのだからな」


 余裕たっぷりに宣言するが、どうなんだろうねコレは、常識的に考えて無理ゲーだと思う。

 俺はとりあえずと、高性能なマイパソコンを開く。

 サッカーなんていうゲームは、まあよく知らないのだが、ある程度の攻略法は予想できるのだ。

 これから客観的に試合を見て、一人一人の動きを高度に分析、未来予知のレベルに引き上げる。

 そして、、、ああこちら側からボールが始まるのか、、えとそして、ああ雷みたいなシュートがいきなり入ったんだが。

 

「さすがマリア様だ」


「だな」


 試合早々、というより一瞬で一点入った、どういう事なんだろうね。

 そしてなぜか俺が指名されたらしい。


「ちょ、可笑しいでしょ、身体能力的にも、役割的にも、こいつ指名しないと駄目じゃないのか」


 隣のベンチに座る奴指す。

 だが、そんな弁舌は意味が無いらしく、コート内に連れて行かれる。

 一応パソコンを奴に渡しておくが、使えるとも思えない。


「やるっきゃねーかよおしおい!」


 物理対戦に自信はないが、気合で乗り切ろうとする。

 相手側からのボール、持ってる奴にひたすらに突撃を敢行。

 突撃、突撃、突撃。

 まあだいたいだ、このゲームにおいて数的不利は致命的なわけだと思うのだよ。


「ああ!」


 一点取られた、てか、このゲームってどういうルールなの?

 衝撃的な不平等ルールにかまけて、細部、じゃなくとも本筋のルールがわからない。

 まあいいかと、マリア様の雷シュートが音速を超えて光速度で敵のゴールに毎回入るのだし。

 だが、甘かったのかね、ゴールは阻まれた。

 敵側が全員、掛け値なしで全員、ゴール前に立つことで肉の壁と化し、盛大に数十メートル吹き飛ばされながらも凌がれた。


「しゃーなしだなぁ!」


 俺は絶望しかけたが、己を奮い立たせて、てんで意味の分からない場所に飛んでいったボールを追いかける。

 キャッチ、アンド、、、なにすればいい?

 敵はゴールを死守するとばらけて、オールディフェンスを敷いている。

 マリア様は必殺のシュートを防がれて何か思うところがあるのか、その場で突っ立っている。


「おら!」


 しょうがないので突っ込む。

 まず一人目は速度だけを生かして、フェイントも碌に入れられなかったがギリギリ突破。

 その次の瞬間に待ち伏せしてた奴は、なぜか身体が勝手に自然に理想的な動きを反射で行い突破。

 一瞬後のあとから振り返ると、なんか回転して相手の身体を防ぎつつ、ボールを軸にして踏みつけつつ前進してた。

 さて、まだまだ敵の壁はある。

 だがもう射程内、シュートする、、、あ、キーパーに防がれた。

 逆襲、俺は戻る暇すらない、神速でマリア様が守るが、広い範囲を使ったパス回しでかわされる。

 予想してくれ、キーパーがいないので、僅かな隙が命取り、がらがら閑古鳥が鳴ってるゴールに超遠距離シュート。


「ああぁ、、」


 ベンチを見ると、じれったいのか、奴が脇の木に歩いてのぼり逆さに立っていた。

 次、指令を受けた。

 最初は俺がボールを持つ、肉壁が崩れてボールを奪いに来る。

 中央のマリア様にパス、肉壁の崩れた一部を狙ってシュート、入る、クソゲーなのかな?


「やっと俺が介入できる」


「ああそうだな、頼らせてもらうよ」


 そこからは一瞬だ、主に二人の活躍で。

 無論こちら陣営が勝利を収めて幕引きという結末で。

 果たして、この勝利がどう波及するのかしらない。

 

「今日は仕事とサッカー試合なんてので疲れたな」


 俺は歩道橋を歩きつつ下方、よく分からない崩れて水浸しの台地を眺めていた。

 そこになんか、黒い竜っぽい何かと、少女がいたので。


「はぁ、、、」


 黒鳥の乙女と、どこかで呼称される少女、リリーは天を仰ぎ溜息をつく。

 傍らに佇む、少女と同色の体毛持ちの、呼称名コモドドラゴン、も、同様だが声量だけ幾倍の溜息零す。


「どうすればいいのかしら? 

 なにをして、どう生きればいいのかしらね」


 彼女は戸惑っていた。

 今までの人生は、ただただ闘争の中であったからだ。

 少女はこの世界において、ただ孤高の傭兵として、無為なる争いの中の愉悦に耽溺するように、生きてきた。


「どうしよう、、、お腹減った、、食べる物が、、、ない、、ないっ」


 彼女の発言ではない、もう一人の少女のなさけない、カツゼツも甘甘な酷く哀れみ誘う声。

 彼女は想う、この少女とで合った時も、同様のシチュエーションで同様の事をこの娘は言っていた気がすると。

 不可思議なデジャブの謎が解けて多少スッキリしたような顔になる少女、だが事態はなにも変わっていない事を再認識して改め溜息。


「うぅ、リリーちゃん、、」


 上目遣いで縋るような目を向けられる少女。

 

「リディまって、少し考える時間が」


「お腹、、がぁ、、」


 涙目で自身のお腹を大事そうに抑える娘の図がある。

 どうして彼女達がこんな風になっているのか。

 一ヶ月ちょっと前までは、こんな風になっていない、そもそも彼女達二人は出合ってもいない。

 クールな少女はひたすらに戦闘していて、涙目な方はパン屋で普通に働いていた。

 だが、一ヶ月前の秩序のマリアの降臨で、彼女達の住んでいたある大陸は激動した。

 すべての領域を瞬く間に征服し、場を絶対の秩序の黄金法則で塗り替え塗りつぶしたのだ。

 それで、いろいろ諸処の理由、半分その場の勢いと巡り会わせで、大陸を出て此処に来た経緯がある。


 若草が萌える、春の野道を下る。

 俺はそこを駆ける、少女達が困っていそうだったので。

 特に、コモドドラゴンっぽい黒の獣の後ろに涙目の少女を見つけたときには、もうそれしか考えられなかった。


「おーい! 君達どうしたんだ?」


 近づいて驚愕のようなビックリがあった、心がぴょんとした感じだ。

 ドラゴンと同色系統の髪や身なりの方、絶世の見目だったからである。

 まあだが、俺はそれを余り気にせず、涙目の少女の方にまずかけよった。


「うぅ、お腹がすいたのですぅ」


 なんだか黒い少女から警戒心ばりばりの瞳、雰囲気が漂うが、一旦捨て置く。

 俺はマイパソコンの入ってる手提げカバンから、固形栄養食を取り出して、少女にあげた。

 はむはむと、凄い勢いで食べる、だがリスのように食べるので一気には無くならない。

 

「君も食べる?」


 ジト目でこちらを見ていた少女にも同様に差し出してみる。

 取りあげるように奪い去り、半分をドラゴンに、少し間があって自分も食べる、、、毒見?


「お腹が満たされました! ありがとうございますぅ!」


「ああ、どういたしまして、、それで、君達は?」


 経緯を聞く、どうやら外からの人らしい。

 そしてまあ、あーだこーだ、とりま、秩序の管轄する拠点に連れて行く事にした。

 秩序の陣営は、可能な限り困っている人を見捨てないものである。

 

 矛盾領域、都市中央に聳えるように存在する尖塔。

 その一角を成す、巨大なパンの看板を掲げる此処は、ブレッドワールド、あるいはワークス。


「ふえぇ!!! なんですか此処! 面白美味しそうですねぇ!」


「ここにある宿舎を、どうやら借りられるみたいだよ」


 マイパソコンの情報を見ながら言う。


「まあタダで衣食住を提供するのは難しいから。

 ちょっとだけでも、此処で働いて貰う事になるかも、だいたい三時間くらい」


「いいですよいいですよぉ~♪ わたし一ヶ月前まではパン屋で働いてましたし!」


 飛び跳ねて喜びを表現している、なんかバイタリティ溢れる凄い子だな、変わってるというか純粋無垢っていうか。


「えと、君も此処でいいのかな?」


 さきほどから無言だったので、確認と気になって顔色を窺ってみる。

 

「そうだな、このドラゴンが無碍にならないのなら、どこでも」


「ああ大丈夫、そういう用の宿舎もあるある、他の動物と一緒の屋根の下になるけども」


「うむ、問題なしだな」


 俺は二人に此処案内をしてから、諸々の説明をして、一段落してから、その場で別れた。


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