ナイトメアワールド‐ソードワールドという町の危機でクラークの使徒として
贅肉は敵だ、身体が重ければ当然の物理原則的に、身体に掛かる負荷が増える。
そも第一、速度、スピード強度が落ちる。
過負荷や超負荷は、果てなく厳しく最悪に劣悪な、灼熱のような戦場闘争環境下で
戦士として、長くやっていくのを絶対的に不可能にする。
眼前に躍り出てきたモノを、一太刀で切り捨てコロス。
全力を尽くせば、最大限の後悔と成功を詰むことができる。
さらに高次元に力を尽くしたいと思える。
全力で生きれば、最大限の質量のチャンスを掴み挑めるのだ。
もっと力があれば、後悔しなかった、限界を越えて成功できた、等々。
さらに、最善手を尽くし尽くした、今までの己の人生の具現ともいえる、奇跡的な軌跡を描く返し斬り。
有限の存在である以上、最大限や最善、全力以上など絶対に存在しない。
だからこそ、である。
全力を尽くす存在は、己の限界を境界として、己自身を最も知ることが出来る。
無力で矮小、脆弱な己を真に知ることができれば、それは屈指の強制力になるだろう。
コロス存在は、全て同様の対象として認識し、知覚することが出来る。
今まで散々にやられてきた。
この世界において、愛する存在は無数に存在した。
しかし、その全てを幸福には出来なかった。
幾らかは無上の幸福を手にしたように生きている、あるいは無になり死んでいる。
幾らかは、無上の不幸を味わい尽くしたあげく、抗いの果てに無様な死に様を演じ、真に絶望して死んだ。
そして、幾らかは現在進行形で、無上の塗炭の日々を、永久の如く生きている、のだ。
この世界は酷くリアリティーに溢れた、無上冷酷な現実味と現実性に支配されているように映る。
「あぁ、そろそろ限界だな」
周囲を見回しながら呟く。
ここ、正式名称はなぜかクソ長いので便宜上の俗な名称で”大阪城”と呼ばれている所で。
「マスター、そろそろ逃げないといけませんね」
背中にぴったり張り付くように居る、機械人形、彼女も賛成らしい。
「まったく、どうしてこんな事に、事態になったんだろうね」
返事を期待しない独り言、広大な大阪城内部の通路。
心拍数が極端に低下していて、気分が悪い。
先ほどまでは、苛烈なほど加速していたのだから、その反動なのだが。
『やあやあ、みんなぁ! やってるぅ~~??』
陽気な、露骨にふざけたアナウンスが鳴り響く。
「加藤か、あいつ、こんなトキになにやってやがるんだか」
『もうこの町はしまいだぜぇ!まあ、わかってんだろうけどよぉ!
まあまあ、お前らは全員くたばっておけよぉ! それじゃあなぁ!』
はぁ、嘆息、この意図は町の奴らを煽って、直近の化け物に立ち向かわせるとかかぁ?
「マスター、どうしますか?」
「リリー、俺はやれるだけの事はやった、そうだな?」
彼女は頷いてくれる、右足が根元から千切れて、人口的な血を流しているのが痛々しい。
「だったら、ここと心中するつもりはねえ、脱出だ」
「そんな事ができるんですかぁ?」
俺はああと頷く。
この大阪城には、緊急時の脱出エレベータシャフトみたいなモノがある。
大体ここから15km程度はなれた場所に高速移送してくれるタイプのが。
「ちょっとちょっと貴方達、もしかして脱出するつもり?」
面倒臭い奴に絡まれたと、そう想った。
青髪を引っ繰り返して慌てた調子で走ってくる、ロングツインテール。
コイツはミリア、町の、そしてある研究所直属の戦闘員。
「ああ、そうだがぁ」
「馬鹿、そんなの駄目」
腕をバッテンにして、立ち塞がるように仁王立ち。
「どうしてだ? まさか町と心中するまで戦えって訳じゃないだろう?」
「あんたまさか、最新の情報を得てない?」
ミリアは腕の端末を示しながら言う、俺は壊れた端末を示して答える。
「だったら教えてあげる、この町はギリギリなんとかなりそうなの。
だから、たたかえる奴は逃げずに戦えって、上から厳命が下ってる」
現状況に不釣合い、なんだか不敵な自信に溢れた態度だ。
「ほお、戦況にどんな変化があったんだ?」
「単刀直入に、まず、戦術的変化を提示するわ。
敵のウイルスに感染しても問題が無い、むしろ特異な能力に目覚める奴らが出てきてる」
「ほお」
「それが前線で無双してるってね」
「それで、そんな戦術レベルの優位が、どう戦略を覆すんだ? そっちの方をまず教えて欲しいね」
そんな俺の問いに、なにやら腕輪の端末を操作し、立体ホログラムを展開して見せる。
「よく見て、まず敵はこの赤い光点、だいたい都市中央、大阪城を中心にして40万くらい。
そして味方は都市にばらけてるのが1万くらい、こいつらは恐らく半分死ぬわね。
それでも多くを引きつけてくれて時間を稼いで道連れにもしてくれる。
それからそれから、大阪城周辺に素早く集まった奴らが5千、撤退してくる奴も五千。
つまり一万と城という拠点があるの、これで分かった?」
俺は頷きながらも、純粋な、致命的な点で反論をする。
「算段は分かった、だが、俺は勝算が薄いと思うね」
「どうして?」
「逃亡兵、というより、ウイルスの感染を恐れて、戦意が低く、接近戦も制限されるだろ?」
「まあ、そうね、これだけの情報だったら、逃亡するってのも手ってね」
「そうだ、敵は正体不明ウイルス兵器、戦力としての脅威度は数以上だろ」
俺の言を聞きながらも、またも端末を操作して、別のウィンドウを同時に見せてくる。
「さっき言った、戦術的なアレ、ハッキリと破格の戦闘力なのよね」
そこには化け物を縦横無尽に薙ぎ払う、化け物がいた。
ケンタロウスのような見目、おそらく硬質化してるだろう無数の銀髪がうごめき、敵を貫く。
さらに驚くべき突破破壊力。
巨大な斧を持ちつつ、騎馬で移動、それだけで些細な敵は踏み潰され蹂躙される、驚嘆事だ。
それから本命として繰り出される、遠心力と加速度の篭った一撃は、豪快の一言以上のなんれかのモノだ。
「このレベルの化け物が、どれくらい居る?」
「分からないわね、でも、逃げるには時期尚早じゃなくて?」
全てのウィンドウを消して、余裕の笑みで告げてくる。
「とにかくそういうこと、逃げれば面倒なことになるし、逃げない方がいいわよ」
「脱走兵じゃあるまい、特に咎めはないだろ」
「幹部だからって調子乗ってると、目をつけられるわよ?」
「知らん、だいたい成りたくてなったわけでもねーしな」
「ばっかだぁー、あんた幹部だったお陰で、どれだけ得した?」
俺はなんとなく舌打ちをした。
コイツのように組織に対して忠誠は抱いてないのだ。
「さて、それじゃ、あんたも戦線に加わりなさいよ」
「コイツを直してからな」
それだけ言って、俺はミリアと別れた。




