現異世界‐黄金王との邂逅、戦闘‐SF3
継続する砲撃音。
それらが、およそ何千メートル大地を揺るがしていた。
平坦になった地面、舞い散る砂埃。
「うえ、マジで灼熱の戦場じゃねーかぁ」
「・・・ランス、貴方がこの戦域にいたなんて」
「ふん、君がいるから、俺が駆けつけた、というべきだな」
少女に対するは金髪の成年、なんの因縁あるんすか?
「いいわ、すべて焼きつくしてあげます。
エターニア! フルロット・オープン!!」
そして、先ほどからの砲撃音、この二人が出してます、生身で。
「グローブ・ヴァーストフィア!!
此度の大戦!この大虐殺劇!全ては君達の陣営を無に帰するため! 尊き犠牲と諦めろ!」
紅と紅の爆撃衝。
視覚的には、ただ単に手から何か流線が迸ってるように見える。
「許しません、このようなこと。
すべて、命じたのは・・・あなたですね」
虹色の障壁らしきモノで、身をガードする栗毛色。
若干余波などでボロボロになった二人、だが、まったく覇気の鈍らない瞳で相対。
俺は、少し先の崖からでも、何時でも逃げる準備は万端。
この気温で、かなり冷たい海水を思い浮かべ、遥かの上空を視る。
不自然に軌道する、幾筋の豆粒。
まるでUFOが宇宙大戦でも、してるかのようなファンタジックな、というよりスペース方面な絵図。
キンっと、どこからともなく音。
少女が虚空から、剣を出現させ、鞘から抜き出した。
「これは、過去の戦役の遺物。
わたしがわたしの一部から生成した、禁忌の魔剣”アリエス”」
「面白いな、黄金の王と言われ、この神剣を帯びた俺に、果たして及ぶか?」
戦いは膠着から、終幕に旗換えしたのか、二人の緊張が先ほど比べられない険しいモノに変わった。
悠然と佇む男に向けて、瞬きの一瞬よりも短い間。
光速のような移動、刺突の直線的な動作があったのだろう。
銀色の切先を向けられ、それを黄金の剣の腹で受け止める男の姿。
「弱いな、素質は計り知れぬが、まだまだ、禁忌を潜りぬけていない」
「・・・くっ!!!」
鍔迫り合いの火花が散るなか、傍らの少女に、男は睨みを効かせて言った。
そして、何も知らない少年、ああ三人称になってた、訂正。
俺は、混乱に陥っていた。
これは俗にいう、魔法って奴じゃないのか?
後天的か先天的か知らぬが、そういう特殊能力。
さらに物理強化っぽい色々。
「もしかして、魔法が規制されてない?」
俺の世界では、魔法なんて誰でも使えるモンだ。
だが、魔法を規制する魔法があって、ほとんど使えなくなっている。
でもどうやら此処では、そうではないみたい。
数式を計算してみる。
実社会で役立たなくても、極めた。
オタク的な趣味で編み出した、俺の超絶魔術をお披露目できるとは、なんたる僥倖か!。
「うんっ? 貴様!」
やべぇ、気づかれたかぁ!
「なにしてるんです!」
「とりあえず邪魔だ! 消えろ! フィンスター!!」
紅の極光が音速を超えてるだろうスピードで迫ってくる。
実時間で一瞬の内に、何十の数式を頭の中に展開。
即応できなきゃ意味ないって己の信念を、これほど称えたい瞬間は一生ない。
魔法攻撃に対する耐性、あるいは、体表に障壁を張り付かせる、という御技。
魂の具象は成り、俺の身は現世に止まり、灰、いやプラズマ、いや素粒子化は避けられた。
「貴様!」
男は俺にターゲットを変えるようだ、そりゃ弱い奴から片付けますよね!
次なる魔法を練ろうとした瞬間、ガキン、横手から穿つように突撃する影。
「ふっふ、言ってませんでした。
彼は、異世界からの助っ人、言うなれば"縛られし者"。
貴方と同じ、世界から弾き出されたモノ、ですよ」
その言葉は、ハッキリ訳わからないが、男は目を見開いて驚愕したんだろうよ。
つかの間、取り上げられていた主導権が、少女に移ったのを感じた。
「ち。 二対一、戦力が未知数ならば、引くのが正道か」
「引くんですか、黄金の覇者ともあろうものが、堕ちたものですね」
ちょ、いいじゃん、逃がしてあげようよ、言葉に出しかけた。
いや・・・待てよ、っここですんなり何も言わず逃がす方が、ブラフっぽくなるか? うーん。
「行きましたね」
「ふぅ、、、いったい、何だったんだ、あれは?」
「それより、ありがとうございます。
貴方を守るべき私が、貴方に救われてしまいましたね」
ああ慣れないね、このひた向きな瞳。
ああ上目遣いとかやめてくれぇ、己が墳飯モノの美少女と知っての狼藉かぁ!
「名高い貴方に、敬意を払って、」
ああもう、何故このような愚行を。
俺は少女に跪かれて、手の甲にキスされた。
その感触を最後に、視界ブラックアウト、なんか目の前が暗くなった。




