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虹の聖女と真理探究者

「はぁーあ、ヒマダナァ!」


 悪態を付く、まるで目の前の男に向けて怒りをぶつけるかのように。


「そうですか?」


「そうだよ! おいなんかしろよ」


「何をですか?」


「言わんと分からんか! 面白いこと! 私の退屈を紛らわすことだよ!」


「うーん、それって今すぐ、私がやらないといけない事ですか?」


 今まで、何か、机で資料をパラパラしていた男は、やっとメガネを押し上げるポーズと共に、わたしに振り向いた。


「ああ、お前はわたしのしもべだろうが」


「そういえば、そうでしたね」


 彼はやれやれといった、なんか腹立たしい感じで、こちらに胡乱な視線を向けてきやがった、もうユルサネエ。

 わたしは今日一日、まる一日、コイツを否が応でも、わたしに付き合せて、嫌な目にでも会わせようと考えた、つまりは嫌がらせ敢行の決意だ。



「暑いです」


「だろうよ、今は夏季だ。

 てか、だったらその白衣に黒のコートは、いったいなんなんだ? 宗教的ななんかか?」


「これは、ポリシーです」


 意味分からんこと抜かすな。

 だいたい、今はまだ早朝、炎天下で暴れる毎日のわたしからしたら、まだまだこんなの涼しい程度だ。


 歩く町並み、早朝の都市中央商業区画は、人通りも少ない上に、めぼしい店も空いてない、果てしなく暇だ。


「海沿い歩くぞ」


「帰っていいですか?」


「おい、いまなんか言ったか?」


「いえ、なにも」


 中央から海沿いの、都市外延部までは、結構な距離がある、それを嫌ったか、渋い顔をしているような、いないような奴。


「面白いこと話せ」


「はあぁ」


「はやく」


「、、、話題指定はありますか?」


「錬金術に研究関連、魔術に現代科学、異空間異相物理学、時空干渉術とか、小難しくなければ、なんでもいいぞ」


「、、、わたしの話せる、話すことが、極端になくなりましたね」


「得意になって話せることだろうが、平坦で平凡な、のんきな話題でいいんだよ」


「たとえば?」


「今日の天気はなんたらとか、そういう気の回る奴でもいい、お前から話せよ、何時もわたしばっかで、不公平だろうが」


 奴は、そんなものですか? とか、分かってない事を言う。


「今日は、なんで私を誘ったのですか?」


「疑問か?」


「はい、知的好奇心を抱きました」


「なら、教えない」


 すると、微妙に顔を顰める奴が見えた。


「・・・・・」


「なにか話したら、どうなんだ?」


 挑発気味に、横を歩く奴の顔をニヤリと覗き込む。


「はい・・・・」


「、、、はい、だけじゃないだろう。

 はぁ、スムーズに会話もできないとはね」


「なんなんですか、、、はぁ、、なにか私に、言いたいことでも、おありなのですか?」


「そんなものは、特に無い、なにか疑問な事でもあるのか?」


「貴方の、私に対する態度は、少々奇妙でしたので、まあ、そうでないなら別に、特に気にしません」


 それっきり黙るなら、また何か言ってやろうと思ったら、向こうから口を開く。


「海沿いに行って、どうするんですか?」


「試みに聞こうか、お前はなにがしたい?」


「・・・・とくに思いつきませんが」


「はぁ、、、いやいいよ、期待してなかったから」


「・・・・・・」


「おい、何か反応しろ」


「私は何も気にしません」


「いや、してるだろ、率直に、何か言ったらどうなんだ?」


「別に、大丈夫です、困る類のモノでも、ありえませんので」


「はぁ、つまらない奴」


 これ見よがしに、奴の焦れた態度がモドカシク、遂にそういう言葉がわたしの口からまろび出た。


「なぜ? ですか?」


「なんかピリピリしてる感があって、叩けば響くようなんだから、面白い反応したりしろ。

 あと、童貞っぽいから、女に過剰に過度に反応するかもしれないって、わたしが興味関心を示してやったというに、、、。

 つまり、は、だ、、、、面白くないって言ってるんですよ」


 奴の目をしっかり射抜くようにして、言った。


「貴方は、なにがお望みなのですか?」


 なんか、ちょっとノッてきた感じ、内心せせ笑いみたいな高揚がちょっとあった。


「そうだな、例えばここでだ、怒って、調子にのってわたしに触れてくるとか、面白いんじゃないか?」


「そうですか」


 言葉の後、不躾に、私に触ろうとしてきたので、振り払った。


「やはり、ストイックな成りして、女に興味があったか、見破ってやったぞ、くはっはぁ」


「・・・・・」


「それも今の、胸だったろ、おまえ、わたしのこの、豊満で張りのある、華麗なふくらみに、興味あったか、ぷぷぷ」


「いえ、肩にでも「うるさいうるさい、いいわけ無用、己の劣情を認めるのだ!」っ!!」


 大上段から畳み掛けて、高圧的で強圧っぽい姿勢、私は長身なので、胸を張れば自然圧迫的になるのだ。

 奴はなんか気おされたみたいになって、わたしは私の中の何かの何かが満たされる心地だった。


「ふぅ、どうだ? この眺めは?」


 海沿いに到着し、今は仲良いみたいに、土手っぽい凹凸に二人、近い距離感で横並びで腰を落ち着けている。

 ちなみに、始めわたしが腰掛けて、奴は棒立ちだったが、座れと命令し、近づけと命令して、今の状況が成立している。


「良い眺めですね」


「おまえ、興奮してるだろ?」


「?? 何にですか?」


 純粋に、何に? と言った感じだ。

 天然か鈍感か、すっとボケか、見極められない、流石のポーカーフェイスだと思った。


「このシチュエーションに、だ、わたしと二人、ロマンティックな感じで、嬉しいんだろ?」


 横顔で流し目、優雅で華麗な顔つきを意識して、ドヤっぽく言った。


「正直に告白しますと、あまり普段無い事で、新鮮な面白さは、感じます」


 鋭利な顔つきは変わらないが、多少柔らかい感じの声だった。

 わたしは笑みを、堪らずといった感じで零した。


「ふっふ、正直でよろしい。

 そういう風に、可愛げを示してくれれば、わたしも優しくしてやるぞ、もっとデレろよ」


 直ぐ横の奴の肩を、馴れ馴れしく抱く。


「デレろとは、少々困る要求ですが」


「キャラ崩壊して、壊れてくれてもいいぞ、面白いからな」


 にひひと、悪戯っぽい笑い顔で言う。


「、、、貴方も、偶には、違った風に振舞ってみては?」


 目を泳がせて、困った困ったみたいな顔、無茶振りが過ぎたか。


「なにか、、、来た」


 それは突然の出来事、条件反射に近い、一瞬で大量の情報がわたしの中で想起、異常高速入力処理とかされた。

 たくさん、認識限界を超える、存在と質量の接近を知覚、解析、処理、回答、不明、不確定、多数、手に負えない感じ、面倒くさい、、。


 目の前に揺れる幻影。

 視覚できないが、存在は感じ取れる、異相物理学的な超感覚を駆使すれば容易だ。


「なにが? ですか?」


 もちろん、錬金術師とかの才能程度では、コレは認識できない、彼は不審そうにしてる。


「大きな、胸ドキワク的なイベントだよ」


 桃色に見える、虹の聖剣を出現させる。


「おいおい、目障りだから、消えろよ」


 幻影を切るが、既に顕現した影は揺らめきながらも回避に成功していた。


「この、絶対超戦力であるわたし個人に、そして勢力に、喧嘩売るたぁー! いい度胸だなぁ!」


 上空では、既に艦隊戦が展開されている。


「アルデ、飛ばすぜぇ!」


「???」


 状況に追いついてない、男を転送、中央城の頑強で堅牢な場所に飛ばし、身構える。


「あらあら、人質に使えるかもと思ったけど、残念」


「馬鹿が、普通に見捨てるぜ」


「それは、どうかしらねぇ?」


 実体を顕し、目の前に翻る金髪の奴。


「周到に練ったのか? 既に艦隊戦は決まってるが?」


 上空では、銀の艦隊を中心とした、都市防衛部隊が、敵を圧倒している。


「ふっふ、別に、問題ないわ、すべて計画通り」


「なんだ? その底知れない感じ、腹たつなぁ」


「貴方では、到底読みきれないでしょう、しょせんは十大聖女王の中でも最弱」


「うるせぇ!」


 癪に障る口上を止めるために、聖剣で切りつける。

 そして、黄金の、似たようなタイプの剣で防がれる。

 鍔迫り合いで、向こうの方がニッと微笑むようにムカつく顔をする。


「切り札を見せなさいよ、貴方に関する情報は、高値で売れるのよ」


「お前が切ったら見せてやるよ!」


 強く力を入れると、跳ね駆るように後方にステップされて、中途半端に距離をとられる、魔法戦の距離。


「そう、だったら一枚、切るわね」


 黄金の剣に、何か不可思議な力が収束される、解析、ああ、これは不味い、てかヤバイ。


「助けに来たよ!」


 さっき言った切り札、聖剣に寄る、艦隊召還あるいは機動部隊召還をしようか迷った一瞬、援軍が間に合う。

 というより、これは予めの予定調和だろうがよ、中央の城には、あらゆる事象、特にこの都市内でなら、確実な未来予知が可能なアレがある。


「よっしゃぁ! アイツをとりあえず消すぞ! 手を貸せ!」


「わかったよぉ!」


「二人か、なら、問題はないかな」


 迷うような素振りをしながらも、余裕は消さない奴は、真っ向から切っ先を向けてくる。


「この人、黄金の裏の人ですよね?」


 同じように切っ先を向け合い牽制する、隣の黒髪の少女がそう呟く。


「ああだろうよ、二人でも根本的には勝てねぇーだろうな」


「そう?」


「なにか、勝算があるのか?」


「ここで私達が、彼女にアレを使わせれば、結果的には勝ちだよ」


「まあ、な、わたし達は死ぬがな」


 確かに戦略的には勝利、だがありえない選択。

 奴の武装を、”此処”で使わせれば、都市の観測機器で、上手い具合に観測、結果模倣兵器を作れる、長期的に莫大なアドバンテージを得る、という話。


「貴方達、なにか勘違いしてません?」


「はぁ?」


 余裕満々で、一切の顔色の変化を見せない奴に、わたしが呆けたように言う。


「はぁ? ではありません。

 分かりませんか? 状況が? 

 わたしは貴方達二人を、単純な近接戦闘能力、実剣術、魔法戦闘、全てで凌駕しているという事実を」


 真底から意味が分からない、という風に言う奴が居る。


「駆け引きか? その程度の情報、そっちに漏れてないとは、さっぱりおもえねぇーんだが?」


「ああ、もしかして、たかだがアノ程度のもので、わたしをどうにかできるとか、思っちゃってるんですか? 

 ふふ、ふっふっふ、ホントお笑い草、おもしろい人たちですね、貴方達は、、」


 心の底から愉快そうに、せせら笑う奴を見て、多少不安になったので、隣の黒髪に問う。


「ちょっと聞きたいんだが、アレって強力な武器だよな」


「うん、とびきりだよ、常識というか普通に考えて」


「それを、奴は問題とせず、引っ繰り返せそうな様で、余裕こいてるんだけど、こいつはどういうことだぁ?」


「自信過剰?」


 つぶらな瞳で、隣の奴は言うだけだ、真相は謎、不確定が絶賛拡大中だが、どうしたもんか。

 このまま戦闘に移行してもいいが、様子見もありだ、向こうの意図が、こちらにプラスになる可能性も無いっちゃ、無いわけでも万が一にも無いわけじゃないし。


「昔、遥か太古ってレベルの話だが、アンタは複数の同格に対して、それに負けてるよな?

 一個の存在としては、戦力として飛躍はできない頭打ちのレベルの、同格の中での上位つぅーわけだ。

 それにだ、特に大きな変化の話も聞かないし、戦力増強してるわけでもないよな?」


「ふーん、そういう認識、、残念だわ。

 わたしの華々しい変化が、世に伝わってないとはね」


「あ」


 隣の黒が、今気づいたみたいに言う。


「どうした?」


「ごめんなさい、今気づいた唯一の可能性があります」


「言ってみろ」


「歌姫属性です」


「そっちの娘は、賢いみたいですね、大当たりですよ」


「はぁ? 歌姫属性だぁ!!」


「ありえなくは、、、ないんですよねぇー、、」


「はあああ!!! そんな馬鹿な話があるかよ! 認めたくない!」


「現実とは、得てして常に、そういうモノ、諦めて、足掻きなさい、無様に掌で踊る様は、なんて甘美で滑稽、面白いのでしょう、、♪」


 詩を朗読するように、恍惚にうっとりした、奴の美声、それがまた何か歌姫っぽくて、疑念に拍車をかける。


 ありえんと、一言で言い切れる可能性。

 確かにそれが在れば、私達は負けるだろう、だけど、相手は真なる虚無、愛情なんて持っていない外道だ、歌なんて歌えるはずが無い、、、はずだ、完全否定はできない、ある細い可能性を無視できないから。


「まさか、運命の相手でも、見つけたとか、抜かすわけじゃないよな?」


「さて、どうでしょう、ハッタリかも? 疑わしいなら、向かってくれば?」


 歌えるなら、ココに私たち二人では不足、援軍が来るはず、だが来ない、中央の未来予測を信じたいが、アレも絶対の絶対じゃないのが痛いところだ。

 つまり、ここで戦闘を開始すれば、真相が知れる。

 だけど、もし真なら、私たち二人は相手も務まらない、でも偽なら、そうでもないって話、どうすっかね。


「どうする? レイル」


「どうしましょうか?

 上方の艦隊戦が決まりそうですし、リスクを犯す必要も、ないかと」


「わたしが、戦闘中にこんな場所で無駄に過ごすとか、ありえない話だな」


「じゃあ、賭けますか? もしかしたら、相手の一柱を消せるかもしれません」


「本気か? わたし達はリスクを犯す立場にないだろ?」


「そうですね、じゃあ、静かに状況を俯瞰しましょう」


 相手の意図は読めない、短期決戦でなければ、戦術的にも全体戦略的にも、必ずといっていいほど、負ける立場だ、そのはずだ。

 なのに、こんな場所で、確実な有利を発生できない事をする、その意図を測りかねる、不可思議が止め処なく生まれる。

 攻めてきたのは相手側で、何かしら勝算があるから、それをしただろうというのにだ。


「まあ、中央の未来予測もあるしな、それを信じるか」


 そう言って、剣を向け合うこと、数分、やっと状況が移行しそうだ、悪い方に。


「詠唱は終わりました、一撃で決めてあげます」


 どうやら、歌姫属性は本物で、口ずさみながら、全てのエネルギーを剣に込めていたらしい、回避不能な超砲撃が来る。


「たのむ」


「ええ」


 隣では、五大国の頂点と契約し、未知なる力の溢れる、真闇世が顕現する。

 私はわたしで、何時もどおり、虹色の波動を辺りに閃かせる。


「こちらにとって、分が悪い感じの賭けに移行したが、しょうがねぇ!! いくぜぇ!」


 防壁展開、延長線上にあるモノを見捨てることは出来なさそうだ。

 近距離での攻撃、都市自体を転移させて回避、なんてのは、空間支配の基本性能の高いジャミング的音色で、一時的に高速でのが不可能になっている。


 おいおい、大丈夫だろうな、この状況。

 わたしは、色々と信じて、最終的に神に祈って、敵の砲撃を受け止めた。


 中央図書館、同時同刻にて。


「まさか、偽りの黄金に、あのような幸運が訪れようとはね」


「至極、当然ですね」


 図書館の主に対し隣、緑髪の少女は応える。


「来ますよ、大丈夫ですか?」


 少女の、一応はそうと取れる、不安そうな声音。


「ああ、大丈夫だろう、無駄撃ちになる、ほら」


 目の前の、外の映像、巨大三次元立体ディスプレイ上には今。

 敵からの砲撃を、全力で受け止める図があった。


「五大絶対存在、その勢力に対抗する為に、建てられた拠点都市だよ。

 あの程度、正直歯牙にも掛けないレベル、少なくとも、そういう想定のもと、作り上げたからね」


「流石です、私でも、あのテクノロジーが、一抹も想像できません」


 目を光り輝かせて、それこそ星が散らばりキラキラする、過度表現が適切なほどに、少女は夢見心地にソレを鑑賞するように見ていた。


「そうかね? アノ程度、片手間に作った、そうだろう?」


 図書館の主は、別の所にいる、創作、創造者、呼び名は数あれど、常軌を逸したお抱えの天才集団、アルドと呼ばれる存在を含めたに向けて、そう呟いた。


 少女は、疑問気な瞳を彼に向けた。


「アレには、主様は関与してないのですか?」


「まあな、不備や不足があれば、指摘するが、その必要もないほど完成され尽くしていたしな」


「良い仕事をしたのですね、彼らは、、、では、主様は、何をしていたのですか?」


 純粋な疑問の瞳を、彼に向ける少女に対して、図書館の主は飄々と当然のように当たり前のように、こう応えた。


「愚問だよ、本を読み、書いていたに決まっているだろう? 私を誰か、忘れてしまったのかい?」


「そうでしたね、確かに愚問、、、でしたか?」


「そうだよ、私は、ただ本を最大限、読み書く、その為の至高で無上の場所が、欲しい、欲しかっただけなのだから」


 少女は思案する、なんだか主義主張に一貫性があるんだか、ないんだか、ちょっと疑問でミステリアスに過ぎる、彼に対して。



「咄嗟に、避けたが、ふぅ、大丈夫だったか」


「危なかったですね」


 後方を、黒髪の少女と共に空を飛行しながら見れば、無傷でその存在を顕在する都市がある。


「危なくは、正直なかったな、攻撃速度は、それほどじゃなかったぜ」


「あの、私が、テイカを助けましたよね?」


「うん? そうだが? なにか?」


「・・・別にいいですよ」


 唖然とする少女は放っておく、手柄は全てわたしの物、世界はわたしを中心に常に回り続け存続するべきなのだから!


 さて、都市の防壁は予想よりも凄かった、らしい。

 恐らくは、都市全体を使った、統合的なエネルギー中和拡散フィールド系の防御システムと思われ予測できるが、実態が掴めない、曖昧な、今までに無い奴だな。

 多少興味が沸いた、まあ多少。


「チッ、詰まらない、しくじった、そういう感じ、か、、、真底から下らないですわ」


 冷めて萎えたような、見ているだけで、なんだか可哀想ってか、哀愁が漂い始める、麗しの金髪少女がいた、なんか可愛いぞぉ?


「どうした!」


「もう、用はありません、貴方達にも、ね、さよなら」


「逃がすかよ!」


 莫大なエネルギーを使って、弱ってそうな、まあ願望に近い読みだがな! 中空に存在する奴に突貫する。


「はぁ、何もかも面倒くさいのに、わずらわしい、死んでください」


 死神の鎌が、わたしの首元に差し込まれようとする、うわ、やっぱり接近戦は勝ち目が薄い。


 死線の一瞬、黒髪がふわりと横に現れて、ヤミ色の波動を纏わせる剣で防いでくれた。


「つぅ! どうして! こんな無茶を!」


「いや、だって、奴の切り札が無効化されたんだぜ、もう伏せ札も無いだろうしなぁー、都市の未来予知もあるし、大丈夫かなってぇ」


「そんな! 適当な!」


「はぁ、馬鹿に付き合ってられません、かえるわ」


 転移魔法の予兆、到着先の航路秘匿も秀逸だろうし、もう宴もたけなわ、終わりかなって思った。


「あら」


 目の前の金髪が消えん。


「まあ、そういうシナリオも、あるとは思っていたが」


「ああ、そういう話ですか、、、降伏します、ホワイットフラッグ、、、」


 一切顔色変えずに、不遜に言う金髪。


「・・・・・」


「、、、許してください、ごめんなさい、何でもしますから」


「どうしますか?」


 黒髪が、わたしに問うように言う、うーむ。


「私達に、判断は出来ない、とりあえずは、捕まえよう」


「はい」


 空中に浮かぶ奴を捕まえようと接近すると、ひょいって感じで、避けられる。


「おい」


「、、、」


「どうしたんだ?」


「正直に告白しますと、私には、ここから今でも、脱出できる方法があるんですよ」


「はぁ」


「でも、それを使うと、貴方達に降伏して、取り入る場合よりも、状況が悪化します」


「何が言いたい、簡潔に分かりやすく!」


「つまり、貴方達が私を捕まえて、どうするか、その処遇によって、わたしは立ち回りを考えなくてはならない、この意味が分かってくれますよね?」


「分からんなあー、残念ながらわたしは馬鹿だ!」


「そんな、自信満々に、、、」


 わたし達の会話を傍聴していた奴が、突っ込みと共に、前に出る。


「私達の勢力の、その根本は、何にも縛られずに、自由に生きる、生きれる場所を作ること、です。

 その為に、貴方が協力してくれる、そういう回答が出ています、だから、こういう状況が整ったのでしょう。

 虚無でありながら、特異点な存在によって、愛情を知りえた貴方は、私たちと共に生きられる、共存し協力できる、私もそう思いますし」


「ちょっと待った」


「なんですか?」


「前提を成り立たせるために、ハッキリさせなくちゃいけない事が、あるんじゃないか?」


「あぁ、彼女の、無上の愛の対象のことですか?」


「そうだよ」


「たぶん、敵の人質じゃないですかね」


「はぁ?」


「つまり、ダブルスパイ的な、そういう役どころなんでしょうね、彼女」


 チラッと、黒はそっちに合図的な視線を向けた。


「ええ、そう、私は虚無には、居られない身、だから交渉して、そういう話になったのよ」


「おいおい抜け抜けと」


「いや、これは、有りです」


「その真意は!?」


「私たちが、余裕勝ちするからです」


「うぅぅぅぅーん???」


「つまり、私達が、最終的に圧倒的に勝利するから、多少デメリットがあっても、彼女という人材を得るメリットが、私達には生じるのです。

 元が虚無でも、改心したなら、一単位以上の特異点存在には、成り得ます。

 私達にとっての、真の敵達、五大勢力に対抗するためにも、引き込めるものは誰でも、引き込める時に、最小のチャンスでも割に合って利に適えば、やらない訳にはいきません。

 私達は最善を尽くしたいのですから、出来る限りで、ですがね」


「そういうこと、仲間にしてちょうだい」


 見た目華麗に美しい少女は、まったく卑屈にならずに、悪びれも何も感じさせない態度を貫き通してるしよー。


「いろいろ、面倒ごと背負い込みすぎじゃねぇーか? 誰が快刀乱麻の如く、処理することに決まってんだ?」


 急展開に気が狂わされ、わたしは一時的にだが、何か何でもがどうでも良くなった。

 そしてわたしは、ちょっと自分の勢力に、底知れない感じの疑念っぽい何かを抱くのだった。

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