小説を書くリリーと矛盾都市のシャル
私はスペースファンタジー小説を書いている。
実際にあった、現実として存在した歴史。
それをちょいちょい改変しながら、物語として最大限見栄えがするように書いている。
私にとっては、何でもない情報だ。
皆にとっては、大概において、驚嘆レベルの情報になるから、自分でも信じられない時がままある。
わたしは、自分で自分を驚嘆させて、手汗が出る位。
およそ感動と呼べる時の、肉体反応が出るレベルで一線突き抜けた激情のまま書けたら、いいと思う。
とか、最近よく考える。
一線突き抜けて生きることは出来ても、言語を創作する事でその領域に果たして至れるか、模索している。
私はまだまだ全然、至れていないのだろう。
レイピアを振り回して、殺戮の限りを尽くした時。
一生涯における宿敵と、闘争の限りを尽くした時。
それを越える時、を、執筆において感じていない自覚がある。
図書館の主は、果たして、どうなのだろうか? およそ全てを可能にしている感はあるけれども。
そのように徒然と考えながらも、一定で言語を創造する。
「ふぅ」
溜息をつく、生の実感を、もっともっと感じたいと、そう思った。
コーヒーを傾けて、苦いと思っても、まだずっともっと、むしろ刺激されてより深く思うのだ。
「はぁー、空が綺麗で、何時もどおりで、退屈だけど満たされて、変な感じ、不思議な感覚」
私にとって、原風景にも見る事ができる、素晴らしい図書館都市の古くも新しい景色たち。
気分転換の散歩は、常にその役割を果たす。
この芸術的で活気溢れる、荘厳で色彩豊かな町並みで、それが無理ならどこでも無理だろう。
どこからか流れてくるBGM、荘厳さと刺激に拍車を掛ける。
「うっふっふ、気持ちよくなってきたぞぉ、うっふっふっふ」
意味なくテンションが上がるくらいだ、此処は、それだけ素晴らしいのだろうと再確認する。
路地裏で、全身黒コート、秘密探偵っぽい外見の人たちが暗躍ちっくに動いていても気分は害されない。
そこに金髪の女が割り込んで、レイピアで戦っていても、陽気に囃し立てるほどだ。
「あんたー、こんな所でなにやってるの?さ」
「ああ、貴方こそ、リリーじゃないの、こんな所で、奇跡的に偶然か奇遇ね」
「黄金の支部に、なにかよう? シャルロッテ=ミュールメイデン」
「フルネームで呼ばないで、まるで敵みたいじゃないの」
「そうかな? シャルとはわたしは敵同士じゃなかった?」
「そうね、訂正を訂正するわ、銀の妖精、リリーオブザルシファー」
「そうだね、フルネーム気分悪いね、ごめんね」
「分かってくれれば、それでいいわよ」
路地裏の用事を片付けたのか、わたしの隣について来る、彼女だ。
「どうしたの? なにかよう?」
「好きな人間を尾行するのって、普通じゃないの?」
「わたしのこと好きなの?」
「興味はあるわ」
「そう、興味、というより知的好奇心なら、わたしにもあるよ」
「奇遇じゃないの、ならいいでしょ、お互いを人間観察よ」
「ふーん、変なの、無駄なことしない主義だと思っていたのに」
「退屈なのよ、しょうがないでしょう」
何時までも後ろついて回られるのも、あれだ、どっか腰を落ち着けようと思う。
「最近たいくつなんだ、わたし」
「奇遇ね、私なんてずっと昔から飽きで、死んだように生きてたわ」
「嘘だ、あんな鮮烈な君が、そんな枯れた感じなわけない」
「見えてるのが表面だけね、内面は砂漠のように乾いてるの」
「嘘だ、絶対に嘘だ、君がそんな風なのは考えるだけで難しい。
たぶん、無限の想像力があっても、ね」
「私は、そんなに漲ってるように見える?」
「見える見える、闘争心っていうか、狂気が常に溢れ続けてるんだもん」
「ばれたか、そうよ、私は狂気に誰よりも侵されている、自覚があるもの、多分それが正答」
「うぬうん、君は誰よりも狂気的な破滅の女王なんだよ」
「それって、貴方がそう思いたいだけなんじゃないの?」
「どっちでも同じだよ、実体は一片たりとも変わらない」
「そうね、貴方がどのように私を見ようと、私に一切の影響がないわ」
「退屈だね」
「別に、私は飽きてないけど? 貴方は飽きてるの?」
「退屈なんだよね」
「そう、別にどうでもいい、私が飽きてないんだから、捨て置くだけよ」
なんか余裕ぶって、ニヤってせせら笑う感じ、ジュースをちゅうちゅう言わせながら飲んでくれる。
「なんか、世界が一瞬で爆発するくらい面白いことして」
「無理ね」
「それじゃ、ここを爆発させてよ」
「できるけど、後処理が面倒臭いからしないわ」
「何でもかんでも無理で面倒って、この、、、まあ、いいけど」
「貴方を見ているのは面白いわ」
「はぁ、、私は退屈なんだけどぉ?」
「だから、私は退屈でぐだぁーって死にそうに目をしてる貴方が最高だと、そう思うのよ」
「性悪だね、この」
「褒め言葉よ、わたしは誰よりも性悪でありたいわ」
「この綺麗な太陽に顔向けできなくて、残念じゃない?」
「むしろ、そういうのに、厚顔無恥に堂々としてるのが、最高に気分がいいわよ?」
「倒錯しすぎでしょう、まあ知っていたけども」
「罪こそが快楽なの、知ってないわけじゃないでしょう?」
「うん、そうだね、悦楽に耽ってればいいと思うよ」
「あらあら、その件で殺そうとしてきた人の言葉と態度とは思えない、貴方も衰えたわね」
「達観したんだよ、君だって劣化したじゃないか、昔はもっと尖ってた気がする」
「ふん、進化したのよ、無駄を削ぎ落とした感じでね」
徒然に話してる間に、混んできた、そろそろ出る頃合だろう。
「貴方をストーカーするのは、目下一番の娯楽だわ」
「図書館で本でも読んでた方が、有意義じゃない?」
「本なんてダメダメよ、現実の刺激に比べたら、圧倒的に情報量が劣るもの」
「その情報量を補って余りあるくらい、最近の本は情報価値が圧縮凝縮されて、偏在してるよ」
「ダメダメ、本は嫌い、活字を見ていると、普通にイライラする、死にたくなるもの」
「嘘だ、君は結構な読書家だったはず」
「やめたの、読書は身体に悪いって、やっと気づいた感じよ」
「人生を幾らか損してるね」
「大丈夫よ、活字は貴方のを補給してるから」
「なんだ、普通に読んでるんじゃないか?」
「吐き気を抑えながらね」
「そんな風に読むなら、読まなくてもいいのにね」
「いや、わたしは貴方に興味があるんだから」
「ああそう、ありがとうね」
「どういたしましてよ」
「はあ、無駄な会話だよ、退屈で飽きてしかたないよ」
「それは、貴方の視点でしょう?
わたしは最近の今までで、これほどドキドキワクワク、はらはらした経験は掛け値なしで皆無よ」
「酷く羨ましい、君の視点と私の視点を交換してほしいくらいだよ」
「嫌よ、貴方の退屈で死にそうな目が良いって、さっき言ったでしょう」
「性悪が過ぎるね、おまけに毒舌って、最悪の権化みたいな人だね」
「本当に貴方はわたしを褒める天才ね、好きになってしまうから、ほどほどに抑えた方がいいわよ?」
「そうなの? それじゃガチで抑えた方がいいね」
家についた。
「それじゃね」
ガタ、閉めるドアに足が差し込まれた。
「どうしたの?」
「野暮ね、家にお邪魔させてもらうわ」
「邪魔になるから、お引取り願うよ」
「お願いよ、一緒にいさせて」
「、、、、ごめん、だめ」
「いけずなんだから、お願い、お願い」
「駄目なものは駄目、お引取り願うよ」
「、、、、、」
ジッと、見つめてくるだけである。
「そんなに必死になることかな? どうでもいいことじゃないかな?」
「にやり、貴方のその顔が見たかったの、それじゃね、また何処かで会えたら会いましょうね」
後姿を見せて、路地に瞬く間に消えていった。




