世界について、小説家について話と
八対二の法則が半ば支配している領域。
八割以下、二流以下の人間には、ほとんど価値が無い。
引っ張られる存在、十分に幸せでないから、利己的で私利私欲に走り、酷く保守的に傾く。
逆に一流以上、上位20%も、それほどではない。
内訳として、超一流の1%ほどが、真に世界を引っ張ている。
真に価値ある物語、一流あるいは超一流の幸福な、意味と価値ある人生が20%しか無い。
過半以下な時点で思い知るべきだろう。
「博識なら、誰でも出来る仕事よ」
小説家は言う。
「その博識ってのが、既に一線越えた天才性にも比する才能だろ」
「確かにね、大抵の上位職、一流のSEや弁護士、医者とかも博識だしね」
「そうだ、だから博識ってのは、もうそれだけで物凄い価値だと思うんだ」
「まあ大抵の誰よりも多く、コツコツ努力してきた自覚は、あるんだけどさ」
「プラスして言えば、博識で、小説家になるに特化した博識でないといけない」
「うん、少しはそうかも。
でも、実はそうでもないよ、人より多く知っていれば、つまり博識なら、大抵の作品を超越した作品を作れるの」
「そうか? 情報には明確に価値があるだろ?
博識でも低廉な情報ばかり知っていれば、良い作品は書けないんじゃないか?」
「うーん、どういえば良いのかね、とにかく博識というのはそんなモンじゃないって。
博識っていうのは、それだけで価値があるから、初めから低廉な情報ばかり知っている事はない。
例えば、金になる情報、それは価値が明確にあるよね? 小説を書くに有利かは別としてね。
そういう事を知ってれば、真に価値ある存在として、真に価値ある情報を創造できる、まあ、そいこと」
小説家、拡大して娯楽提供者には、大別して三パターンある。
ホスト系と先生系と詐欺師系。
ホストは、媚び媚びした情報を、ただ心地良く気持ちよいモノを提供する。
先生は、教育的で啓蒙的、勉強に似たようなモノを提供する。
詐欺師は、こちらを騙して、搾取しようとするだけだ、およそマトモなモノは提供しない。
だが、このパターンは酷く曖昧である。
高潔な奉仕者だとしても、場合によってはホストのようなパターンで情報を提供せざるを得ない。
大衆受けを狙い、媚びたような内容、まずは地盤を固めてから、コアな内容を発信するなどなど色々ある。
馬鹿を食い物にするような、そういうタイプの、一定の需要が必然生じる、流行とも言えるアレだ。
これをホストと詐欺師に任せるくらいなら、先生タイプがホストに成りきってやるべきであろうし。
地盤を固めれば、コアな内容で勝負することが出来る。
ライトユーザーなど酷く流動的だ、長く一定の需要は期待できないだろう。
大抵の堕落的な人間は、一生を通して己を高めて勉強する必要などない、だから全て適当に済ますのだ。
上位20あるいは1%以上程度が、真に一生を通して己を高めて勉強する必要があり、全てに真剣に向き合えるのだから。
そういう上位者の、下位者の底上げでなく、引き上げに適う内容、それがヘビーユーザー向けのコアというモノだ。
「まあ、小説家なんて下らないよ、やってみれば分かるよ。
損な役回りって言うかさぁ、与えても相応の見返りがないって感じ。
もっと効率的に富と名声と権力?
効果的に財力を増やして、人生をより良く生きる力を、別に引き上げ引き伸ばす手段は幾らでもあるし。
ボランティア感覚で、老後の楽しみレベルでやる以上は絶対に望めないよぉ。
だいたい考えてもみてよ、真に超一流の小説が書けるってのは、ある意味で完璧超人だよね。
体力も精神も、およそ頭を使うこと全般、コミュニケーション能力だって高いよね。
だったら、普通に起業したり企業に属する方が保障も完全だし、絶対に安定した感じさ。
将来的に、一線越えて医療や娯楽や科学の技術が神代のレベルに至る可能性、そういうのも、明確に、ある。
齢を食ってからじゃ、駄目なの。
初めからなにもかも計画的に、最大限の可能性で、安定と高水準な人生の設計が至高なのは理想真理だよ。
若い内に無茶や無理をしなくちゃいけないよ、賭けの要素を考慮してプラスになる範囲の可能な限りね」
「それじゃ、なんで小説家やってるんだい?」
「そりゃ、楽しいから、不安と楽しさは表裏一体で等価交換可能なモノなのさ。
私は愚者だよ、同時に賢者でもあるけどね。
どっちなんだか分かんないね、矛盾を抱えて日々葛藤してるんだ。
広く世界に利益を与えたい、だけど、自分の利益も最大化したい、そういうジレンマに捕われ続けている。
自分を犠牲にすれば、世界に多大な利益を与えられるのは、考えるまでも無く、確定している人生だよ。
でも、大概の人間は、そんな事を絶対の絶対にしない。
なぜなら、世界に利益を与えても、それは所詮娯楽以上のモノ、自己満足以上のモノには決してならない。
そして、娯楽や自己満足の手段なんて、既にこの世界には溢れすぎて飽和寸前、次の世代ではインフレして革命が起こっているかもしれない。
まあだからこそ、自己を犠牲にする上位者は尊く貴重で重宝されるんだろうけどさ。
真に精神的に恵まれた人間が、世界の負債を最大限背負って、頑張る、そして莫大な利益を生み出す、そういう世界構造さ。
そして私は、真に恵まれて、幸運な存在である確信に、生まれた瞬間から満たされているような奴で。
だからこそ、世界に滅私奉公、与えられたもの全部を、天に全て返しつくさないと、気が済まないんだよね。
そういう生き方以外に、およそ価値を見出せないし、これといって興味関心を引き立たせるものが皆無。
この世界がどれだけ狂気的な幸福や娯楽に満たされていても、惑えない、感情を感動させるのが無理みたいで。
私は世界に従属するように、自我の無い神のシモベ、神そのもののように振舞って、全体の為に生きるように生きる事しか皆無にできない。」




