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 開演を知らせるブザーが鳴り渡る。

 小さな劇場、そのワインレッドに波打つ緞帳が攫われた。

 明暗の分かたれた空間。暗がりに浮かぶのは小波のような人の群れ。

 一方、壇上を円形に切り取る人工の明かりは、ゆっくりと絞られ主役二人を照らし出す。

 途端、それらは音もなく動き始めた。

 人々の微かな息を呑む音は静謐な空間に溶ける。

 その動作はあまりに滑らかで、あまりにも自然だった。

 その造形は、まるで生きているのかと錯覚させるほどに精巧だ。

 感嘆のため息は、息が詰まるほどの静寂をひときわ際立たせた。

 ――やがて沈黙を破るように、嵐のような喝采の拍手が沸き起こる。

 それは全て、壇上の人物へと送られた。男女の人形を操っていた、若年の人形師に。

 鼓膜に響く大衆の声。

 木霊する音の残響は夢見のように心地いい。

 まるでそれが夢なのだと、夢であることが真実なのだと、初めからなかったことなのだと錯覚するように……。

 充実した達成感と高揚感の中、青年は静かに瞼を下ろす。

 決して何にも埋めることの出来ない心を穿つ大穴に、孤独と、悲壮な決意を宿して――――



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