四十四章 亜紀と俺・前
汚物theナパーム、ようは汚物は焼失だ!!ということ。
まあアホなことは置いておいて、猫って何であんなに喧嘩するんだろう・・・最近夜になると近所で猫の喧嘩大会が・・・
それはそうと、俺は今回から三点リーダなるものを使いはじめてみた。さて、どうなるんだ・・・他にもいくつか変えてみましたが、どうですかね?
「でねでね!!魂魄おじさんったら勢い余って枝切っちゃって、『ぬあ!!? しまったーーーー!!! 儂としたことがーーーー!!』なんて大声あげちゃったの!」
「へぇ、その魂魄って人、よっぽど抜けてるんだね」
「ううん、普段は至って真面目で優秀な人なんだよ?」
「優秀で抜けてるっていうのか?」
「う~ん…うん! そうだと思う」
寝殿造りの豪華な屋敷に着き、部屋を案内してもらい、俺は今は縁側で川のせせらぎを聞きながら幽々子と楽しく談笑している。
他の面子はというと藍は京に行ってきますと言って先ほど出て行ってしまい、幽香と紫は先ほどの追いかけっこが続いているのか、未だに帰ってこず、流美亜と亜紀もまた帰ってきていない。
まあそれでもこうやって可愛い子と話しせているんだし退屈にはならないから特に問題はないけど。
「あ、そうそう、紫お姉さんってすごいよね!」
「ゆ、紫お姉さん…」
お姉さんという単語に少し吹きかけたがなんとか堪える。見られたら確実に体罰をくらうからな。というか紫、お前、お姉さんって歳かよ…まあ俺も人のことは言えんが。
「そ、そのお姉さんがどうすごいんだい?」
「えっとね、容姿端麗でしょ! 文武両道でしょ!」
と、歳の割に教育が成ってるな。
「それで、何よりもとても思い深い人!!」
「…思い深い?」
「あ、違った。想い深い、だった!」
想い深い? あれがねぇ…
俺はつい疑問に思ってしまい、幽々子ちゃんに聞いてみることにした。
「どうして想い深いなんて思うんだい?」
「紫お姉さんてね、ずっと前から想い人がいるんだって!」
「へぇ、あの紫が…」
一生男無縁に暮らしていくもんだと思ってたけど、意外に乙女なんだな。
「その想い人って誰か聞いたかい?」
「ううん、聞いても教えてくれないの」
ちっ、さすがに未来の賢者、そう簡単には情報を漏らさんか。
「そうか」
「うん…でもね、とても大切に想っているっていうのは教えてくれたよ?」
『へぇ、紫お姉さんってすごいんだ!』
『そんなことないわ、出来て当たり前よ。でも…』
『でも?』
『こんな私でも、唯一どうにもできない事…ううん、動きたいのに動けない出来ないことがあるの』
『ええ?嘘だ~』
『本当よ』
『じゃあ何か教えてよ~』
『…恋よ』
『鯉?』
『何とも言えないことをわざと言わないの』
『えへへ、ごめんなさい。でもどうして? 紫お姉さん程の美人なら何とかなると思うんだけど』
『まあなんと言うか、そういうふうに見られていないというか…』
『何で分かるの~?』
『接し方よ、接し方』
『接し方?』
『そう。私への態度や、私と同じ想いを持つ他の旅のお姉さんへの接し方も、全部友達への接し方なのよ…いくらどう行動を起こしても、接し方を変えても、時間を掛けても、結局何の進展もありはしない…』
『大変なんだ…じゃあさ、その好きな人教えてよ!』
『え?』
『だって気になるもん、紫お姉さん程の美人を振ったんだから』
『ちょっと、まだ終わってないわよ』
『あ、そうだった…ってそんなことは良いから! 早く早く!』
『…万が一にもこの情報は漏れてはいけないから、誰か名前は言わないわ』
『え~~? そんな~』
『い、良いじゃないの、もう!…とにかくどんな人かは教えてあげる、それで我慢なさい』
『うぅ~…わかったよ』
『宜しい。じゃあ初めは………』
「ものすごく長いお話だったから途中で寝ちゃったけど…でも私には分かったよ?紫お姉さんがその人のことをどれだけ大切に想っているのか、どれだけ悩んでいるのかを…」
ものすごく儚く、歳不相応の優しい…そう、まるで母が子を思うような、そんな優しい笑みを浮かべる幽々子を見て
ああ、この子はもう大人なのかもしれないな
と思った。
そして紫がどれだけ悩んでいるのかも分かった。
でも同時に
この子、もしかしたら薄命なのではないか?
なんていう不吉な予感が頭に過ぎった。
理由はと問われると、あの笑みだ。
何故かは分かんないけど、あの笑みはあの年頃で浮かべるものじゃない、いや、浮かべちゃならない、そんな気がした。
「どうしたの?」
「ん? いや、何でもないよ。で、他には何を話したんだい?」
「うん、あとねあとね! 紫お姉さんと……」
「寝ちゃったか」
紫に関する色んな面白い話をして程なく、喋り疲れたのか幽々子は俺の膝の上に頭を乗せスヤスヤと静かに眠ってしまった。何とも可愛らしい寝顔だこと。
「蔡様~、どこですか~、亜紀から手紙を預かってきましたよ~?」
そんな時、いつ戻ったのか、遠くない範囲から藍の声が聞こえてきた。
「あ、こんなところに居ました…」
俺を見つけた藍は要件を述べようとしたが言葉が不自然に終わってしまった。どうしたんだ? 思い藍の方を見てみると、ある一点を見つめて静止してしまったようだ。その一点とは
「ふふっ、可愛らしいですね」
どうやら今もぐっすり睡眠中の幽々子の事だ。
「他から見たら子とそれを寝かしつけている親といったところですね」
ふふっ、と穏やかな表情を浮かべ茶化してくる藍。俺はそんな藍に茶化すなよ、と返す。
全く、最近良い性格になってきてやがるな、藍のやつ…。
俺はこれ以上茶化されないためにも藍に要件を聞くことにした。
「で、要件はなんだ?」
「あ、そうでした。蔡様、亜紀が手紙を私て欲しいと預かってまいりました。ちょっと待ってくださいね。えっと確かここら辺に…」
そう言うと尻尾に手を出しガサゴソと物色しだす藍。
おい待て、長年の付き合いをしてきたがお前の尻尾にそんな機能があるなんて初めて知ったぞ?しかし藍はそんな俺の疑問などどこ吹く風、今だに尻尾の中? とでも言えばいいのか、尻尾を手探りで物色を続けている。
「ええっと…あ、ありました。これです」
そう言うと尻尾からそれほど上質ではない紙を取り出し、俺に手渡してくる。
「なんじゃこれ」
「さあ…ただ、少しばかり重要なんですと言ってましたよ」
ふぅん、まあ良いや。とりあえず俺は二つ折しかされていない手紙を開け、内容を確認する事にした。
「…ん? どういうこと?」
だがその内容は確認する必要がない程に短い文だった。
「都の外れにある小さな小屋でお待ちしております?」
この文だけである。
俺の朗読を聞いて内容を把握したのか、藍は、待つ? 何処で? と疑問の表情を浮かべる。
俺はそんな藍を横目に、とりあえず行ってみるか、と腰を上げる。が、上げるにも上げれない理由を膝の上で見つけた俺は苦笑を浮かべながらも藍に、すまん、幽々子を頼む、と言うと藍はそれを、承知しました、と快く引き受けてくれると俺の膝の上の幽々子を抱きかかえ、縁側に座り込む。
「じゃあ行ってくるわ」
「はい、行ってらっしゃいませ」
俺は藍との会話を終わらせるとゆったりとした足取りで玄関に向かうと、紫が俺に贈り物としてくれた革靴を履き、玄関を出る。そして中門から外に出ると、その待ち合わせの場所に向かって歩きだす。
一体あいつは何を話す気なのか、そんなことを考えながら……。
とりあえず色々と変えてみましたけど、どうでしょうか?