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四十一章 女に用心

いえーい、身体の状態(風邪だ!気を付けろ!)が最悪ながらも投稿だぜ





あの天狗の里事件から早何百年、俺ら妖怪にすれば短く、人間からすればとてつもなく長い時が過ぎた現在の年は1101年、現季節は秋。

本来なら内容を飛ばすことなく色々話をしたかったがいかんせん、話題になるような展開は一切起きなかった。言葉の通り『一切』だ。そりゃあ藍や紫達と話をしたり、喧嘩だってしたさ。訓練だってしたし、誰かと一緒に出かけたりもしたし、知らない妖怪と殺し合いだってした。でも大事になるような、それこそ話題に挙げるような事は何一つなかった。

平和なのは良いから何も言わないけどよ。この性転換体質さえなんとかなればさらに最高なんだが・・・今は男だ。


で、そんな長い時を平和に生きている俺達は現在平安京というところに向かって旅を進めている。

理由としては簡単、興味があるだけ。それに暇だったから。



「蔡様、平安京とやらはあとどのくらいで?」


「そうだなぁ・・・軽く見積もって三日くらいか」


「そうですか、結構近くまで来てますね」


「だな」



横から声をかけてくるのは髪の毛が幾分か伸び、女っぽさに磨きが掛かってしまった哀れな銀狐、亜紀。初めの頃よりも強くなっているおかげか、今では尻尾が七本まで増えている。ただ現在も男に告白される方が多いのが悩みだが・・・



「蔡~、暇だから何かお菓子~」


「お前な、さっき食ったばっかだろ?」



そして亜紀と反対の位置から聞こえる可愛らしい声の主は流美亜である。こいつもなかなかの美人になってきた。その証拠に男妖怪から幾度も告白され、撃沈させるという記録が現在も更新中である。実力に関しては昔よりも大分武力知力妖力共々に上達してきており、一人旅に出ても文句なしである。のだが、今だに俺達と旅を続けている。

 

それ以外にも他の面子もかなり成長している。

 

藍は以前よりも増してその頭脳は切れに切れまくり、もはや一般人にはついていけないような計算までするようになり、知力妖力ともに上昇。そして昔よりはあの直球的な意思表示はしなくなった。昔よりは、だがな。


幽香も前よりも大分おとなしくはなったものの、その破壊的で攻撃的な性格は今も健在。とは言っても以前からそれほど仕掛ける奴じゃなかったから、そんなに問題でもないけど。ただ妖力とかは確実に強さが増している。さすが大妖だ。


紫は元からの能力が高すぎるせいか、それほど成長があるわけでもないが、それでも以前よりも頼もしくなってきている。まあ、変人なのは変わらないけど。



「ふぅ、今日はここら辺で野宿か」


「そうね、もう夜だし」



さて、あらかたの説明も終えたところで現在地は森の中、現時刻は良い子はお家に帰る時酉の刻、夏の頃より短くなった日はすっかり姿を隠し、闇の時間が姿を現している。辺りに鬱蒼と立ち尽くす木々が余計に暗さを感じさせる。そして暗くなると高ぶるのが一人・・・



「夜って本当に最高よね!」



流美亜である。さすが闇の妖怪。今も獲物求めて死ぬか食われるかだーー!!なんて叫びながら森に突っ込んでいった。



「相変わらずこの時間帯好きだな、あいつ」


「はは、まあ闇の妖怪ですからね、一般の妖怪よりも好みなんでしょう」



笑いながらも作業を続ける亜紀。まあ夜が好きなのは妖怪では多いが、あいつは異常だぜ。



「さあて、とりあえず俺も探してくるわ、飯」


「はい、了解です」


「なら私も行くわ」



腰を上げ、探しに行こうとしたとき幽香が声を掛けてきた。



「行く?お前も?」


「あら、何かご不満?」


「いや、そういうわけじゃないが・・・」



不満、というより、驚き、の方が上回っている。何故かって?今までこいつとも旅をしてきたが一緒に行こうなんて言われたことなかったからだ。とは言っても調達の時は大抵

藍、流美亜、亜紀の誰かがすぐに一緒に行くと言って行動していただけだから、実際は声を掛ける時期を失っていただけなんだけどな。

 まあそんなことはどうでも良いか。ちょうど良い機会だし、たまには珍しい組み合わせで行くのも悪くない。



「まあ良いか、ならさっさと行こう。早くしないとあの闇子ちゃんが変なもの見つけ出してくるし」


「ええ、そうね」



そういうわけで了承し、早速探索を開始した。









「どうだ~、何かあったか~」


「残念だけど、猪すらいないわ」



森の中を探索し続けて少し、これらしい収穫はないまま時間だけが過ぎていっている。



「あ~疲れた・・・何だ何だ、今日は外れかよ」


「そうみたいね」



少し残念というか、なんと言うか・・・やはり焼いた肉というのは美味しいわけで、食えないとなると、やはり残念だ。



「戻るか、結構時間掛けたし」


「そうね、これ以上は無駄だろうし、そうしましょう」



お互いが納得したところで、来た道を帰ることにした。


そして来た道を戻る中、聞こえてくるのはふくろうの鳴き声と歩いた時に踏まれる雑草や木の音のみ。



「・・・・」


「・・・・」



会話が全く弾まない俺と幽香。何この沈黙、嫌だわ。



「ねぇ」


「ん?」



そんな中、初めに声を挙げたのは幽香だった。



「最近藍とはどうなの?」


「ああ?見ての通りってやつだ。至って平和、平凡、順調」


「そう」



そう言うと上げた顔を下げ、またも黙り込む幽香。あれぇ?何故そんなに黙り込む?



「お前はどうなんだ?こう浮ついた話とかないのか?」


「そうね・・・無いこともないわ」



そりゃそうだろう。中身はともかく、見た目は美女なんだ、男共が黙ってるはずがない。



「それこそ妖怪と知りながらも愛を説いてくれた人間もいたし、同じ妖怪からも告白された事だってあるわ」



おお・・・知らない事実が大量に。いや、まあいくつかは知ってはいるけど、皆いつも一緒ってわけではなかったからな。時には一人で暇つぶしにどこか探索に出かけた奴もいるくらいだし。



「まあ結果はもちろん自分を見つめ直しなさいって言って追い返したけどね」



顔を上げにっこり笑みを浮かべながら言う幽香に俺は、うわぁ、こいつ鬼だ、と思ってしまった。間違いじゃない気がするけど。



「その自分を見つめ直しなさいって」


「もちろん、そのまま『自分』を、よ」



こいつ鬼だ!!ようはあれだろ?お前不細工だ!てことだろ!?



「あら、誰もそこまは言ってないわ。ただ、自分を見つめ直しなさいって言っただけよ」



・・・・



「お前、それって人生を、って意味じゃあ、ないだろうな?」


「・・・知らないわ」



俺から視線を逸らす幽香。その行為は肯定の意なんだな!?お前、不細工って言うよりも酷いぞ!!?



「だって・・・イマイチなんだもん」


「もんって・・・」



指をイジイジする姿は可愛らしいといえば終わりなのだが、今の言葉を聞いたあとだとそうは思えなくなるのは何故だ?



「・・・はぁ、まあ幽香らしいと言えばそうだな」


「でしょ?私に遠まわしなんて器用な真似できないもの」


「よく言うよ」



自分を見直しなさいって言い方も人によっては遠まわしな言い方だと思うけどな、俺は。



「でもそれでもだ、それなりに見栄えが良い奴も居ただろう?」


「いたけど私の体目当てのクズなんて興味ないわ。お返しに地面の栄養素にしてあげたわ」


「・・・・」



こ、こえぇ・・・・



「で、でもよ、中には真剣に行ってきてくれた奴もいただろう!?」


「いたけどしっくりこないから却下、粉砕撃沈大爆発させてあげたわ」


「・・・・まさか物理的に?」


「そんな野蛮なことしないわ」



そ、そうだよな、いくらなんでもそれは



「まあでも病んじゃったらしいけど」


「お前本当に鬼畜な!!?」



コイツ本気で鬼だ!!しかも満面の笑みで言うことじゃねえ!!



「だい・い・誰・・・だと・・てる・・のよ」


「ああ?なんだってぇ?」


「なんでもないわよ堅物」


「か、堅物」



ひ、ひでぇ・・・



「大体あれだけ私の気持ちを表現してるのにそれに何ら反応を示さないってどうなのよ!」


「え、ああ、あれな。まあなんと言うか・・・慣れ?」



そう、確かに俺は幽香にそれはもう言っていいのか分からないほど激しく熱い愛の表現を受けてきた。それこそ布団に侵入してきたり、頬に口付けしてきたり、真正面から抱きついてきたり・・・挙句には全裸とか・・・そんなもの何度も受けてたら慣れちまうわ!

おかげで何度藍に怒られ、やきもちを焼かれ、宥めるのに精神を使ったか。

そしてその度に亜紀が


いい加減側室として迎え入れたら・・・


なんて言いやがったから何度地面と遊ばせたりしたことか。



「そもそも珍しいすぎるのよあなた」


「俺?」


「そうよ、時の権力者でも女の5人や6人、平気で作ってるというのに」


「ま、まあ俺は人間じゃないしな」


「関係ないわよ。あなたほどの実力者なら問題ないじゃない?」



いや、そういう問題じゃあない気が・・・



「ほら、自分で言うのあれだけど、私の身体って魅力的でしょ?」



胸を主張するかのように腕を組む幽香。うむ、大人。何がとは言わない。



「それとも・・・こういうのがお好み?」



そう言うと服の留め具をいくつか外し、白く綺麗な肌と谷間が・・・って



「おいこらやめろ、淑女たるもの矢鱈滅多にそんなことしてはいけません」



そう言いながら顔と視線を違う方向に逸らし、留め具をつけようと努力する。

たぶん、今の俺の顔って真っ赤なんだろうなあ・・・



「あら、なあに?触りたいの?」


「どこをどう解釈そうなる!?」


「だって・・・ほら?」


「え?」



俺は触っている手に力を少し込め、これが何なのか調べる。

するとフニョン、とでも言うべきか、物凄く柔らかい感触が



「んっ・・・大胆ねぇ」


「はい~、間違ったよこれ~」



触ってはならない箇所に触りましたね、俺最低。とりあえず俺は慌てて腕を引っ込める。



「あら、もうおしまい?」


「ひ、人をいじってはダメでしょうが!」


「あら心外ね・・・」



そう言うと蛇が巻きついてくるかの如く、足まで絡めて身体に抱きついてくる幽香。

ああ、顔が熱い、物凄く熱い。今なら水を蒸発させられる気がする。



「私は至って真面目よ?」


「い、いや、でもだな」


「それに・・・」



不意に耳元に顔を近づけてきた。



「私言ったはずよ?情熱的って、奪うって」


「・・・・本気だったのか」


「むしろ今頃そんなこと言うあなたが異常なのよ」



そう言うと耳をひと舐めし、身体から離れていく。全裸は見慣れても、こういうのは駄目なんだ俺・・・心臓がめちゃくちゃうるさい。



「まあでも今はそれでいいんじゃない?」


「・・・・今は?」


「そうよ、今は」



そう言うと外していた留め具を留め直し、何事もなかったかのように歩き出す幽香。そして不意にこちらを見たかと思うと



「いずれ陥落させてあげるから」



何やら意味深な発言を残してまた先に行ってしまわれた・・・



「・・・・きっついなお前も」



生きていけるのだろうか・・・不安である・・・
















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