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三十七章 万事休す、なのか?お前

時間がある今のうちに!

ていうか・・・三人称を書こうとして三人称になっていないとか・・・どんだけ馬鹿なの、俺・・・そして相変わらず緊迫感の無い戦闘シーン・・・う~~~む・・・



fightという言葉とともに試合が始まって早五分、未だ両者共に動く気配を見せない緊張状態が続いていた。

 本来ここまで動きがないと観客から野次や文句などが飛び交ってもおかしくないのだが、先ほどの両者の妖気などが原因なのか、固唾を飲んで見守っている。



「お、おい、お前、どっちが勝つと思うよ?」


「そ、そんなの分かるわけないだろ!?」


「だ、だだ、だよな!」



どこからかそんな会話も聞こえてくる。どっちが勝つか、か。

 総合的には紫の方が断然有利だとは思う。特殊能力もえげつないし、判断力もある、頭も切れる、どれをとっても非が無い。

だが、なぜだろうか。

 今回だけは、物凄く不安だ。血を見ずには終われないというか、全身血まみれになってしまうというか・・・



「無茶はするなよ、紫」



柄にもなくそんな言葉が俺の口から出てきた。果たしてこの不安が杞憂に終わるのか、それとも・・・


























「・・・・・」


「・・・・・」



戦闘する構えも見せず、何も持たず、ただ黙って自分の対戦相手を睨み続ける両者。

周りの観客から声は無く、風は不気味に感じるほど静けさを保っている。あるのは滝の流れる音のみ。

 


「初めてだよ」


「・・・何が、かしら?」



そんな静寂な中、次期天魔と謳われる風網が口を開く。



「自分が死ぬかもしれないと思ったのが、だ」


「あら奇遇ね、私もよ」



お互い軽く笑みを浮かべる。その笑みは普通の者からしたら何かおどけているのかなと思われる様な笑みだが、実際は違う。

 両者ともに余裕が無いことを示す笑みだ。最も、そのことに気づいているのは蔡を含め、ごく少数だが。



「生まれてこのかた何百年、幾多もの修羅場を潜り、死線をくぐり抜けてきた」


「・・・」


「その度に何度も死にかけ、生き延び、また死にかけ、また生き延び・・・それを何度も繰り返し戦ってきた私は何人にも負けないと自負していた。しかしだ・・・お前にだけは、お前にだけは何故か勝てる気がしない。何故だろうかな?」



そう語る風綱の表情はさっきとは打って変わって落ち着いた笑みを浮かでいた。



「さあ?私もあなたと同意見だからねぇ」


「ほう、そうだったか。案外余裕があるように見えたのだがなぁ」



今度は悪戯っ子のような笑みを浮かべる風綱。それを見た紫もまた同じ表情を浮かべる。



「そんな状況だったらどれだけ楽なことかしら」


「ははっ、違いない」



お互い今の心境を語ったせいなのか純粋な、それこそ長年の友に向けるような笑みを浮かべる両者。

しかし次の瞬間、両者の顔から笑みが消え、殺意溢れる表情に変化した。



「さて、楽しい時間はこれまでだな」


「ええそうね、ここからはお互い潰し合うとしましょうか」



そう言うと風綱は腰を少し落とし構え、紫は構えこそないものの、スキマから傘を取り出し相手を威圧する。



「・・・」


「・・・」



そしてしばらく沈黙が辺りを包む中・・・



「こちらから行かせてもらうぞ!」



先に動き出したのは風綱だった。紫に急速に接近するとまずは小手調べとばかりに軽く、だが重みもある飛び蹴りを放つ。

 それを素早く右に回避し、お返しとばかりに風綱に傘を叩き込む。



「当たらないよ」



しかしそれを余裕の表情を浮かべ片手で受け止めるとグシャッという鈍い音と共に傘をへし折る。

それを見た紫は一瞬舌打ちをすると後ろに大きく飛び退き間合いをとった。



「あの傘、結構気に入ってたのに・・・」


「それはすまんな。だが今は戦いの最中だから、な!」



そう言うとまた紫に接近し、攻撃しようと仕掛ける。



「そう何度も接近させたくはないわねぇ」



紫は手を軽く振ると自身の足元にスキマを作り、そのままスキマの中に入っていってしまった。



「何?」



それを見た風綱は少し驚くがすぐに冷静さを取り戻すと辺りを見渡す。

 上か、下か、それとも・・・そう考えていると



「はぁ~い?」



鋭い拳と共に紫が後ろから姿を現した。



「ちっ、厄介な能力だな!」



苛立たしげにそう吐き捨てると前に飛び退く。すると刹那、家を叩き潰したかのような轟音が辺りに響き渡る。

その音源は紫が破壊した地面からであった。



「お前もなかなかの怪力なんだな」


「あら失礼ね、これでもまだ乙女なのよ?」



紫は地面にめり込んだ自身の腕を引っこ抜くと腕の汚れを払い落とす。



「それにしても面倒な能力だな。どういったものなんだ?」


「あら、私が親切に答えると思うの?」


「無いな」


「そうでしょう?」


「でもとりあえず邪魔だってことはわかった。だから・・・」



右腕をゆっくりと上に挙げ、パチンと指を鳴らす。



「その能力、潰させてもらう」


「え?」



何か意味ありげな言葉を漏らすと紫に向かって光のごとくの速さで走り出す風綱。

それを見た紫はさすがに回避しきれないかと思い、いつも通りにスキマを開く・・・はずだった。



「え!?」



しかし何故かスキマが開かなかったのである。まるで元からそんなものなかったかのように、ウンともスンとも言わない。さすがの事態に紫も混乱に陥り、

 そんな馬鹿な!ありえない!どうして使えないの!!?

紫の頭にこの言葉がずっと駆け巡る。

 


「だから言っただろう!潰させてもらうとな!!」



そしてそんな混乱する紫にお構いなしに強烈な正拳突きを放った。

混乱から回復しきれなかった紫は目の前に来た風綱を見てようやく防御体制を取ろうとするが



「能力がなければただの小娘か?貴様は」



既に風綱の拳は紫の腹を捉え、肉体を抉るようにめり込んでいた。



「っ・・・・はっ・・・・」



あまりの激痛に呼吸困難に陥った紫はなんとか意識だけは、と歯を食いしばり耐えようとする。



「ほう、なかなか頑丈だ、な!!」



しかしそうは許さないと紫の腹にめり込んだ拳を後ろに引き、紫の服を掴むと再度紫の腹に拳を打ち込み、紫を木々と同じ高さまで打ち飛ばす。打ち飛ばされた紫はまだ回復しきれていないのか、微動だにしない。



「面白いものを馳走してやろう」



風綱はそう言うと上空に吹き飛ばされた紫の背後に一瞬で付くと逃げられないほどの力で紫を抱きしめる。



「我ら天狗のちょっとした体術だ。ありがたくもらっておけ」


「な・・・何を」



なんとか喋れるところまで回復した紫は振りほどこうと必死にもがく。しかし先ほど一次的とは言え瀕死の状態に陥ったこともあってか抵抗は弱々しく、ほとんど動いていないのと変わらない抵抗だった。そして・・・



「秘伝体術、天狗落とし!!」



竜巻を発生させる程回転すると、その竜巻を纏いながら一気に地上に降下する。

そして次の瞬間、地上に雷が落ちたような激しい激突音と共に辺りが砂煙に包まれる。



「ふっ、勝負あり、か」



その声と共に二つの影が煙の中に見えた。その影の正体とは・・・



「案外期待はずれだったかな?」



髪の毛のごみを払い、勝利を確信した表情で立っている風網優雨と



「・・・・・・」



服が無残なまでに敗れ、息もしているのか怪しい状態で微動だにせずうつ伏せに倒れている紫の姿であった・・・











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