三十章 どこをどうやったらこんな広いの出来るんだ・・・
今のうちに出してしまおう。
まああいも変わらずイカレた文ですがね・・・
妖怪の山。
元は修行僧などが修行に来るとして有名だっただがいつしか烏天狗というものが住み着き、今ではよほどの者でもない限り入ることも出ることもできないと言われていたんだが・・・
「・・・・」
「・・・・・・」
そんな山の奥の天狗の里に・・・観光気分出来てしまってますはい。
いやな、門を開けて入ったらさ、まず目に付いたのが大量の烏天狗たちだった。
それも大量を超す大量で。どうやったらこれだけの人数がいるのかと聞きたくなるほど。
屋根の上にいたりでかい木の枝に立ってたり・・・。
曲芸師か!?と言いそうになったわ!
「同じ顔とかがいるわけではないけど、顔と男と女の服装以外おんなじだから物凄く気持ち悪い」
「蔡様、この状況でその言葉はどうかと・・・」
「でも蔡に同意しておくわ」
「紫様まで・・・」
そうやってツッコミを入れてくる亜紀だが、顔は案の定蒼白である。
まだまだ強者と言えない亜紀には仕方ないことだ。だが亜紀と違って流美亜は既に喧嘩体制である。もうさっさとやりたいとばかりに殺気が溢れ出ている。
さっきまであんなに怯えていたのに・・・あれか?やけってやつか?それとも性格か?
う~ん・・・わからん。まあいいか。
そんなことをしていると目の前の人ごみが急に道を開けた。
するとその道から厳つい誰かさんと付き人か何かなのか、女の天狗が現れた。
「・・・・」
「・・・・親玉だな」
明らかな殺意、何かを探る眼、そして体から溢れ出ている長としての覇気。
なるほど、こいつが親か。
服装も体もほかの天狗と違って威厳ある服装だし、筋肉がもりあがっている。
だが驚きなのはそれだけじゃない。その傍らに控えている女天狗、こいつからも並々ならぬ気配を感じる。
服装も上半身は射命丸のと同じでも、下半身は違い、黒い袴を着ている。
「・・・・・・・・」
親玉は俺の顔をじっと見ていると不意に射命丸の方に顔を向けた。
見られた方の射命丸はというとビクッと怯えている。
かなり恐がっている。
「射命丸、これはどういうことだ?」
「は、はい。私が普段通り監視していたところ、この者達が山を登っていたの止めに入りました」
「ほう。で、結果は?」
「・・・・止めることができませんでした」
それを聞いた親玉はなにも言うことなく、ただひたすら射命丸を見続けた。
それを受けた彼女は何を言うまでもなく、顔を上げることもできずただ俯くだけであった。
そんなやりとりをしてからしばらくして、親玉天狗は傍らで控えていたあの女天狗と何か話し始めた。
「・・・・・」
「・・・・了解しました」
その一言を言ったと、女天狗が前に出てきた。そして・・・
「・・・」
一瞬の沈黙のあと、射命丸を縛っていた紐が『潰れた』。
「潰れた?」
そんな馬鹿な・・・切れるならまだしも、潰れるって・・・。もう一度その潰れた紐を見てみると、巨大な何かに踏み潰されたかの如く、ペシャンコになっていた。試しに拾ってみると、なんとそこらに落ちている葉っぱと同じくらい薄くなっていた。
「私の能力だ」
「能力?」
しかしそれだけを述べると俺の質問に答えずに射命丸を連れて親玉のところに帰っていってしまった。
しかし、能力か・・・潰れたところを見ると、何か潰す能力か?
だが今はそんなことより目の前のことに集中だ。
親玉がまた前に出てきた。
「この山に如何なる用があって参られた?」
「用って・・・そうだな、特にはない。あるならせいぜい見物だ」
「ほう、見物とな?」
「ああ、見物だ」
「それはまた変わったものだな」
「まあそうだわな」
俺でも少し変わってるなあと思ったよ。
「しかし神聖な修行場に見物で来るとはな少しどうかと思うのだがな?」
「あ~、まあそうと知ってれば来なかったけどね」
とは言っても一応話は聞いていたがな。
「さて、それはそうと、お主達は知っておるか?この妖怪の山の戒律を」
「知ってたら驚きだな」
「まあそうだろうな。では一つ教えてやろう」
そう言うと、傍らにいた女天狗に視線で何か合図を送る親玉。
それを確認した女天狗は軽く礼をすると一瞬でどこかに飛び去っていった。
それを確認した親玉は再度こちらに視線を向け、話を続ける。
「第一条に、修行者以外の者が現れた際、これを駆逐すると書かれているのだ」
「く、駆逐って」
ようは排除か。鬼か!?
「が、それも射命丸が失敗してしまったようだ」
「申し訳ございません・・・」
親玉がギロリと射命丸に視線を向けると彼女はさらに縮こまってしまった。
「本来なら厳罰を与えるのだが、今回は話が変わる」
「ん?どういうことだ?」
「第二十四条に里まで侵入を許した場合、団体戦、もしくは個人戦にて正々堂々と戦い、勝敗を決めると書かれている」
「・・・・で?続きは?」
「うむ。その勝敗だが、まずどういったものが勝ちと負けになるかだが・・・」
なぜか合間ができる。もしかして・・・
「死ぬか生きるかだ」
「想像通りですか」
まあ厳しい所だからこそなんだろうがな。
それを聞いた亜希は少し怯えている。
だが先ほどよりも落ち着いていたらしく、それほど怯えているわけでもないようだ。
どうやら俺があいつと話している間に平常心を取り戻していたようだ。
少しは成長しているじゃないか。
そんなことも露知らず、親玉は話を続ける。
「まあそうは言っても基本は、だ」
「基本?」
「ああ。別に降参の意を示したも良いわけだ」
「ふ~ん。案外そこは優しいんだな」
「そうだな。まあそうは言っても死か生以外で勝敗を決めたことなどそうはないがな。数える程度しかない」
案外優しくないものであった。
「簡単な説明はこんなものだ。何か質問は?」
「無い」
「そうか。ならば参ろう、死闘場へ」
そう言うと踵を返し、歩き出す親玉。
俺達も周りの天狗達もそれに続く。
そして歩いていると藍が声を掛けてきた。
「久々ですね、ここまで緊迫したものも」
「そうだったか?」
「そうですよ」
むう、そうなのか。まあいいか。
そうこうしているうちに何やらでかい闘技場が見えてきた。ていうか・・・どうやってあんなでかいものを建築したんだ?(形は縦横100M。屋根はなく、観客席と選手席が同じ高さである程度。選手席の形は球場のベンチとほぼ同じ作り)
「なんという技術力でしょう・・・」
「ええ、そうね」
「侮れないわね」
「緊張する・・・」
「落ち着かないと・・・」
その広場の奥には今か今かと大勢の声が響き渡っている。
そんな時、目の前にあの女天狗が現れた。
「これに出る奴の名前を書け。間違えるなよ」
紙を俺に渡し、それだけを言うとまたどこかに飛び立っていこうとする。しかし何故かそれを途中で止め、またこちらに顔を向けてきた。
「それとお前」
「ん?俺?」
何故か俺を指差す女天狗。なんだろうか。
「お前は参戦できんからな」
「え?何で?」
訳がわからんぞ?
そんなことを思ってもお構いなくしゃべり続ける女天狗。
「長もああ見えてそれなりに来ているのだ。今回は参戦できん。よってお前達の長も不参加とさせてもらう。それだけだ。ではな」
そう告げると今度こそ飛んでいってしまった。
「・・・・そうらしい」
「これは・・・なかなか」
「まあでもいいんじゃないか?この際だしみんなどのくらいの実力なのか見ておきたいからな」
そうなんだよな。今更だけど、まだ完璧に実力を把握できてるわけじゃないんだよなあ。
「とりあえずまずは内容を見てみよう」
俺は紙に書かれている内容に目を通す。
内容はまず決闘者の名前の記載と、出場人数、そして出る順番。
で、書いたら係りに渡す。ふむ、把握っと。
とりあえず俺は紫に何か書くものをスキマから出してもらい、記入することにした。
まずは人数が五人。
俺は一度全員の顔を見渡す。
藍は、普通。
幽香は・・・ウズウズしてるよおい。
紫は、まあどっちでもいいといった顔をしている。
流美亜はそれなりにやる気があるようだ。
亜紀は出るなら頑張りますって顔だ。
ふ~む・・・・なら出場する順番だが、その前に釘を刺しておこう。
「お前ら、これから決めることに文句はなしだからな?」
「はいはい」
「了解しました」
「わかってるわよ」
「分かりました」
「いいよ~」
よし、ならまず一回戦に亜紀っと。
で、二回戦に流美亜
三回戦に幽香
四回戦に藍
最終戦に紫にしていこう。
「まさか私が最終戦だなんて・・・なあに?そんなに私に期待してくれてるの?もう蔡ってば~、嬉しいわ!」
「な、んだと・・・・この私が・・・四回戦目・・・・・・・・私は嫌われてしまったのか?」
「特にどうってことない順番ね」
「三番目って中途半端ねえ・・・」
「まさか私が先発・・・き、緊張します・・・」
反応は様々である。地面に膝を着き落ち込む者もいればどうってことない奴もいるし、逆に嬉しがってる奴もいる。
そんなことを気にしていては時間がかかるのでとりあえず俺はその紙を係りに渡す。
そして決闘者席に案内されていく。
案内係に着いて通路に入ると中には木で出来た外見とは違い、石でできた通路が続いていた。
「石で出来ているのか。変わってるな」
そんな感想を漏らしながら歩いているとすぐに俺達の席がある場所に着いた。
「では開戦宣言までしばしお待ちを」
そう言うと案内人の男天狗は空を飛んでどこかに行ってしまった。
それを見た俺はとりあえず木で出来た椅子に着席する。
藍達も皆座っていった。
そしてしばらく雑談をしていると大きな声が辺りに響いた。どうやら始まるようだ。
「ええ、皆様!!本日はお忙しいながらよくお集まりいただきありがとうございます!!」
「「「「「おーーーーーーーー!!!!」」」」」
物凄い声の大きさである。隣では藍と亜紀が手で耳を抑えている。
どうやら耳が良いのがここに来て仇になったらしい。
幽香や紫、流美亜も五月蝿そうではあるがそれでも藍や亜紀ほどではないようだ。
そんなことをしている間に前置きは終わったようだ。
そして対戦する者の名前を挙げている。
「ではまずは!!!一回戦!!亜紀選手対!!麗しき我らが優秀な警備隊隊長!!犬走秋葉選手!!」
「「「「「おーーーーーーー!!!」」」」」
その犬走という言葉を聞いた瞬間先程よりもさらにでかい声が響き渡る。
どうやらかなりの人気者らしい。
しかしそれよりも藍、亜紀、耳大丈夫か?
「うう・・・耳が痛いです・・・」
とりあえず藍の頭を撫でておく。
亜紀に対しては・・・
「まあ頑張れ」
「え!?それだけ!?」
「なんか文句あんのか!?」
「ないです!!!」
そう言うと広場に向かって歩き始めた。
とりあえず真面目に一言掛けとくか。
「亜紀!負けるなよ!」
「はい!!」
そう言うと改めて広場の中央に向かって歩き始めた。
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「秋葉殿、油断なされるな」
「ええ、わかっています。元よりそのつもりですから」
そう言うと銀の長髪の美女は立て掛けてあった盾と刀を手に取る。
「なんて言ったって、隊長ですもの」
「だが油断禁物ですぞ。相手は未知の存在と言える者達、いきなり行っては返り討ちにも合いますよ?」
「ええ、ええわかってるわよ。大丈夫だから」
そう言うと持っていた鋭く光る刀を二、三軽く振る。かなりの速度と無駄のない振りからしてところからして結構な者らしい。
その姿にはかなりの余裕が見られた。
「じゃあ行ってくるわ!」
そう告げると刀を肩に担ぎ、彼女もまた亜希と同じように広場中央に向かって歩き始めた。
これが面白い出会いということも知らずに・・・
うははははは!!なにも言うことなんてない!いや言えない!!!