二十五章 世の中楽しいねえ
感想も欲しいが、暖かさも欲しい、主にお風呂とか・・・早く夜が来ないかなあ・・
「あ~~~・・・・・」
「ふふっ」
こ、腰が痛い・・・曲げたらかなり激痛が走る、っていたたたたた!!
見ろ藍の顔を!すっげー満足しましたって顔してるぞ!!
くっそ~、藍の奴め、手加減無用で来やがって~!あ、そうだ忘れてた。
よ、皆、俺だ、蔡だ。
今物凄く腰が痛いです、はい。なぜかって?・・・大人の事情ってやつだ。
まあそれはともかく、今俺達は幽香を新たに加え、歩きだして少しして、途中で見つけた小さい村に来ているんだ。
村は村でも結構でかいけどね。
で、何をしているのかと言うと前回結構重要な問題になった情報不足を少しでもマシにするため、人の化けながら手分けして情報収集してるって訳だ。
とはいっても化ける事が必要なのは藍と亜紀だけなのだがな。
服は・・・まあ仕方なかった。
変えるにも、どれも同じ服ばかり。紫だけはもう一つあったけどな。
胸元がちょい見える紫色の服。あんな変わった服どこで手に入れたんだよ。
と、無駄話はこれくらいにしておこう。
で、今集まっている情報が
遥か西にとてつもない力を持つ妖怪タヌキが居る
出雲と呼ばれる地で白ウサギが予言をしてその者が結ばれた
何人もの声を瞬時に聞き分けることが出来る人が居る
正体がつかめない不明な者が居る
最近付近に人喰い妖怪が出始めた
このくらいか。
にしてもどれだけ範囲が広いんだよ、全く。
とりあえずこれは後で相談だな。妖怪の山を行った後はどこ行くか決めてないし。
「しかし・・・」
さっきの人喰い妖怪の話が気になるな。
なぜかって言うと話をしている時の村人の様子が物凄く怯えていたからだ。
いや、それだけじゃない。何やら村全体が暗いし、なによりこの村の大きさの割には人が少ない・・・たぶんかなりの人数が喰われたんだろう。
「これは調べてみる必要があるな」
そう判断すると俺は早速その事についてもう一度聞きまわることにした。
「あ、すいません・・・」
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あれからしばらくして、ようやく一通り聞き終えた。
で、分かった事が
夜に出没しやすい
黒い球体が現れる
これだけ。
まあ仕方ないと言えば仕方ない。
人間からしたら妖怪相手にこれだけ知れただけでもかなりの儲けもの。
まあ俺ら人外からすれば少ない量だけど。
しかし夜に出やすいねえ。と言う事は昼でも出てくるってことだな。
「今日は違うらしいけど」
村の周りからはそれらしい妖気が感じられないからだ。
もしかしたらその球体とやらが妨害してるのかもだが。
とりあえず聞いてしまったからには見過ごすことはできない。後で藍達と合流した時に相談してみよう。
「とりあえず今日の宿を探すか」
まだ太陽は真上にあるが、念のため早めに探しておこう。
そう判断した俺はすぐに宿か泊めてくれる所が無いか話を聞きに向かった。
・
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「ふむ、ありがとう。おかげで助かったよ」
「いえいえ、お気になさらずに」
そう言うとおばあさんはどこかに去っていった。
それにしても尻尾を無くして行動するとどうも違和感が拭えんな。それだけあって当たり前と言うことか。
それにしても先ほどからこの村の男どもから下品な視線を感じる。
中には
「あの女、すげえ美人じゃねえか。体も良い体してるしよ」
などと聞こえる始末。
非常に不愉快だ。私の体は蔡様にしか捧げんと言うのに。
まあそんなことはどうでも良いか。いざとなれば投げ飛ばすなりすれば良いだけの事。
さて、そろそろ蔡様の所に向かわなければ。
私はそう思い、歩きだそうとした時
「待ちなよ女」
「・・・・はあ」
5、6人程目の前に男達が現れたではないか。いや、周りの家からも出てきたな。合計・・・11人か。
それを見た周りの無関係な者達はそそくさと家に帰って行った。
「何と面倒な・・・」
「ああ?なんだって?」
「面倒だと言ったんだ、愚か者」
そう言うと男の一人が笑い始めた。気持ち悪い。
「はっはっはっは!!気が強いな!これだけの人数を見て、そんな事言えるなんてよ!」
周りからもそれに賛同するような声が上がる。
下品なものだ。蔡様ほどの良い方でなければ眼中にあらず。まあそうは言ってもすでに身も心もあの方の者だがな!
「あん?こいつ、誰か想い人でもいるのか?」
「は!貴様らなど足元にも及ばん方がな!」
「んだとてめえ!!」
む、挑発しすぎたか。
私はそんな事を思いながらその男から放たれた拳を受け流す体制に入った。
しかし
「おっと、人の女に何しようとしてるんだ?」
「ああ!?」
その拳は見知った方が止めてくれた。
「蔡様!」
・
・
・
「蔡様!」
「おう、来たぜ」
そう言うと男の腕をとり、上に捻りあげる。
「あだだだだだだだ!!!」
「ああ?人様の大事な女に手を出しといて、何が痛いだ、アホンダラ」
そう言うとその男を集団に向けて押し飛ばす。
「うわあ!?」
「いってーーー!!」
「お~、結構巻き添えになったな~」
一気に倒れていくアホどもを見てそんな事を言う俺。
おっと、その前に
「こらこら、あれでも一応は一般人なんだ、手加減ぐらいしろよ」
「うう、すいません」
ちょいとばかりのお小言を藍にやる。
まあでも殴りかからないだけマシか。とりあえず頭を撫でてやろう。
案の定、とても嬉しそうな顔をする藍。
さて、とりあえずどうしようかと藍の頭を撫でながら男どもに視線を向ける。
「野郎~~!!てめえら!!やっちまえ!!」
そう言うと一斉に襲いかかってくる男ども。
「うむ、手間が省けたね」
「そうですね」
とりあえず喧嘩態勢に入った時、いきなり一番端にいた男が向かいの家まで吹っ飛んでいった。ついでに家の中に飛んで行った際、物凄い破壊音がしたけど大丈夫か?倒壊とかしねえだろうな?
「な、なんだ!!?」
「やり過ぎな、幽香」
「あら、助けてあげたのに、酷い言われようね」
そう言うと路地から幽香が笑みを浮かべて現れた。
お前、その傘で殴ったな?傘曲がってるぞ?
呑気にそんな事を思っていると次の瞬間最後尾にいた男が吹っ飛んできた。
あ、これって俺の方に飛んできてないか?
「藍」
「お任せを」
そう言うと俺と藍は蹴る態勢に入り
「「ふんっ!」」
「ぶごあ!!」
蹴り返してやった。
男は顔面から血を出しながら先ほど別の男が吹っ飛んでいった家に向かって吹っ飛んでいった。
「あ、頭が、くらくらすr、ぎゃーーーーーー!!!」
さっきの男を再度巻き込みながら。
そしてまたもや破壊音が響く。あれって本当に大丈夫なのか?倒壊しないだろうな?本当に行けるのか?
そんな事はともかく、俺はこっちに向かって飛ばしてきた奴に視線を向ける。
そこに居たのは
「紫、わざとだろ」
「あら、何の事でしょう?」
ととぼけている紫が悠然と立っていた。
あ、それとお前も傘で殴ったろ?
幽香の傘と同じくらい曲がってるぞ?
「お前らなあ、普通そんなことするか?」
「あら、それを言うならあなただってそうでしょ?」
「そうよ蔡。藍と一緒に蹴り飛ばすなんて」
「お前らなあ、物で殴っちゃあいかんって」
「そうだぞ」
そんなちょっとした会話をしていると左の方から聞き慣れた声が聞こえてきた。
この声は・・・
「蔡様~、やっと見つけましたよ~」
なぜか手に少し大きめの石を持っている亜紀の声だな。
ていうかどうして石を?殴り殺す気か?
「いえいえ、少しおばあさんのお手伝いを!?」
「あ」
と何かに躓いたのか、突然前に転びだす亜紀。
その拍子に手から石が離れ・・・
「あ、読めた」
幽香の方に居た男の頭に直撃し
「いってーーーーー!!!」
あまりの痛さにどっちに動いてるのかわからず幽香の方に行ってしまい
「あら、私もう心に決めた人がいるのよ」
とか言いながらその男を蹴り飛ばす幽香。そしてその蹴り飛ばされた男は付近に居た男ども全員を巻き込んで行き
「てめえ、良く見て飛んで来い!!」
「無茶言うな!!飛んでるのにs、ぎゃーーーーーーーーー!!!」
再度、しかも今度は2人を巻き込みながらまたも家に突っ込んで行った。
そして今までで一番大きな破壊音を出した後、大きな音を立てて、その家は倒壊した。
あの男達、大丈夫だろうか・・・
「あれはまずいぞ幽香」
「あら、てっきり行っても良いのかと」
「な訳無いだろうが」
「あれは少し問題ありかもしれんな」
「ですよね」
「「「お前も原因だ」」」
「え?」
と天然な亜紀に突っ込みを入れる俺と藍と紫。
言われた本人は理由が分かってないらしい。
まあそんな事は置いておいて
「とりあえず、ここから離れた方が良いな」
「そうですね」
「そうねえ」
そして俺達はこの場を後にしようとした時
「もし!」
後ろから声を掛けられた。声からして、爺さんかな?とりあえずお咎めか、もしくは妖怪め!とかの罵倒を覚悟しながらその爺さんと思われる人に恐る恐る全身を向けた。
「は、はい、なんでしょう」
振り向くと案の定爺さんだった。でもその顔はお咎めとか言う顔ではなく、むしろ何か頼みたい事があるといった顔をしていた。
「あの、いきなりですが頼みたい事が・・・」
どうやらその通りらしい。
「ここではなんですので、わしの家に来てください」
・
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・
あれから少し歩き、ようやくその爺さんの家らしい建物が見えてきた。
「おお、分かりやすい」
いかにも長が住んでますよと分かる家だった。
結構離れた所に立ててるんだな。
「こちらに」
そう言うと爺さんは扉を開け、近くの階段を上り二階に上がっていった。
俺もこんな家ほしいねえ。旅が終わった後に、だけど。
とりあえず俺達は爺さんについていった。
「おお」
二階に上がり部屋に入ると結構値打な物や昔からある物などが目に入った。
この家、結構前からあるのか?
これなんかどう見ても石槍だよな?
「ささ、どうぞお座りなさってください」
「あ、どうも」
そう言うと俺達は俺を一番前に、後は自由に座った。
「さて、先ほども申したのですがお話し、いや、頼みたいことがありまして・・・」
「はあ、なんですか?」
「実は・・・・」
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・
・
「と言う訳なのです」
「はあ、なるほどねえ」
ようはこういう事らしい。
最近よく出没する妖怪を退治してほしいとの事。
何でも何度か退治に行かせたのだがほとんど全滅してしまい、男どもが意気消沈。
そこでたまたま喧嘩してた俺らを見つけ、白羽の矢が俺らに立ったらしい。
俺は胡坐をかきながらどうするか考える。
「どうでしょうか、引き受けてもらえませんか?」
「う~ん・・・」
「どうなさいますか?蔡様」
「そうだなあ・・・」
まあ元からそのつもりだったしなあ。
「分かった、引き受けましょう」
「おお!ありがとうございます!!あなた方良識ある『妖怪』に頼んで正解でした!」
「そうですかそれはよかっ、え?」
今、この爺さん、何て言った?妖怪って言ったか?
「わ、分かるんですか!?」
「ほっほ、これでも人の善し悪しなど見分けなどは多少自身がありましてな。それに・・・」
「それに?」
「あんなに簡単に男を何人も吹き飛ばす事など、人間では出来ませんしのう!」
「・・・・」
俺は黙って幽香に顔を向ける。幽香は少しばつが悪そうに俺から顔を逸らした。
後で話し合いだな。
それはともかく
「俺らが妖怪と分かっていても、それでも頼むと、そう言うんですか?」
「ええ、そうです」
そう言うと真っ直ぐに俺に目を向ける爺さん。
・・・・真っ直ぐな眼だ。
「分かりました、その役目、引き受けましょう」
「蔡様!?」
「そうですか!ではよろしく頼みましたぞ!」
そう言うと俺に座りながらも頭を下げる爺さん。
「いえいえ、こちらも正体を知られてなおそう言う事を言ってもらえているんです、こちらこそありがとうございます」
そう言うと俺も頭を下げる。
「はっはっはっはっ!気になさらずとも良いですよ!!さあて!今日は飲みましょう!ささ1階へ!」
そう言うと爺さんは部屋から出て1階に下りて行った。
「そう言う訳だ、面倒かも知れんが、頼むぞ?」
「はあ・・・分かりましたよ」
「分かったわ」
そして全員で納得すると俺達も一階に下りていった。
さて、今日は楽しむか!
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・
「すう・・・すう・・・」
「・・・・・ん・・・・ん?」
あれ、何時の間に俺、寝ちまったんだ?・・・ああ、そうか、あの後飲んだんだったな、俺ら。
俺は起き上がると体に掛けてあった布団をのける。
まだ頭が少しぼうっとするが、まあ言ってる間に覚めるだろ。
それよりもだ。
「来たみたいだなあ」
「そうですね」
いきなり隣から声が掛かった。その声の主は
「お、珍しいな亜紀」
亜紀であった。こいつが一番に目を覚ますとはな。
まあそれはともかくだ。
「出るぞ」
「はい」
そう言うと俺と亜紀は皆を起こさないようにゆっくり歩き、扉を開け、家を出る。
そして家を出て、向かいの建物の上に視線を向けると
「妖怪って言うんだから醜い何かかなあと思ったけど、違ったな」
月を背景に屋根の上からこちらを見下す女が居た。
服装は黒と白、髪の毛は金色。身長は藍と同じくらいか。こういう場でなければ綺麗と言えるのだがなあ・・・
そんな呑気な事を考えているといきなり敵意が籠った声がこちらに向かって放たれた。
「あんたね!この妖気の正体は!」
「まあ正確には俺達、だけどな」
「そんな事はどうでも良いのよ!!」
聞いてきたのはそっちだろう、理不尽な奴。
「何で妖怪のあなたが人間の家で寝ているのよ!!」
「お、寝てるのは分かったんだ」
「うっさい!!」
「おいおい、もう少し落ち着こう、そうじゃないと早死にするぞ?」
そう言うとわざとらしく両手をあげる俺。
それを見た金髪女はさらに殺気を込めて怒鳴りつけてきた。
「あんた達のせいで私の大切な食料がとれなくなっちゃったじゃない!!」
「おいおい、人に責任押し付けるなって。それは弱いお前が悪いんだろう?」
「何ですって!!?」
「さ、蔡様」
あまりにも素直な意見を言ったせいか、今にも飛びかかって来そうな相手。
それを見て亜紀が少し不安そうな顔をしている。
「全く、あんな雑魚ごときに俺が、負けるかよ」
「ざ、雑魚ですって!?ふざけた事言ってーーー!!!許さない!!」
そう言うと俺に向かってかなりの速さで突っ込んでくる誰か。
俺はそれを何の心配も無く避ける。
「なっ!?」
「遅い遅い」
そして攻撃を外し隙が出来た誰かの腕を掴むと
「おいしょっと!」
「がっ!!」
思いっきり俺の方に引き寄せその体に掌底を放つ。
それを受けた女はごろごろ転がっていくが、すぐに受け身をとり、立ち上がる。
「ぐっ!げほっ、げほっ、はあ、はあ、今のは、効いたわっ!」
どうやらあの程度でかなり効いたらしい。かなり苦しそうな表情だ。
なんだ、この程度か・・・ん?
「そうだ!」
俺はある事を考えた・・・うむ、決定!
そう言うと片手で少しばかり印を切る。
「・・・・完了っと。さて、亜紀」
「は、はい!なんでしょうか!」
「頑張れ」
「・・・え?」
これくらいなら亜紀の実力把握にも使える、そう考えた俺は騒動で周りの者が起きないように印を切って術を施したのだ。というわけで
「頑張れ!」
「えーーーー!!?」
さあて、観戦観戦っと・・・