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二十四章 一歩進んでみようか

感想が欲しいが、それと同じくらいお金も欲しいという欲・・・

あと平和も欲しいですねえ

「・・・・ん」



・・・・・・・・・おはよう、皆・・・・いや、もしかしたらこんばんわなのかもな。

とりあえず、俺だ、蔡だ。

見てわかると思うが、今起きた所だ。

完全に頭は死んでいる。たぶん今歩いたら棒に当たるだろうな。

蔡も歩けば棒に直撃・・・痛そうだからちょっと嫌だな。

とりあえず起きよう。

俺は下半身に掛かっている布団をどけ、幽香の様子を見るために向かうために部屋を出る。

あ、その前に、体を伸ばそう。



「ん~~~~~!!・・・・はあ、すっきりした」



コキっとか音がしたがまあ気にしない。とりあえずすっきりした俺は改めて幽香の部屋に向かうことにした。



「蔡様」


「ん?」



部屋から出た時声が掛かって来た。

姿をその声のする方に視線を向けると服装も整っている藍が居た。

相変わらず早起きだな、藍は。



「おお、藍か、おはよう」


「はい、おはようございます」



そう言うと丁寧にお辞儀してくる藍。

堅いのか律義なの礼儀正しいのか・・・まあ藍らしい。



「どうかしたのか?」


「いえ、ただそろそろ起こしに行こうかと思いまして」


「そうなのか、そりゃあありがとうな」



そう言うともはや恒例と化した頭撫でを藍にしてあげる。



「ふふっ」



撫でられている藍は心地よさそうな顔をしている。

いつも思うんだがそんなに気持ちいいのだろうか。

・・・まああの藍がこんな顔してるんだ、気持ちいいんだろう。



「そうだ藍、幽香はどうだ?目が覚めたか?」


「ええ」



そうか、あいつ目を覚ましたのか!そりゃあ良かった!

しかしそんな俺に対して藍は少し困った顔をしている。

ん?何か問題でもあったのか?



「どうした藍。何か困った顔してるけど」


「ええ・・・目が覚めたのは良いんですが、心ここにあらずという状態で・・・」


「ああ・・・・」



なるほどな、何か納得だ。



「目が覚めてからというもの、ずっと空を眺めているだけでして・・・」


「飯は?ちゃんと食べているのか?」


「ええ、一応私が作ったものはすべて残さず食べきってます。ただ食べた後はまた・・・」



まあそうなる気持ちも分からんでもない。なんせ大切にしてた向日葵を燃やされたんだからな。相当傷は深いだろう。



「でもまあ、そのままにはしておけないな」


「ええ」



精神に大きく左右される妖怪。このままだといずれは大きな障害を来すことだろう。

それは友達として止めたいところだ。

あ、そうだ、あいつらは起きているのだろうか。



「そういえば紫達は?もう起きた後か?」


「亜紀はすでに起きており、今は外で昨日の処理の続きをしています。主に燃えた向日葵の処分など・・・」


「・・・そうか。なら紫は、って・・・お前の言い分だとまだ寝てるな?」


「その通りです」



かなり呆れた顔で述べる藍。相変わらずあいつに対してはかなり厳しい奴だ。

もう少し優しさを持って対応してやってほしいのだがなあ。主に俺の精神のためにも。



「どうします?叩き起こしますか?この鈍器で」



そう言うとどこから引っ張り出したのか、えげつなく先が尖った不自然な岩を藍が持っていた。

というかその石の形、明らかに隼さんとかと一緒に使ってた石槍の先端のですよね?

え、殺す気なのか、この子。

怖いわ!!

とりあえず俺は無言でその石を持っている藍の手を握るとその手から石を奪い取って、そして遠くに投げた。



「ああ!!暗殺道具四号が!!」


「何危険なもん仕込んでんだよ!!」


「え、何か問題でも?」


「大ありだ!!」



しれっとそんな事を言う藍。

しかも、何か可笑しなこと言った?私、とでも言いたそうな顔をしている。これは本格的に何とかしないと絶対血を見ることになるぞ。

しばらく俺の最優先課題だなあ。はあ、気が重い・・・まあともかくそれは置いておいてだ


「この件は後で話し合うとして、とりあえず幽香の部屋に行くぞ」


「分かりました」



俺と藍は幽香の部屋に向かった。

そして扉の前に着くと一度こんこんと扉を叩く。



「幽香~、入って良いか~?」



一度入って良いか確認をとる。

だが全く反応が帰ってこない。もしかして誰も居ないのか?それとも寝てるのか?はたまた脱走か?・・・わからんな。

まあ良い。ちょっと失礼かもしれないが、勝手に入らせてもらおう。

俺は扉を開け、中に入る。すると



「幽香、居るんなら少しは反応返せよなあ。誰も居ねえのかと思っただろう?」


「・・・・」



誰も居ないのかと思ったが幽香は居た。

ただ藍が言っていたように椅子に座ってずっと空を眺めている。

心ここにあらず、か。



「おい、幽香。何時までぼけっとしてるんだ?外の空気くらい吸いに行こうぜ?んなことばっかしてると老化が進んでおばあちゃんになるぜ?」


「・・・・・」


「ほら、行こうぜ?外も良いもんだぞ?」


「・・・・・良い」


「良いって、お前なあ「良いの」・・・」


「もう外には私の大切にしていたものは無い。だから外に出る必要はないわ」



ようやく口に出した言葉は拒否の意。もはや動きたくすらないようだ。

・・・結構病んでるなこれ。

まあ仕方ないっちゃあ仕方ないけど、だからと言って何時までも腐ってるのはいただけないな。

俺はもう少し話すことにした。



「藍」


「・・・・承知しました」



俺は藍の名を呼ぶと藍はその意を読みとったのか、お辞儀をして退室していった。

さて、これで2人っきりだ。

だけど何を話そうかなあ。よく考えれば俺と幽香ってそんなに仲が良かったわけではないしなあ。共通の話題も無いし。

・・・・あれ?前途多難?



「まあ良いか・・・さて幽香」


「・・・・」



名前を読んでも相変わらず無反応。

せめてさっきのように反応くらい返してくれても良いだろうに・・・まあ良いさ。

とりあえず何かお話をしようじゃないか。

俺は近くに合った椅子を幽香のそばに近づけるとそれに座った。



「あ~、何か話さないか?」


「・・・・・」



あれだな、物凄く失敗したな。出だし失敗。

俺は右足に肘を付き、その手に顎を乗せる。困ったなあ・・・俺は藍みたいに頭が良いわけじゃないしなあ、かと言って何か話題があるわけじゃないし。



「ぬあーーーーー!!どうしてこうも話題が無いんだーーーー!!」



オイこら今までの俺!!もっと情報を集めとけよ!!面白い話聞いとけよ!!

どんだけ話題性に欠けてんだ!!

俺はあまりの事に頭を掻き毟る。



「くう~~~~!これからはもっと世間の情報に耳を傾けることが必要だな・・・」


「・・・・・ふふっ」


「ん?」



今後のちょっとした対策を考えていた時、不意に幽香が少し笑った。



「なんだ幽香、何かおかしなことでもあったか?俺は現在進行形で悩んでんだ!だぁぁぁぁーーーー!!ちきしょうーーーー!!」


「ふふっ、面白いわね・・・少し笑えたわ」



そう言うと少しばかり明るい表情に戻った様子の幽香。



「ふっ、ようやく笑ったな、幽香」


「そうね、まだ一日しか立ってないけど、ようやくね」



そう言いながらも楽しそうな笑みを浮かべる幽香。

うん、こっちの方が方断然良いな。



「・・・外、行かないか?」


「・・・・・・」



俺が唐突にそう提案する。

何時までも空っぽになるよりも現実を見せて、進ませるための提案だ。

その提案を聞いた幽香は少し苦い顔を浮かべる。



「どうする?」


「・・・・」



すこし長い沈黙。そしてしばらくして漸く首を縦に振った。



「よし、なら行こうか」


「ええ」



椅子から立ち上がると俺達は部屋を後にした。

途中藍となぜか少しボロボロになっている紫と会ったが少し用事があるからここで待っててくれと伝え、家で待たすことにした。

で、外で出てきた俺達。



「ある意味綺麗になってるな」


「ええ・・・そうね」



目の前に広がるのは一面に広がっていた向日葵でなく、綺麗さっぱり無くなっている平地だった。



「悪い・・・これは俺の独断でやらせた」


「いえ、良いのよ・・・ほとんど燃えたり折れたりして命を失っていたのだから・・・」



そう言う幽香の顔はかなり苦痛を帯びた顔だった。



「・・・・この花ね、私のとって、唯一の家族だったのよ」



落ちてあった向日葵の花びらを拾いながら語り出す幽香。



「周りからは強すぎるがために避けられ、人間からはただ危険すぎるがために何もしてないのに何度も退治しに来られ、そしてそれらを殺し、そしてまたやってきてまた殺し、何度も繰り返したわ・・・そして次第に私は心が荒れていったわ」


「・・・・」


「でもね、そんな中、この子達だけは違ったの。この子達だけは・・・。花に水をあげればありがとうと言われ、何か面白いお話しがあればねえねえと声を掛けてきて楽しく話して・・・まあそれは私の能力のおかげでできるんだけどね」



そう言うと悲しい笑みを浮かべる幽香。

目を背けたくなるほど悲しい笑みだ・・・こっちまで悲しくなる。



「でもね、私にとってはたったそれだけで楽しかったわ。荒れた心は癒され、退屈もせず、毎日楽しかったわ」


「・・・・」


「今は見ての通りだけどね」



そう言うと平地と化した庭に視線を向け今度は自虐の笑みを浮かべる。

表情豊かだなとか言って和ませるなりしたかったが、今はそんなこと出来る気分じゃないな。



「ごめんなさいね、こんな話しちゃって」


「いや、全然問題ないさ」


「そう・・・さて、これからどうしようかしらね・・・」



そう言うと少し静かになる・・・そうだな、ちょっと提案してみるか



「なら、俺らと来ないか?」


「え?」



その提案を聞いた幽香はかなり驚いた表情をしている。

見ていて笑えるくらいにだ。



「俺らと一緒に居れば退屈はしないぜ?まあ平和過ぎて退屈にはなるかもだが・・・」


「で、でも私、あれだし・・・危険すぎるって言われているのよ?」


「ああ?んなもん藍に比べればまだましさ」



後で殺されるかもしれない発言だがな・・・



「でもでも!人数が多すぎると面倒でしょ!?」


「今さら増えた所で俺の精神的な部分に対して負担は変わらんよ。出来れば負担を共有できる奴が欲しいがな」


「でも!!」


「でもじゃない。お前が危険な奴なら、俺らは危険を通り越して魔王だぜ?」



そう言うと幽香の顔は驚きから徐々に泣き顔に変わっていく。



「・・・・本当に・・・いい、の?」


「無問題さ。人数増えれば楽しさが増すからな!だからさ・・・一緒に行こうや」



その言葉を言った瞬間幽香が胸に飛び込んできた。

俺はいきなりの事で少し戸惑ったが聞こえてくる泣き声に、やれやれ、と思い、抱きしめるのであった

そしてしばらくして、ようやくおさまったのか、俺から体を離す幽香。

その顔はまだ涙はあったがそれでもすっきりした顔をしていた。



「ありがとう、胸を貸してくれて」


「なあに、問題無しさ・・・・藍の事以外はな」



後が怖いぜ・・・



「ふふ・・・」


「ん?どうした?」


「いえ、愛されてるのね、あの娘から」


「・・・まあな」



最近じゃあ俺もあいつの事を好きになってきているがな。



「なら、私もそれに乗っかってみようかしら」


「え?」



そう言った瞬間、何かで口を塞がれた。すぐ目の前には幽香の顔。これって・・・まさか・・・



「ば、ばか!!何してんだ!!」


「あん、乱暴は駄目よ?」



口づけか!?俺はすぐに幽香を引き剥がす。



「あ、悪い・・・じゃなくて!!これはどういうことだ!!?」


「あら、そのままよ?」



しれっとそんな事を言う幽香。いや、そのままって、あんさん・・・



「あなたほど良い男なんて滅多なことではいないし、それに・・・」


「それに?」


「なかなか胸に来たわよ?色々とね」


「・・・・・」



とうとう口をあんぐりと開けて固まる俺。いや、これ、殺害事件で済むのだろうか、そもそもそれだけで済むと言う段階だろうか・・・もう生きていけない気がする・・・



「蔡・・・様?」


「・・・・あは、あはははは・・・」



噂をすれば藍とやら・・・すでに俺の後ろには般若様が居た。

隣には、またかこの人、とでも言いたそうな亜紀、そして、私の愛人はいつできるの!!何てある意味物騒な事を述べる紫が居た。



「蔡様?」


「は、はい!」


「今のは何でございましょうか?」



それはそれはもう、血の底とか言う物ではないほど低い声でした。

こ、これって死亡確定か!!?



「ゆ、幽香!!何とかしてくれ!!」


「・・・・」



そう言うとにやりと嫌な予感満載の笑みを浮かべる幽香。

そして



「熱い口づけありがとう。体が火照っちゃうわあ」


「!!!」


「・・・・・・」



・・・・・・・・・・・・終わったね。俺は首をゆっくり、ゆ~っくりと藍に向ける。するとそこには



「・・・・・」



涙目で俺を睨んでくる藍が居た。

や、ちょっと待てよ?この展開って、まさか



「私、こう見えて情熱的なのよ?だからもっと深い仲じゃないと・・・奪っちゃうわよ?」


「おいーーーーー!!?」


「!?」



なんて爆弾発言を!!

見ろ!藍があまりの事に口をパクパクさせて驚いてるじゃないか!

紫と亜紀は、読めたわ、とか読めましたね、とか言ってるし!!

ていうか助けろ!!



「まあ・・どれほど深い関係でも、奪って見せるけどね・・・」



何やらぼそっと幽香が言った気がするけど!!そんなことにかまってられない!!

逃げないと!

俺は走って逃げようとした!しかし!!



「・・・」


「・・・・・・」



なぜか顔が赤い藍に首根っこをガシと掴まれてしまい逃げれなくなってしまった!!



「ええっと、あの、これは?」


「そ、そうですね、あの日以来、全くそう言うことしてませんし、そ、その、仲を深めると言った目的でするというのもありですよね!」



と物凄い速さで喋る藍。いや、落ち着いて、な?



「と、と言う訳で、部屋を借りるぞ!!大丈夫!!掃除はしておく!!では蔡様!!行きましょう!!!!」


「え、ちょ、離して、離せ!離せーーーーー!!!」



ああ、明日、歩けるのだろうか・・・・

「ふふっ、楽しいわね、蔡って」


「そうですね」



あれほど楽しい男はそうは居ないわね



「で、どこまでが本気なの?」



といきなり質問をぶつけてくる紫。



「あら?何が?」



分かってはいるがあえてとぼける。



「さっきの発言よ」



と何やら女の高い声が響く私の家を見る紫。

あらあら、これはこってりしぼられてるわね。

さて、質問の返答は・・・



「あら、私、嘘はつかないわよ?」


「・・・」


「だから・・・略奪する気でいるわ」



まあそんなことしなくても世の中一夫多妻だから問題はないけど。



「そう・・・」


「そう言うあなたは?」


「へ?わ、私!?」


「そうよ」



聞くなり大慌てな様子の紫。笑えるわ。



「わわたしは、べべべつに!」


「はいはい、素直じゃないのも問題ね」


「だ、誰が素直じゃないよ!!私は至って友達として接しているわ!!」


「ふう~ん?」



これはまたおもしろい物を見つけたわね・・・



「ふふっ」


「な、何よ」


「いいえ、ただ・・・」



彼の言う通り、楽しい日々を送れるわね



「ただ、なによ」


「いいえ。ともかくしばらくお話しでもしましょう?あなたも」


「ええ?私ですか!?」



いきなり振られたものだから慌てる亜紀と言う子。

かなり慌てている。



「そうよ。どうせあれが終わるまでしばらく時間が掛かるし」



と未だに女の高い声が響く自分の家を指差す。



「だから、これから一緒に旅をする者同士、親交を深めることも目的に。どう?」


「・・・・・わ、わかったわ」


「は、はい」


「ふふっ、なら何から話しましょうか」



これからなるであろう楽しい旅の未来に心躍らせながら、あれが終わるまで私達はお話しをするのであった・・・







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