十七章 大人ってどういうもんなんだろうな・・・
なにやら今さら感がたっぷりなのですが、どういうことでしょうね、本当に。
まあでも、とりあえず駄作復活ですね
「・・・・・」
「・・・・・」
よう、皆。久しぶりな人は久しぶり、初めての人は初めまして。
俺だ、蔡だ。
さて、今俺は地面に尻持ちついてる金髪美女の誰かと無言の時を過ごしているんだ。
理由?
会話するにもどこから会話すれば良いのか分からんからだ。現に相手の方も何喋れば良いのか分からず苦笑いの表情を浮かべてるしな。
さて、どう切り出せばいいんやら・・・・。
「ええと・・・とりあえず、自己紹介からで良いのかしら?」
「あ、ああ、そうだな」
俺が了承すると謎の美人は服に着いた汚れを手で払いながら立ち上がった。
そして改めて俺の方に振り返るとさっきの気まずい雰囲気が真面目な雰囲気に一変した。
とは言っても俺はあまり真面目じゃないがな。
「では改めまして・・・・初めまして蔡さん。私の名は八雲紫と申します。以後お見知りおきを」
そう言うと軽くお辞儀をする八雲という女性。
何と言うか、綺麗なお辞儀だな。まあそんな事はともかくだ、俺も名乗っておこう。
「おr・・・じゃなくって、私は蔡と申します。こちらこそ、お見知りおきを」
そう言うと俺も軽くお辞儀をする。
「あら、私がなぜ初対面のあなたの名を知っているのか気にならないのですか?」
「正直害が無ければどうでも良いです」
「そうですか」
その言葉を機にまた無言の雰囲気が完成してしまった・・・
さて、これからどうしようか。と言っても何か会話する必要もあるわけではないし、かと言ってこのまま藍達の元に戻るって言うのもあれだし・・・
「ふむ・・・」
どうしようか・・・・ちらっと八雲の顔を見てみると、顎に手を何やら考え込んでいる様子。
うむ、どうしよう。
俺は腕を組んでどうしようかもう一度考えようとした時、茂みの向こうから誰かが俺を呼ぶ声が聞こえてきた。
「蔡様~?どこですか~」
「ん?」
この声は・・・藍か?あいつには審判を任せて・・・ああ、そう言うことか。
終わったんだな、一騎打ちが。
「ら~ん、こっちだ~」
そう言うと、こっちに向かってくる足音。
さすが藍だ。あの声だけで場所が分かるとは・・・って、誰でも出来ることか。
「ああ、蔡様、こんなところに・・・・」
茂みから現れた藍は俺に喋りかけるも最後まで続く事は無く、代わりに八雲の方に視線が行った。敵意と警戒心をたっぷり込めて。
「こら藍、初対面の人にいきなりそんなことしちゃ駄目だ」
「申し訳ありません・・・しかし何やら胡散臭いと言いますか、信用ならないと言いますか・・・」
「・・・・」
しゅんとなりながらも凄く酷い事を言う藍。
まあそれはそうだが、言葉にしちゃいかん。それはさすがに失礼だ。
ついでにそんな事を言われた八雲の顔は顔を引き攣らせながら笑っている。
お~お~、こりゃあ喧嘩でも起きそうな雰囲気だな。
「あなたいきなり失礼な事を言うのね」
「ふん、事実を述べたまでだ。それの何が悪いと言うんだ?」
「あらあら、もし事実でも言って良い事と悪い事というものがあるでしょう?それが分からないなんて、あなたって能無しなのねぇ。親の顔が見てみたいわ」
「ほう・・・・」
あ~あ、俺、し~らね。俺は藍と八雲から少し離れる。どう考えても喧嘩勃発するだろうからな。巻き込まれたくは無いぜ。
「母上を侮辱すると・・・貴様、死にたいのか?」
「あらやだごめんなさいね?私にはまだまだしたい事とか一杯あるから自殺志願者では無いわ。むしろあなたの方こそ、死にたいの?」
「貴様っ!」
よくよく考えればここで喧嘩なんてしようものなら神奈子に怒られんの俺じゃないか。
それは嫌だな。
そう考えた俺は傍観をやめて2人を止めることにした。
「はいはい、両者そこまでだ」
「邪魔しないでください蔡様!!私はこの愚かな能無しを殺さねば気が済みません!!!」
「はいはい、とにかく落ちつけ、な?八雲、あんたも大人ならそれくらい流せよ」
「あら、私は別に怒っていませんことよ?ただそこの駄九尾があまりにも可哀想だから少しお勉強がてらに半殺しにしてあげようかと思いまして」
嘘付け、思いっきり怒ってたろうが。
それに怒ってないなら武力行使はするなよおい。全く・・・短気すぎるぞ。
「とにかく!!そこをどいてください!!私は気が気ではありません!!」
「あらあら、そんなに言うなら掛かってらっしゃいな。いくらでも半殺しにしてあげるわ」
「その言葉そっくりそのまま返す!!」
「やれるもんならやってみなさいよ!!」
「何を!!」
「何よ!!」
「やかましいわ!!」
見かねた俺は2人の頭に拳骨を落とす。
「「いだっ!」」
「大の大人が何喧嘩してんだよ!」
「そいつが悪いんです!!私の母上を侮辱したから!!!」
「そっちこそいきなり初対面の人に胡散臭いなんて!!常識的にどうなのよ!!?」
「ええい!!やかましいわ!!!」
「「いだぅ!!!」」
さっきよりも力を込めて再度拳骨を落とす。
「全く!しつこい!!」
「「ご、ごめんなさい」」
はあ、気が重たくなる・・・
「とりあえず、ほらお互い謝るんだ!」
「で、ですが・・」
「ですがもかすがも無い!八雲!お前もだ!」
「で、でも・・・」
「ええい!!でももくそも無い!!さっさとしないか!!それとももう一発必要なのか!?ああ!?」
「「申し訳ありませんでした」」
どうやらよほど痛かったようだ。2人は素直に頭を下げた・・・まだ少し睨みあってるが。
「ったく・・・で、藍、何か用があったんじゃないのか?」
「え?・・・あ、そうでした!」
今まで忘れていたのか・・・・何してるんだよ藍。
「2人の決着が付きました!」
「そうか。で、勝利の女神はどっちに微笑んだ?」
「神奈子様です!」
「そうか」
まあ戦慣れしてるんだ。勝って当たり前か。
「さて、俺は神奈子達の元に帰るか。何か疲れたし」
「す、すみません」
またしゅんとなる藍。さすがに少し可哀想なので頭を撫でてやることにした。
「・・・えへへ」
どうやら気にいった様子。しかしえへへとは・・・普段の藍からは考えられん言葉だ。まあ良いや。俺は藍の頭を撫でながら八雲の方を見る。
するとなにやらまた考え込んでいる様子。
「なんだ?」
「いえ・・・あなた達って、一体どうゆう関係なのかと思って」
「関係?」
「ええ」
ふむ・・・・・・・・・・
「良く分からんな」
「そう」
まあ少なくとも仲良しであることは間違いは無い。まあそれはともかく。
「お前はどうする?」
「え?」
「いや、俺達はこれから神奈子達の所に戻るけど、お前はどうするって聞いてるんだ」
「ああ、そうねぇ・・」
少し考える八雲。
「少し用事があるから遠慮しますわ」
「そうか。じゃあ俺達はもう行くわ」
「ええ」
そう言うと俺は藍の手を握り神奈子達の元に向かうことにした。
「ふふ、これからが楽しみだわ・・・」
何やら嫌な予感もしながらだが・・・
・・・・冷えてきたなあ・・・・