執事、宴会に行く 後編
改訂済み
ううむ…
皆様こんにちは。
今絶賛歩きながら八つ当たりを受けている、アレス・スカーレットです。
なぜなのでしょう、咲夜と一緒に居ただけなのにレミリアにものすごく怒られています、ええ、ほんとに。
今も隣でお嬢様姉妹と従者がギャーギャー叫んでおります。
理不尽です、意味不です、無茶苦茶です。
なんで咲夜と…
とか
そもそも私が主で…
とか思いっきり言われているのですよ。
咲夜は咲夜で
リードですね
とか
これに関しては主従関係なんて…
とかお嬢様やフラン様に茶々を入れるものだから、さらに大変なんですよ…それでなくてもあのクソ隙間のみならず、あの亡霊、挙げ句には狐に花妖怪までもが参加する宴会のおかげで最低なのに…
「はあ・・・」
鬱ですね。たぶんというか確実に厄日なのでしょうね、それも特大級の大厄日。Gも目じゃないほどに。
え? それよりなんで奴らが苦手なのかって?…その質問は間違ってますよ。
正確には『苦手』ではなく『大嫌い』ですよ。さらに正確にいうと『憎い』です。殺したいほどに…
理由は…私の大切な、大切な弟を…家族を奪ったからですよ。ええ、物理的に、命を。しかもご丁寧に私の目の前で、楽しそうに笑いながら。
それ以来私はあいつらを避けてきました。二度と見たくないから。この幻想郷に来る前も、来てからも…。
今回行く気になったのは、久々にどのような顔をするか拝見するためですよ。まあ脅されてというのもありますがね。
あとは…レミリアに説明無しで簡単に教えるためですかね。なぜあいつらを嫌っているかを。
正直言って今回宴会に参加する人には申し訳ないと思っているのですよ。楽しいはずの宴会が一部楽しくなくなるんですから…
とりあえず、この話は終わりにして、さっさと行きましょうか。それと、レミリア、咲夜、うるさい。
執事達、進行中…
階段を上がり、徐々にどんちゃん騒ぎしている声が聞こえてきたかと思うとあっという間に宴会の会場、重要な施設と言える神社、愽麗神社に着いた。
着いた私達はとりあえず空いている場所を探すとそこに持参したブルーシートを広げると早速持参したワインとお酒を並べ、酒飲みの体制に入る。
そして私は今回のメンバーを確認するため、周囲を見渡す。
本日のメンバーは
霊夢
魔理沙
アリス
パチュリー
小悪魔
八雲紫と藍
幽々子と庭師
幽香
そして我らがレミリアと咲夜と、そして私、ですか…。
他にもいくつか天狗や河童、果てにはどこかで近辺の妖精など。天狗や河童はともかく、妖精はまずいでしょ妖精は。
でもまあ今のところ悪戯はしてないみたいですし、何とかなってますかね。人数的には2、30はいるのですが小規模なのですよね、この幻想卿では。
そんな折、白黒な娘と一緒に魔道書片手にお酒を飲んでいる紫色の独特な服を着た方がいた。パチュリー様だ。ここに来ていたのですか。そんなパチュリー様の傍らには小悪魔も。
おい小悪魔、お前仕事はどうした。
まあそんなことは後で処罰を下すとして、とりあえずメンバーの確認も終えたことですし、少しばかり友達を紹介をしておきましょう。
まずはこの貧相な神社の貪欲なる紅白巫女、博麗霊夢。ほら、あそこで天狗を飲み負かしている豪快な黒髪ロングの人間です。
異変解決のスペシャリストで、小さいことから大きいことまで何でも解決してくれるあるい意味守護神な方です。
そんな彼女との出会いは、あの憎き妖怪、八雲の紹介からでした。
まだ幻想郷に来て間もない頃、たまたま散策しようとそこらを歩き回っていたところにこの神社が見え、そこで運悪く八雲に会ってしまったわけです。そこで紹介されたのが、あの子、霊夢でした。まあ初めの頃はそれはもう警備犬のごとく警戒されまくりでしたよ。
会えば、退治してやる! とか、消し飛べ! とか、物騒な単語のオンパレード。
まあでも、そこはそれで何とか耐え忍び、色々誤解を解くのに四苦八苦しながら友好関係を気づき、それから時々遊びに来たりして今に至るわけですよ。
次に紹介するのは…ああ、あのウェーーーーい!! 私こそ最強だぜーーーー!! なんて酔って叫んでいる金髪ロングヘアーの娘。
彼女の名は魔理沙。魔法の森に住む魔女に一人です。あ、訂正、普通の魔法使いでした。
そんな彼女の出会いは…ちょっと激しかったですね。
まず霧雨の親父さんと激しく喧嘩してた時でしたね。霖之助さんは親父さんを、私は魔理沙を抑え、なんとか話の場を作り直したのですが…まあ頑固の子は頑固なのか、一瞬にして再発、結果魔理沙は家を出ることになり、その時に私はため息をつきながら物件探しを手伝ったのです。で、その時の親切さが実を成したのでしょうか、今の友達のような関係になったわけですよ。
最後に紹介するのは…ああ、あれあれ、あそこでお酒を勧めてくる魔理沙を嫌そうな顔で見る金髪ショートヘアーの子。
彼女との出会いは魔法の森散策時でした。その日お嬢様がきのこ入りシチューが食べたいなんて抜かすものですから、たまには悪戯をと魔法の森に生えていると言われる激辛マッシュルームを探していた時でした。たまたまアリスも何かのきのこを探していたらしく、偶然出会い少し会話、そして意気投合すると彼女の部屋でしばらく話し込み、友好関係を築いたのですよ。
さて、一通り…ああ、故意的に忘れてました、あの古参集団…あそこからこちらをチラチラと視線を送ってくる八雲や亡霊などの出会いについてはいずれ話しましょう。気がつけば…ですが。
まあとりあえず、来てしまったものは仕方ないですし、礼儀上の挨拶くらいはしておきましょう。
私は立ち上がり、その古参集団の元に向かう。その途中進路上にいた天狗などのその他メンバーが道を開けてくれましたが何故怯えた表情で開けてくれるのでしょうか? そんな怖い顔してます? 私。
「本日はお招きいただき、ありがとうございます八雲様」
「!?」
まさか自分たちの所に来るとは思っていなかったのか、何故か物凄く驚いた顔をしている
「はて、どうかなさいましたか? 八雲様」
「い、いえ、何でもないわ」
「そうですか、それは良かったです。あなたのような大妖様に何かご無礼があっては私自身怖くて眠れなくなってしまいますから」
「そ、そう」
「他の方々もお元気そうで何よりです」
あまりにも他人な言い方に悲しげな表情を浮かべる憎く、懐かしい面々。
ふん、そんな顔を出されても知ったことか。
私はその顔を見続けることに苛立ちを感じ、さっさと退散するため、話を終わらせようと話を再開する。
「それでは私はこれで。今日はお互い楽しみましょう。では」
「あ…」
一方的に喋り、隙を与えず戻ろうとする。その時八雲が手を伸ばし、引き止めようかとしたようだが、結局諦めたようだ。
まあ止められてもさっさと帰らせてもらうがな。
「あなたは…」
しかしそんな私の思惑は聞きたくもない声によって思わぬ邪魔が入ってしまい、私は忌々しい、と内心舌打ちをしながら八雲の方に向く。
「私が、なんでございますかな? 出来れば手っ取り早く終えてくれますとありがたいのですが? 妹達も待っていますし」
まくし立てるように喋り、暗に用があるならさっさとしろ、と伝える。
それを正しく受け取った様子の八雲は顔を下げると小さく、それは蚊の如くギリギリ聞こえる声で私に聞いてきた。
あなたは、まだ…私達のせいだと、思っているの?
と…
私はその今まで『幾度』と繰り返された質問に対し、幾度と言ってきた答えを返す。
あの状況下であなた達以外の誰が犯人になるのでしょうかね?
その答えを聞いた彼女は顔を上げず、下に俯いたまま何も喋らなくなってしまった。
私はもう喋る事なんてないな、と結論を出し軽く頭を下げると今度こそその場から離れた。
そしてお嬢様達の元へ戻ると何やら苦いような、苦しげなような…ようはなんとも言いにくい表情でお嬢様は私を見つめてくる。どうやら先ほどの会話を見られていたようだ。
「何か?」
「いいえ…ただどうしてあそこまであなたはあいつらを…」
「ふむ、それについては前にも言ったでしょう? 話せない、と」
「それは…たとえ大切な家族にでも?」
家族…そう告げるお嬢様の顔は、とても哀しげに、まるで大切な者に裏切られたかのような、見るに耐え難い表情を浮かべており、瞳は今にも雫が溢れそうなほどに、溢れかえっている。
私はそれを見て顔を背けると無言を貫き、宴会が終了するまで黙り続けた。
ごめん、レミィ…