四章 さて、どの人が噂の方かな?
パネエ、目覚めパネエ・・・とりあえず9時に予約して寝よ・・・
昨日のうちに少し書いておいたものを完全に書ききったものなので大丈夫です・・・では・・・
遥か西の大陸・殷
日にち・時間・曜日不明
朝
いや~、何だここ見たこと無い物ばっかりだな~。お、よう皆、蔡だ。
今現在俺は噂の西の大陸、殷ってところに居るんだ。え?どうやって来たか?そんなの簡単さ、空。え?見送りはしてもらったのかって?もちろんさ。ちゃんと見送ってもらった。現に俺の肩に担いでる袋の中には見送りの時にもらった餞別の食物が入ってるし。まあそれはともかくして。
蔡「弱った、全く話が分からねえ」
そう、まずはこれが問題だ。さっきから訳の分からない言語がガンガン飛び交っている。
それになにやら妖気を感じるし。
蔡「・・・さて、どうしたものか」
まあ妖気はとりあえず、いきなり詰んでしまった。誰か通訳を。
???「・・・もし」
蔡「ん?」
誰だ肩を叩くのは。後ろを振り向いてみると
蔡「!」
何やら深く帽子を被り、顔を布か何かで隠し、見たことも無い服を着た誰かが居た。
・・・こいつか、あの妖気の源は。物凄く妖気が濃いが・・・まあそれはともかく、何か用事でもあるみたいだし、とりあえず喋るか。
蔡「何か?」
???「いえ、用と言う程の用ではありませんが、何やら困っているみたいなので」
ん?顔に出てたか。
蔡「ええ、まあ。ここに来たのは初めてなもので」
???「そうなのですか」
改めて声を聞くとなかなか綺麗な声じゃないか。女か。
???「よろしければどこかご案内しましょうか?」
蔡「え?」
それはこっちとしてもありがたい話だが・・・
蔡「それは嬉しい話ですが、いきなり初対面なのによろしいので?」
???「ええ、こちらとしても早くこの場を離れたいので」
そう言うと彼女(?)は俺の手を掴むと急に走り出した。すると突然後ろから怒鳴り声らしいものが聞こえてきた。
(男達が喋ってるのはあくまで中国語です)
男1「いたぞーーー!!!」
男2「なんだなんだ?」
男3「何事だよ」
女性(?)「ちっ、バレたか!誰かは存じませんが走ってください!!」
蔡「え!?俺も!?」
男「あいつも仲間だーー!!」
蔡「・・・何となくだが勘違いされた気が」
女性(?)「その勘は合ってますよ!ほら、早く!!」
どうやら間違えてはいなかったらしい。まあそれはともかく、さっさと逃げるか。
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とりあえず何とか奴らから逃げ切り、たまたまあった空家に逃げ込み、休むことにした。
女性(?)「はあ、はあ、はあ・・・」
蔡「大丈夫?」
女性(?)「は、はい・・・それにしても、あれだけ、速く走ったのに、息を切らさないとは・・・やはりあなたは・・・」
蔡「・・・」
ふむ、どうやら向こうにもバレていたらしい。なら隠すこともないか。
蔡「・・・ああ、あんたの言う通りさ、俺は妖怪、ではないし、神様、でもないし・・・まあ人間でないのは確かだな」
女性(?)「そうですか・・・では私も自己紹介を」
と帽子と顔を隠してた布を取る。そこには・・・
蔡「なるほどな、あんたが噂の・・・」
そこには噂に違わぬ綺麗な顔立ちをし、頭には何かの動物の耳、そして尻尾が九本ある女性が居た。
???「私は九尾の玉藻前と言う者だ。と言っても、昨日までは、だがな」
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あれから玉藻前に今までの経緯を教えてもらった。
なんでも昔から人間の生活に興味があったらしく、人間の姿になり、人間の生活をしていたらしい。そんなある日、家に皇帝が直接やって来たんだそうだ。その来た理由がお前の美貌に惚れた、我が妻になれというこであった。どうやらその時にはすでに彼女の美貌はかなり広い範囲で噂になっていたらしく、それを皇帝が聞きつけて来たらしい。で、肝心の彼女は別に結ばれる気はなかったし、彼の体や顔が好みではなかったのだが、まあ別に良いか、これも経験かという訳でそれを了承。それからは一方的に愛され、体も重ね、幸せではないが以前よりも豪華な生活が始まった。しかしそれも長くは続かなかった。まず初めに政治が疎かになり、住民の税が増えた。そして次に犯罪が物凄い勢いで発生し始めた。で、これ以上はまずい(すでに手遅れな感じもするが)と感じた住民達が今の皇帝をどうにかしろという運動が各地で頻繁に起きた。それを聞いた政府のお偉いさん達はがもう無視できん!ということで今は亡き皇帝の死刑を決定した。それに伴い妃であった彼女も死刑が決定したが、こんな愛してもない男と一緒に死ぬなんてまっぴらごめんだとのことで逃走。で、今に至るそうだ。
え?話長い?仕方ないだろう、玉藻前がご丁寧にも全部語ってくれたんだから。
蔡「まあまずは長い話を語ってくれてどうも」
玉藻前「何、気にするな」
しかし、いくらか短縮してるとは言え、結構凄い生活してたんだな。
蔡「しかしよくそんな生活できたな」
玉藻前「今考えてみたらそうだな」
今考えてかよ。
蔡「それはそうと、あんたいきなり喋り方変わったな」
玉藻前「ん、何、別にいつも通りで良いかと思ってな。後は妖気が弱いし」
蔡「妖気が弱い?」
玉藻前「ああ」
弱い、弱い、弱い・・・あ、あれか。札の効力か。
蔡「すまんすまん、これのせいだな」
玉藻前「ん?それは?」
蔡「一応力を抑えるための札。製作者は俺。で、これを燃やすと・・・」
と言い妖気を使い燃やす。すると
玉藻前「!?」
彼女の顔色が一瞬で青色に変わる。
蔡「念のためバレないように抑えてたんだが・・・大丈夫?」
玉藻前「あ、ああ、心配するな」
本当に大丈夫か?
玉藻前「一応聞いておくが、お前は何年生きているのだ?」
蔡「あ~~・・・・・・ざっと見積もって人間が生まれる前からだな」
玉藻前「・・・」
唖然とした顔だ。とりあえず彼女が動くまで待とう。
玉藻前「・・・は!?」
お、思いの他早かったな、なんてのんびりな事を考えているといきなり
玉藻前「申し訳ございません!!!」
と土下座をされた。なぜ?
蔡「あ、その、どうした?」
玉藻前「いえ、まさか年上だとは思わなかったもので!」
ん?どういうこと?
蔡「どういうこと?」
玉藻前「はい、生前、母から厳しく育て上げられ、色々教えてもらったもので、その中に年上は敬えと言う教えがありまして。それで・・・」
ああ、なるほどね。それでか。
蔡「まあ、あんまり気にしなくて良いからね?」
玉藻前「いえ、そうはいきません!!」
・・・礼儀正しいのは良いが、なかなか頑固だな。
蔡「・・・まあなんでも良いや・・・とりあえず話をだいぶ戻すけど、これからどうするんだ?」
玉藻前「これから、ですか」
蔡「ああ」
正直彼女の事はこの大陸では知らない者はいない程有名らしい。ならもうこの大陸に彼女の場所は無いだろう。このままいけば彼女は間違いなく殺される。
玉藻前「・・・何も思いつきません」
蔡「まあそうだわな」
そりゃあ急にどうこう出来るわけでもないし、何も思いつかなくて当り前だ。
蔡「さて、どうしたものか・・・」
このままここに居たらまあまずバレるだろうし、かと言って迂闊には動けない。なら・・・
蔡「飛ぶか」
玉藻前「へ?」
蔡「飛ぶか」
なにやら聞きそびれたようなのでもう一度言う。
玉藻前「む、無茶ですよ!」
蔡「なんでさ」
玉藻前「だって・・・」
とちょっと怯えた顔。あ、なんか可愛い。
玉藻前「空にはとても恐ろしい龍神と言う者がいるそうではないですか!!」
蔡「・・・は?」
龍神?んなもんいたの?
蔡「え、どこに?」
玉藻前「だから空ですよ!!」
と涙目の玉藻前。あ、また可愛い。と、それより誤解を正さねば。
蔡「でも俺、空から来たけど、何にも無かったぞ?」
玉藻前「え?」
蔡「だから、何にもいなかったって」
玉藻前「え、そ、そうだったんですか?」
そりゃそうだよ。何が悲しくてあんな遅い船に乗らなくちゃならんのだ。
玉藻前「で、でも!空には雷を自由に使えて何人たりとも空に寄せ付けないと・・・」
蔡「それが本当なら俺はここに居ない」
玉藻前「・・・」
どうやらまだ信用しきれてないらしい。なら・・・
蔡「なら行こう」
玉藻前「え?」
彼女の腕を掴むと空に向かって一気に飛びあがる。
蔡「どうせ飛んで逃げようと考えてたんだ、ちょうど良いや」
玉藻前「え、何言ってるんですか!?」
蔡「だってその方が楽じゃないか」
玉藻前「それは・・・そうですが」
蔡「ああ、それと、この大陸を出るんだし、名前を変えよう」
玉藻前「名前、ですか?」
と空に上がりながら提案する。
蔡「ああ、その名前だといつか正体がバレちまうからな」
玉藻前「それも確かに・・・」
蔡「な?」
玉藻前「では何て言う名前に?」
蔡「・・・・・・・藍」
玉藻前「藍、ですか。理由は?」
蔡「なんかしっくりくる」
藍?「はあ・・・」
蔡「嫌なら良いんだぞ?」
藍?「い、いえ!これで構いません!!」
蔡「ならこれからお前は藍だ!」
藍「はい!!」
こうして新たな仲間が出来た。さて、さっさと行くか。
眠い・・・