刻一刻と…
どうせなら全員分を出したほうが区切りいいと思い投稿、いや連続すいません…
やばい、悪い意味ですごい文が出来た。けどまあ今日の分の中では多少ましでしょう、多分。
「疲れたよ~」
突然麩が開いて登場したと思えば疲れた言いながら縁側で寝転んでいる俺の腹の上にどーんと飛び乗ってくる幽々子。顔を俺の胸にスリスリしている。ついでに飛び乗られた時俺が蛙の声みたいなものを発したのは言うまでもない。
「ゆ、幽々子よ、確かに俺は男だし、丈夫だ。でもな、優しく乗っかりなさい、優しく…」
「甘えるなら気にしちゃ駄目だって紫は言ってたわよ?」
ゆ、紫、貴様ぁ~…
ちょっとした殺意が湧いたのはいつものこと。しかしあれだな幽々子
「と、とりあえず降りてくれるかな?」
「あ、ごめんなさい、降りるわn」
ね、と続く間に言葉は突然途切れてしまった。
「ごほっ、ごほっ、ごほっ!」
「ゆ、幽々子!?」
突如咳き込み始めてしまった幽々子は俺の上から落ちる形で床に倒れこむと己の手で喉を掴み苦しそうに咳をし続ける。
「ちっ、『また』か!! 妖忌、藍、晴明!!」
「何事か!」
「またですか!!」
「病魔とは厄介なものじゃな!」
俺は未だ苦しそうに咳き込む幽々子を抱え上げるとこれ以上悪化させないため藍が素早く引いてくれた布団の上に寝かせる。だが収まる気配はない。
「ちっ、晴明、出来る限りで良いから応急処置を!!」
「できる限りやってみる!」
「儂は医者を!!」
「頼む!! 藍、晴明の補佐を!」
「承知!」
くそっ、こんな時に紫はどこにいやがるんだ!!
俺は紫に対して理不尽とも言える恨み言を心で漏らしながらも、医者が来て幽々子の発作が収まることをただ待ち続けるしかなかった…
「これで『今回』も一応収まりましたが…油断は出来ません」
幽々子の発作が発生して少し、全速力で妖忌が医者を連れてきてくれたおかげで発作も収まり、今は先程と打って変わって実に穏やかな表情で眠っている。
しかしそんな幽々子の表情とは裏腹に、この場で感じる空気はとても穏やかではなかった。
俺も藍も紫も亜紀も流美亜も爺さんも…誰一人喜ぶ者は居なかった。何故か…それはこういうことが既に何度も起きているからだ。
初めは六年前。まだ少し都との関係が硬かった頃、たまたま俺と幽々子が買い物をしに都に出かけている時だった。突然咳き込み地面に倒れてしまったのだ。俺はあまりの事に幽々子を抱え上げ慌てて医者の所に連れて行き、治療を受けさせたのだ。
しかし結果は散々だった。
確かに発作は収まった。まるで初めから何もなかったかのように。しかし、原因は不明、特に何かあるわけでもなく、ただの風邪では? という結論にいたり渋々ながらも家に帰っていった。
だが、まだ終わっていなかった。
その日からしばらく、自宅で幽々子は発作を起こしたのだ。今度は初めの頃より酷く、苦しそうに。
その時は紫の力により抑えられはしたものの、また数日経ちまた発作…さすがにこれは異常だと感じた俺らは医者という医者、挙句には頼れる陰陽師全てに診てもらいに行った。しかし結果は…
原因不明
どこに行ってもその言葉しか返ってこなかった。晴明に聞いても
すまぬ、私にも分からない
この言葉しか返ってこなかった。
そして原因が分からないまま時が過ぎ、六年の歳月のうちに幽々子はやせ細ってきてしまっていた。
前は美しく白かった肌も、病人死人と言っても過言ではない程までに白くなり、腕も枝のように細くなってしまっている。
そして最近では食した物を吐き出す始末。三ヶ月前に診せた医者の診察によると未だに原因は分からないとのこと。だがこれだけは明確な事実として伝えられた。
今のままでは、持って一年、早ければ半年以内。御覚悟を
その言葉を聞いた時の俺達は酷かった。藍はあまりにも酷い事実に無気力になり、亜紀も流美亜も、あの幽香ですら誰から見ても分かる程元気が無くなっていた。
だが一際酷かったのはやはり…紫と爺さんだった。
爺さんはそんな戯言をと半狂乱に陥りながら医者を殺そうと飛びかかり、それを俺はなんとか沈めた。
紫は…無表情だった。心がどこかにすっぽ抜けたと言っても過言ではないくらいに、無表情だった。歩けばどこかの壁にぶつかり、何もないところで躓き転び、外に出てくるといえば帰ってきたとき服が敵の血で真紅に染まって帰ってきて…見るも悲惨だった。
だが最近は周りが頑張って前のように戻ってきている影響もあってか、頑張ろうと努力しているみたいで血まみれになることも転けることもぶつかることもな少なくなった。
だがそれでも、深夜紫の部屋から泣き声が聞こえてくる辺り、完全まで程遠そうだが。
俺? 俺は簡単、心に穴が空いた。冗談抜きに。紫ほどではないけどドジするようになったし。
だがいつまでも落ち込んでる暇はないからな、今は幽々子を救う方法を探してあちこちに走り回る日々よ。
まあ話は戻すがそういうわけで発作が収まっても安心できないわけだ。
そして原因も、解決策も未だに解らずじまい…はっ、長年生きてきたくせに、己に呆れちまう。
「それでは…」
医者はそう言うと部屋から出ていく。
そして変わらない部屋の重み。辺りにはふざけているほど重たい空気が漂う。
「幽々子…」
そんな中、紫は心配そうに手を握り幽々子を呼ぶ。しかし幽々子から返事はない。寝ているから。
「蔡、何か手がかりはなのか? お主とて長年生きているのであろう?」
「あったら当の昔に解決してる…出来てないならそれが事実だ」
「…すまん」
俺の答えを聞いて罪悪感でも感じたのか謝ってくる晴明。俺は別に気にしてないと返すと頭を撫でてやる。すると少し目を見開き驚いたものの、すぐに顔を赤く染めると下に俯向き黙り込んでしまう。
「一年から半年…」
俺は暗雲が広がり雷の響く外を見て言葉を零す。
果たしてその短い期間で解決策を見つけることが出来るのか、出来ないのか…可能性としては限りなく低い…
「ただ、やってみるしかないか…」
視線を外から幽々子に向ける。
できる限りやってみる。だから待っていてくれ、幽々子。
俺はそう決意すると、今は幽々子の傍で幽々子が目を覚ますのを待つことにした…