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五十章 なるほど、これが生涯の友ってやつか?

モチが悪かったのか文がイマイチ。


ううむ…え? 今更? やめて凹む…



強引に話を進めねば終が見えん!!







「例えどういうイベントが起きようとも、決して曲げてはいけない『何か』があるのよ。それを忘れないで、蔡」



















「…ん」



重い瞼を開ける。


ここは…どこだろう。木で出来た天井、静かで川のせせらぎが聴こえてくる…川のせせらぎ? まさか家か? ああそうか、家なんだな。どうりで天井の顔のようなシミに見覚えがあるわけだ…外も明るい…



「…家?」



ふと違和感のようなものが頭に過ぎる。


家、家、家…家!!?



「家!? いつの間n、あたたたたたた!!!」



俺は一気に頭が覚醒しきると敷かれてあった布団から飛び起きる。激痛付きで。こ、腰がぁぁぁぁぁ! あ、足も痛いぃぃぃぃぃ!!



「さ、蔡様! お目覚めですか!」



そして俺の激痛の叫びを聞いたのか、右の麩がスパーンという良い音を発し開いたかと思うと所々包帯を巻いている愛しの姫君こと藍が姿を現した。


ああ、仏が来たぞ!



「ら、藍! 痛い、痛いぞぉぉぉ!!」


「良かった、お目覚めしてよかった!!」



しかしそんな思いも一瞬、仏は悪魔に変わった!! 俺が目覚めたのを確認した藍は思いっきり腹に飛び込んできやがったのだ!!


もちろん、身体は飛び起きて激痛が走るほど弱っている。そんな弱体化の身体に飛び込みなんてされたら…



「いったぁぁぁぁぁぁぁいいいいいぃぃぃぃぃ!!!!」



結果は火を見るよりも明らか。超絶半端ないありえない表現し難い激痛が俺を襲ってきた。



「蔡様! 蔡様! 蔡様!!」


「はははは、藍よ、嬉しいのは分かったが痛いから離れてくれーーー!!」



そんな叫びも空しく、藍はひたすら俺の胸に頭を擦り付け紫達が来るまで俺に嬉しさと痛みを与え続けたのだった。























「蔡、貴方愛されるのは構わないけど、度を過ぎるとその内身を滅ぼすわよ? おもに独身の奴らに」


「それは私からも、ってことかしら? 紫」



正面に紫と幽香が座っており、幽香は紫の発言に対し睨みを送る。


幽香も紫も、普通にしてればいくらでも男が寄ってくるだろうに。ただし、普通にしてれば、だがな。



「まあまあ、お二人共」


「ふん、この裏切り者め!」


「そうよ亜紀。何自分だけ相手見つけてんのよ、ふざけんな」



左に流美亜と共に座る亜紀はまあまあと二人を宥めるも、逆効果で紫と幽香に睨まれ縮こまる。

それを見てぷっ、と笑う流美亜。


そうだよな、お前にもあれいるもんな。



「蔡、あの二人はどうして亜紀を睨んでいるの?」



そんな四人を見て何か疑問に思ったのか右に座っている幽々子が質問してくる。



「ああ、自分らだけ良い人が見つからないから恨んでるんだ」


「え? でもあの二人って確かs」



何かを言い切る瞬間、幽々子は両側に現れ怖い笑みを浮かべる幽香と紫の手で口を塞がれてしまった。



「ん~~~~! んんんん~~!」


「あら幽々子どうしたの? そんなに暴れて」


「そうよ。淑女なら穏やかにあるべきよ?」



バタバタを腕を振り回し脱出を試みる幽々子だったかが紫と幽香に顔を見られると急に静かになった。おいお前ら何してる。


静かになったのを確認した二人はおほほほと似合わない笑い声を上げると元居た場所に戻っていった。



「なあ、結局何が言いたかったんだ幽々子」


「…何でも無い」



気になって聞いてみるも、どこか青ざめた様子の幽々子はその言葉を最後に黙り込んでしまった。酷い奴らだ。

爺さんは爺さんで気づかぬとはこれ如何に? と腕を組みながら苦笑を浮かべている。



「ああそうだ、話が逸れたが、晴明と道尊は? どっちが勝ったんだ?」



あまりにもよく分からない事に意識が向いていたせいですっかり本題を忘れていた俺は改めて聞いてみる。



「それでしたらご安心を。無事道尊の討伐に成功、都も無事です。まあ少なくない犠牲も出ましたが…」


「…そっか」



まあ、戦いだからな。犠牲は付き物さ…



「ああ、それと本日は晴明殿がお見えですよ」


「おお? そうなのか?」


「ええ、正確には見舞いに来ていた、というのが正しいでしょうが。晴明殿」



藍が麩に向かってその名を呼ぶ。するとゆっくりと麩が開き



「よっ、安静にしとるか?」



所々包帯が目立つ中、元気そうな晴明が姿を現した。

ふむ…



「紫」


「…分かったわ。お祝いはまた後日ね」



声を掛けると分かってくれたのか、紫は退室していった。それを見て晴明を除く他の奴らも退室していく。



「話すならこれくらい静かな方が良いんじゃないか?」


「そうじゃな」



そう言うと布団の近くまで来る晴明。そして近くまで来るとドカッと座り込みどこからか酒の入った瓶子を横に置く。



「…まるで今日起きるのが分かってたって感じだな」


「たまたまじゃ、たまたま」



そう言うと晴明は酒をこれまたどこからか取り出した盃に注ぐ。ご丁寧にも俺の分まであるじゃないか。



「一応怪我人だぜ?」


「わしもじゃ」



クイッと軽く飲み干す晴明。そしてほれお主も、と奨めてくる。



「後で藍に怒られるな…」



そう口では言いつつもどこか穏やかな感じがする俺は酒の入った盃を手に持つと軽く、ゆっくりと酒を喉に通す。



「随分とゆっくりじゃのぅ。もっとぐいっと行けんのかぐいっと」


「飲み方はそれぞれってやつだよ」



違いないと言うとまた盃に酒を注ぎ一瞬で飲み干す晴明。辺りは静か、雰囲気も静か。しかしこういう雰囲気も悪くない。

それは晴明も同じらしく、どこか穏やかだ。



「わしは…いや、私は妖怪が大嫌いじゃ」



そんな中、ポツリポツリと語り始める晴明。俺は酒を注ぐと黙って聞く姿勢をとる。



「人と見てば問答無用で食い殺しにかかり、己の娯楽の為に平気で利用する…そういうのを何度も見て、聞いて…だから私は妖怪が嫌いじゃ」


「…」


「お主らを見た時もそうじゃ。あの場に誰もいなかったら一目散に殺しに掛かっていたじゃろうな」


「おいおい…」


「まあしかし、そうならなかったのも何かの縁なのじゃろうなあ」


「縁…」



そうじゃ、縁じゃと言うと晴明は空になった盃に酒を注ぐと今度はゆっくりと飲みながら語りを続ける。



「今考えればそうじゃ。本来ならお主らを殺そうと思えな機会は幾らでもあった。まあ殺せたかは分からんがな」


「そうなのか?」


「ああ。例えばお主が誰かと密会紛いな事をした時じゃ」


「密会?」


「そうじゃ。確か…亜紀といったか」



密会…ああ、あれな、義兄弟のやつな。



「あの時だってそうじゃ。本来ならその亜紀とやらを利用してお主を亡き者にしようとしたんじゃが、何故か上手くいかんかった」


「…待て、てことは何か? あの時突然小屋が出てきたのとかあの襲撃とかって…」


「ああ、それ私」



自分を指差し呆気からんと告白する晴明。


ええ、そうだったのか…



「あの襲撃で仕留め損なったらその時の緊張状態を利用して自滅させる予定じゃったんじゃが…まあ甘すぎたな。お主が生きているのが何よりの証拠じゃ」


「はは、まあそうだな。成功してたら俺死んでるからここにはいないもんな」


「そうじゃ」



今思い返せばあの時ほど、いや正確には初めて亜紀に対して不信感と警戒心を抱いたよな

ぁ。



「あの小娘妖怪の時もそうじゃ」


「小娘妖怪?」


「鵺じゃ、鵺」


「ああ、あの時…ってあの時もか!?」


「ああ、そうじゃ」



あまりの晴明の執念深さというかなんというか、そういったものの強さに唖然とする。俺ってそこまで危険に晒されていたんだ…



「まあ正直に言うと、あの時は何の計画もなかった」


「…へ? どゆこと?」


「あの時はたまたま依頼を受けていてな。その内容がその鵺を退治じゃったんじゃ。」


「ああ、なるほど」


「本来ならすぐに退治して帰っているところ、襲われていた娘を守るためか派手にしすぎたせいか、お主が来ての」


「…あの時ほど平和を欲したことは結構あったぞ」


「あったのか…まあ良い。その時もな、お主の顔を見てついでに殺してしまおうと思ったのじゃ」


「思ったのか!? え、ついでに、てことは鵺もか!?」


「…」



晴明が露骨に顔を逸らしやがった。



「ま、まあ良いではないか」


「良いのか…」


「おっっほん…でも殺すことは出来んかった。何故か分かるか?」


「…いや、分からん」


「あの緑髪の娘が何者かは聞いたか?」


「…」



腕を組み頭の中の記憶の棚を調べる。







こう見えても私は仏像です。







「…ああ、仏像」


「そうじゃ。仮にも仏像の前で殺生などして良いと思うか?」


「まあ駄目だわな」


「当然じゃ。だから撤退せざるを得なかった」


「…」



待て、鵺を殺す気だった時点で既に駄目じゃないのか? まあそれを突っ込むとぶっ飛ばされそうだから何も言わないけど。



「というかあの娘、知り合いなのか?」


「まあな。知り合い以上友人未満じゃ」


「微妙じゃないか」


「そんなもんじゃ」



そうなのか。



「まあ話を戻すが、とりあえずじゃ、そういうふうに幾度となく機会を潰されてしもうたんじゃ、巧い具合にな。しかしな、そうやって何度も機会を失い、長い間お主らを見ている時にある言葉が浮かんだんじゃ」


「言葉?」


「そう。それが先ほど言った『縁』じゃ」


「縁…」


「そうじゃ。本来殺し殺され合う関係の人と妖が何度も同じ面子と遭遇するなど、この言葉無しじゃ納得いかんじゃろう」



まあ確かにそうと言えばそうだわな。何しろ今のこの現代において妖怪と人間は喰う喰われる、退治するされると互いが狩人と獲物の姿を持ち合わせている関係だ。

それが退治されることも喰われることもせず何度も顔を合わせながら生きるなんて、なかなか珍しいことである。


まあかなり昔にもそんな異例なことがあったような気もするがな。長老と息子さん、あの世で元気にやっているだろうか。



「真、奇なる世の中よの」



酒を飲みながらつぶやく晴明。



「…そうだな」



俺のその言葉を最後に静かになる部屋。辺りにはいつも聞こえる川のせせらぎや小鳥達の声しか響かない。



「此度の一件、改めて感謝する」



そんな静かな中、不意に感謝を述べる晴明。俺は特に驚きもせず黙ったままでいる。



「お主達の力無くば今頃この辺りは平野と帰し妖どもが蔓延っていたであろう。本当に、ありがとう」



そう言うと晴明は体をこちらに向け、座り方を正座に帰ると丁寧に頭を下げ、再度感謝を述べてくる。



「気にすることはない。あそこが無くなると俺も困るからな。だから手を貸しただけだよ」


「ふふ、そうか」



そして会話が終わるとまた沈黙。しかしやはり、嫌いじゃないなこの空気。


そんな中、俺は残り少ない酒が入った瓶子を持つと晴明の盃に向ける。



「俺はまた人間の友人を持てるだろうかねぇ?」


「またも何も、既にいるではないか、あの小娘が」


「幽々子は娘みたいなものさ」


「そうか」


「そうさ」


「…」


「…」



しばらくの間をおいて俺が瓶子を床に置こうとした瞬間



「まあ、なれんのなら私はここに来てないさ、なんせ人と妖は喰う喰われる、殺す殺されるの関係だからな」



盃を持ち、笑いながら俺の方に突き出してきた。



「…それもそうか」



俺はそれを見て笑みを浮かべながら晴明の盃に酒を注ぐ。そして注ぎ終えると今度は晴明が瓶子を持ち、早くしろと示してくる。



「せっかちだな」


「それくらいせんと人間は生きれんよ」



違いないと思った俺は晴明に盃を差し出し、注いでもらう。そして酒独特の匂いが鼻に来たのを確認すると腕を上げる。それを見て晴明も自然の腕を上げる。



「これからよろしくな、晴明」


「お主がいらぬことをするまでな」



その言葉に苦笑を浮かべながらも



「乾杯」


「うむ、乾杯」



音頭をとり、酒を飲む。長い付き合いになりそうだな、晴明?















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