人と妖・中
いつになったら現d(ry
シリアスって難しいのね
長い、ような気が
あまり伸ばすのアレなので一挙三話投降挑戦
晴明の式神の狐が持ってきた紙に書かれた決戦日、といえばいいのか、その当日、都は言うまでもなく慌ただしく、空もまだ昼頃だというのに地獄の世と間違えてもおかしくないくらいに真っ黒で風も強くあちこちで雷が鳴るほど。
妖怪も血の気盛んな状態らしく、あちこちから唸り声や妖気を感じる。物凄い量だ。その証拠についさっき、出かけた帰りに襲われ撃退した。多分都では住民に対して外出禁止令を出しているに違いない。
そんな中、俺らは家に集まり、決戦まで短い時間ではあるが、今後の対策会議を開いている真っ最中であった。
「今回は出る者と残る者を分けていく。異論は?」
俺は参加者全員を見渡すが、特に反論はなく、静かである。
「よし、では残る物者と出る者を決める。まずは残る者、挙手を」
聞くと先に手を挙げたのは亜紀と流美亜だった。
「そうか。分かった、ならばお前らに留守を頼むとしよう。他には?」
改めて聞く。すると今度は藍が挙手した。
「私が残ります。亜紀と流美亜だけでまだ不安ですから…」
それを聞き亜紀は苦笑を浮かべ、流美亜はそんなことないもん! と抗議する。
「分かった、ならスマンがそいつらと幽々子の護衛、頼むぞ?」
「お任せを、指一本触れさせませぬ」
心強いことを言ってくれる藍。こりゃあ本気で心強い。
「蔡殿、儂は如何様に?」
「出来れば幽々子の傍で護衛を。近くに貴方が居れば幽々子も安心できるでしょうし」
「御意」
そう言うと妖忌は幽々子の傍に行き、刀に手を掛け、いつでも戦える状態になる。流石爺さん、早いな。ただその近くで飛んでいる半霊さえなければ完璧に決まるんだがなぁ…。
ついでに爺さんに半霊なるものがあるのを知ったのはつい最近である。
「さて、では紫と幽香、お前らは俺と共に出る、これで良いな?」
聞くと二人は何も言わず、首を縦に振り了承する。
「よし、なら晴明が教えてくれた時刻まで各自待機! 外には出るなよ? 危険だからな」
それを聞くと各自己の役職を果たすためか、黙々と準備を始める。
「ねぇ、蔡…」
「大丈夫だ幽々子、お前はただ座ってるだけでいいんだ」
どこか不安げに声を掛けてきた幽々子に俺は大丈夫と言うと頭を撫でる。
相変わらず外は最悪な状態だ。いや、先程よりも悪化してるかもしれないな。
「待たせたか? 蔡」
「いや、大丈夫だ」
縁側に座っていた俺の隣に突如姿を現した晴明。俺はそれに多少驚きながらもお茶の入った湯呑を渡す。
「すまん」
「気にすんな」
晴明は一気にお茶を飲み干すと苛立たしげに舌打ちをする。
「全く、道尊の奴め、このような禍いを引き起こすとは…人間かあやつは」
「さあな。でもこれだけのことを仕出かすんだ、もう人間じゃないだろう」
「そうじゃろうな…負の感情で人間は簡単に鬼にも妖にもなれる…今頃あやつも業に身を染めた妖になっとるかもしれんな」
そう言うと空になった湯呑をこちらに突き出してくる晴明。俺は苦笑を浮かべながら湯呑のお茶を入れてやる。それをまた一瞬で飲み干す晴明。おい少しは自重しろ。
そんな時、俺はふと気になっていたことを聞いてみることにした。
「なあ、今回の一件、主犯は道尊なんだよな?」
「ああ、そうじゃぞ?」
「動機は何なんだ?」
「動機か…正直なところ、私も知らぬ」
「え、そうなのか?」
なんとなく晴明なら知ってそうな気がしたんだが…
「ああ。噂では私の法力に嫉妬したとも聞くし、今の都に絶望したとも聞く。中には妖に体を乗っ取られたとも言う者もおる」
「はぁ…明確じゃねえなぁ」
「そうじゃのぅ…ただ」
ダン、と湯呑を床に叩きつける晴明。
「動機がどうあれ、これだけのことをしたのじゃ、奴は罰せなくてはならぬ。己の命をもって…」
「…」
俺は何も言わず微量のお茶を一気に飲み干す。
そんな時
「…来たか」
「だな」
東の方角より何か大量の妖気かこちらに向かっているのを感知した。それは晴明もそうらしく、俺と同じ方角に目を向ける。
「よし、防衛戦の開始と行きますか」
「うむ」
そう言うと立ち上がり玄関に向かって歩き出す晴明。
「紫、幽香」
「分かってるわ」
「これだけ派手だと子供でも気付くわよ」
「違いねえ」
それだけ話すと俺は玄関に向かう。それに続き紫達も向かう。
「蔡」
そんな折、突然幽々子が声を掛けてきた。その顔は先程よりも幾分不安そうである。
「どうしたんだ?」
「帰ってきてね? 紫達と一緒に」
今にも泣きそうな、いや、既に目の端に雫が溜まっている幽々子は物凄く俺らを止めたいのだが邪魔をしては駄目、と我慢しているのが誰の目から見ても分かる表情を浮かべながら俺に言う。
大丈夫だって、だって俺ら
「任せな、帰ってくるよ」
伊達に修羅場くぐり抜けてないからな。
「藍、爺さん、頼むぞ」
「御意。必ずやお守りします」
「爺さん言うな。任せておけ、儂の命に代えても守りきってやるわ」
その意気に呼応するかのように荒ぶる半霊。
まあ大丈夫だろう
そう思った俺はじゃあ、と手を挙げ玄関に向かう。
「一応軽く結界は張っつけておくか」
玄関を出てすぐに俺は印を切ると軽めの結界を家に張る。
「なるほどな、流石に長年生きてるだけあるわ」
「まあな」
「さて、多少安心できるようなったんじゃ、都に向かうぞ」
「はいよ。ああ、待て晴明」
「ん、なんじゃ?」
飛び立つ前に声を掛けられ飛ぶのを中断する晴明。
「まあ待て、移動手段はこっちの方が断然安全だぜ?」
そう言うと俺は紫に頼む、と言う。
「仕方ないわねぇ。はい」
それを聞いた紫はため息を吐きながらも空中を切ると例のごとく移動性抜群のスキマを出す。
「な、なんじゃこの気味悪いのは」
そのスキマを覗いた晴明典型的なことを言う。うん、そうだよな、やっぱ気味悪いよな、こんな目ん玉大量のところ。
それを聞いた紫は、そんなに気味悪いかしら、なんて言う。
それに対し幽香が、あと不気味ね、と何の抵抗なく言う。それを聞いた紫は膝から崩れると地面に手を着き、不気味で気味悪いのね…、と何やら落ち込んでいる。
両方共意味合い的には同じだろというツッコミを俺は喉の奥に飲み込んだ。
「とりあえず、行くぞ~」
あまりこうしている時間もないので俺はさっさと先に向かう。それに続き晴明も、気持ち悪、と言葉を零しながら続いて入ってくる。それを聞いてまた落ち込んだ紫と逆に笑っている幽香も続いて入ってくる。
まあ、仕方ないさ紫。気持ち悪いのは気持ち悪いんだから。
「到着っと…」
スキマ経由で予定通り都に着いた俺達。晴明、そんな二度と入るものか、と言わなくても良いじゃないか、慣れればなんとかなるって。
こら幽香、笑い過ぎ。ほら見ろ紫が三角座りしてるじゃないか。しかも地面にめり込んでる!?
「どうせ、どうせスキマは気持ち悪いですよ~だ、フンだ」
あ~あ、拗ねた…まあいいかどうせ復活早いし。
俺は視線を東の方に向ける。相変わらず物凄い妖気の量と数だ。
それを晴明も感じ取っているのか、嫌そうな表情が顔に浮かんでいる。
「厄介ね、これだけの量だと」
「ああ」
いつの間にか復活した紫も同じ方角を見て苦々しく告げる。
「それだけ潰しがいがあるということよ」
逆に幽香はこれからのことが楽しみなのか、物凄く戦意があるようだ。
「距離的に…すぐだな」
「うむ…」
そう言うとその通り、目と鼻の先の黒い雲より現れた黒い塊。どうやらお出ましのようだ。
「あらあら、実物で見ると骨が折れそうな量ね」
「折れるなんてものじゃねえだろ」
その量は一人辺り百人切りは絶対しないとならねえほどの量。
明らかに不利だぞ…
「き、きききき、来たぞーーーーーー!!!」
そんな折、目視できたらしい一人の陰陽師が大声で敵襲来を告げる。それを聞いてか、周りの兵士や陰陽師達騒がしくなる。
「全滅、とかやめてくれよ…」
それを見て不安に思ったのは言うまでもない…
「弓!! よーーーーーーーーーい!!!」
そんな折、不安をかき消すかのように大声で叫ぶ隊長らしき者。それを聞き、兵達は落ち着きを多少取り戻したらしく、弓を構える。
空から現れた奴らが急降下してくる。そして射程範囲に入った瞬間
「射てーーーーーー!!」
防衛戦は始まった。
「いっちょ頑張りますか!」
「頼むぞ!」
骨が折れそうだがな…