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四十五章 あんた、誰よ

この人の能力、実在したらこんなひどい目にあってもおかしくないんじゃあ、なんて妄想から浮かんだ話。


三人称なるものを部分的にやってみたが…ぷ、なにこれ…自分でも笑ってまうわ











亜紀との義兄弟の契りを交わしてから早三日、今日も平和に過ごしてこうぜとのんびり縁側でお茶を啜っていた時、事件は起きた。



「蔡様ーーーー!!」



ドタドタと廊下を走る喧しい音が響き渡り廊下は静かに、と注意してやろうと思った俺は、とりあえずそのやかましい来訪者を待つ。

予想だとその来訪者は亜紀だな。



「大変ですよ! 大変です!!」



果たしてその通り、滑り込み土下座をしながら狂いもなく俺の目の前で停まったのは亜紀であった

亜紀くん、ここは滑るところじゃないですよ? つうかどこからそんな技入手した。



「たたたたたた大変です!! 幽々子さんが!!」


「幽々子?」



そんな俺の心の声とは裏腹に緊迫した大声で幽々子の名を上げる亜紀。

その表情は今すぐにでも俺を連れ出したいと焦る気持ちが出ており、緊急事態だと物語るかのように服も泥だらけで乱れてしまっている。



「あの子がどうしたんだ?」



一体何が起きたんだ…






















「お前なんてあっち行っちまえ!! この死神!!」


「死んでしまえ呪われた人間!」


「あんたのせいで私の息子は! 息子は…!」




都の大通り、そこで人の塊が出来ていた。


ある者は死ねと叫び

ある者は息子を返せと嘆き

ある者は何かを投げつけ

ある者はここから出て行けと言う。


そんな酷く醜い言葉という突風が舞う中、嵐の目になっていたのは



「…」



人間としては珍しい桃色の髪色を持ち、幼いながらも美しく育つことを約束されたような容姿を持つ少女、西行寺幽々子である。だがそんな幽々子も今では無残な姿である。

着物は所々破れ、顔には所々傷があり、髪の毛や顔には泥が付き、見方によっては捨て子のような姿である。

顔からはどこか諦めたような、どうしようもないやるせないような感情があることが見て取れる。


しかしそんな少女に、現実は酷く当たる。



「お前みたいな奴、人間でもなんでもねえ!! 妖怪だ!!!」


「そうよそうよ!!」



周りも賛同するかのように次々とそうだそうだと言う。


だが少女はそんな嵐の中、先ほどの諦めたような表情を崩さずただひたすらじっと耐え忍んでいる。いや、正確にはどうとでもなれと自暴自棄になっているのかもしれない。


殺すなら殺せ


と。

そんな中、ある男が大声で叫ぶ。


この化物を殺せ


それを聞いた周りの人間達は一瞬静まり返る。しかし次の瞬間大声でその男の言葉の賛同すると幽々子の服を乱暴に掴み、どこかに連れて行こうと引きずりだす。

だがそんなことをされても幽々子は変わらず諦めた表情を浮かべているだけだった。


彼女にとってこういうことをされるのは初めてではない。それこそ生まれてこのかた数年、何度も殺されかけたし、何度も殴られたりもした。そして何度も助けられた。この場にはいない、庭師に。


でも今回はいない。それはそうだ。だって彼は今遠いところにいるんだから。

ならばどうなるのか。


死だ。


確実なる死。助けてくれる者など誰も居ない。今もこうして引きずられる中、幽々子が周りを見渡してもどの人間も知らんぷり。中にはあざ笑うかのようにこちらを指差し何かを話し込む者やわざわざ見られてから故意的に視線を逸らす者までいる。

お偉い貴族や衛兵ですら平然と横を通り過ぎる。まるでそこには何も無いかのように。

だからだろう、余計自暴自棄になるのは。


そして彼女は思う。


ああ、今度こそ私死んじゃうんだ


と。そこには恐怖も何もない。ただ死ぬんだという事実の認識しかない。

ただ、強いて挙げるなら、こんなことなら誰かと来ればよかったかな、くらいである。


そんな己を達観する少女は徐々に近づいてくる死に対して感情も抱かず、連れて行かれるのであった…



















「馬鹿野郎!! そんな大事なこと何ですぐに言わねえ!!」


「いやそんな無茶な!! あの土下座しながらとか無理でしょ!?」


「んなもん根性でどうにかしろ根性で!! この愚弟!!」


「酷いよ兄さん!?」



くだらなくも走りながら大声でしゃべり続ける俺と亜紀。

姿を変える時間すら惜しい俺達は元の姿のまま森を突っ切っている。


正直この姿で入ったら間違いなく戦闘に入るだろうがそんなことに構ってる暇はない。一刻も早くあの子を助けなければ!


俺は一秒でも本の刹那でも早く到着するため亜紀を置いていく覚悟で速度を上げる。

するとさっきまで耳に聞こえていた轟音がさらに酷く音量が上がり、周りの木々の迫ってくる速度が半端なく上がる。



「兄上~! 待って~!!」



そしてどんどん離れていく亜紀。すまん! 今は本気なんだ、遅いなら置いていく!

俺はさらに、さらに速度を上げる。

するとあっという間に亜紀の姿は消え、俺一人になってしまう。



「全く! 帰ったら修行だ!」



先ほどの謝罪などどこかに消えてしまい、地獄を見せてやると逆恨みにも似た感情で亜紀を思う。


そんなことを考えているうちに問題の場所が見えてきた。そして一瞬で到達すると門を一気に抜け、大通りを通る。途中衛兵か何かが俺の邪魔をしようとしてきたが蹴り飛ばし排除する。そして徐々に人の塊が見えてきた。


あれか!


まだ野次馬としているなら幽々子は無事だな! 俺は歓喜しながらその人だかりに向かう

、瞬間



「いっで!! てめえ、何しやがる!!」


「たわけ愚か者!! 貴様らなんぞ殴っても気が収まらんわ!! 切り捨ててくれる!!」



何やら予想外の展開が起きたようだ。


はて? 今の声は?



「じじい! なめんなよ!!」


「貴様らなんぞ舐めても不味いだけじゃわい! 毒を食ってる方がマシじゃ」



…何やら物凄い人らしい。


なんだ、誰がいるんだ?


あまりの発言などで俺は疑問を浮かべると人ごみを分け、その現場に向かった。

そして人ごみが開けたとき、目にしたのは…















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