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        亜紀と俺・中

書き悩み、とでも言うのだろうか…




「ふむ、自然を堪能するというのも乙なものだな」



家から出てしばらく、明るかった空もいつの間にか真っ赤に染まる時間帯にまでなって、しかも未だに森にいる中そんなことを言う俺ってよほど余裕があるのかそれとも愚かなのか、まあそんなことはこの際どうでもいいんだ。だがな、中には見過ごせないことだってある。例えばな



「迷子だな」



そう、迷子とかが。


正確に言えば迷子ではないのだが、探すのに手間取ってる時点で迷子も同じなんだろう。

まあこうなった要因は俺だけではないのだが。


まず初めに亜紀からの呼出状だ。

 都の近くの小屋ってどこなんだって話だよな、本当に。都の近くって言ってもそんな場所いくらでもあるだろう。それに小屋って言っても簡単に見つかるわけないんだから。あいつ本当に抜けてるぜ…今度一発締めるとしよう。でも、まあ愚痴を言っても仕方ないし、足を進めるとしようじゃないか。


俺はとりあえず早急に見つけるため、少し飛ぶことにした。本来は正体の隠蔽工作のためできる限りしようを控えたいんだが、そうは言ってられないしな。


俺はふわっと浮き上がると、森から飛び出さない程度に高度を保ち、小屋らしきものを探す。



「木だらけだなぁ…探す気失せんぜ」



浮き上がったとは言え上から見ても木々の屋根で溢れかえっているため、手がかりといえるものは何一つ発見できない。


あ~、気分が落ちる…


そう思い、少し飛翔の速度を落とし、降りようかなと降下を始めたとき、森の端で何かがきらりと光ったのが見えた。



「何だ?」



俺は少し目を凝らし見ようとした瞬間



「うわあ!?」



何かが物凄い速度でこちらに突っ込んできた。俺はそれを間一髪のところで回避するとすぐに臨戦態勢に入る。



「いきなり何か放ってくるなんて失礼なやつだな、ったく」



そんな愚痴をこぼすと、今度は先ほどとは比べ物にならないほどの量の何かがこちらに飛来してきた。



「おいおい! 俺何かしました!?」



あまりの量に俺は何かしでかしたかなぁ? なんてふざけたことを思いながら飛んでくる何かたちを掠ることなく何度も回避する。その中、回避のついでに飛来する何かをうまく掴み取ると正体を確認すべく陰陽師とかに見られる覚悟で一度高高度まで飛び上がる。



「ここまで来たら大丈夫だろ…」



一気に速度を上げ、雲に触れる直前まで上がり


さすがに雲に触れる直前まで来たんだ、大丈夫だろ


と安心し、その正体を確認する



「おっと~!? ここまで飛んできますか~!?」



はずだったのだがなんと吃驚、ここまで何かが飛来してきたじゃないか! 俺は慌てて相手の追撃から逃れようと雲の中に入る。



「う~ん、寒い…と、ここまでくればさすがに大丈夫だろ」



もしこれで来られたら一撃くらいは被弾するだろうな、油断と視界の悪さで。


そんなちょっとした不安に駆られる中、しばらく様子を見る。



「もう、良い…よな?」



いつまで経っても来ない中、少し不安げに言葉を零すと、ゆっくりと降下して、雲から出る。



「もう勘弁してくれよ…」



そしてまたしばらく様子を見る。


よし、来ないな。


そして確信した俺は一気に降下し、森の中に身を隠す事にした。



「はいと~ちゃく、っと…なんだったんださっきの」



降下し、足を地面に着け、早速さっきの強襲してきた犯人について考える。

 まずはこの手元に残っている唯一の手がかりを確認する。



「…え?」



俺はその飛来物の正体を見て驚く。だってこれって…



「葉っぱじゃねえか…」



そう、誰でも簡単に手に入る枯葉だったのだから。


枯葉を武器に飛ばしてくるなんて、どういう芸当だよ。よほどの力の持ち主でもなけりゃあできない芸当だぜ? そんなすごいやつに恨まれてるのか? そうだとしたら濡れ衣だぜ…


とりあえず俺はその証拠品の枯葉を袖の中に収納すると、周りを見渡す。早く待ち合わせの場所見つけねえ、と…



「…幸運の枯葉か? あれ」



突然のことに俺はさっきの枯葉についてふざけた考えが浮かぶ。いや、だって…



「さっき見渡したとき、なかったよな? この小屋」



そう、さっき見渡した時には無かったはずの小屋があったからだ。



「…」



俺はそれを見て警戒心を強め、戦闘態勢をとりその小屋に近づく。

 ゆっくり一歩、また一歩と。そしてそれを幾度と繰り返し、ようやく扉の前につく。そして木製の扉を横に引っ張り開く。すると



「お待ちしてました、蔡様」



お酒とつまみが綺麗に並べられている部屋に正座しながら俺を出迎える亜紀の姿があった。



「亜紀…」


「どうぞこちらへ…」



そんな亜紀は俺の呼ぶ声も聞こえてないかの如く、こちらへと座る場所に案内してくれる。俺はそれに少しばかりの警戒を抱きながらも着いていき、席に着く。



「では、蔡様…」



何を改まってか、真剣な表情で次の言葉を告げようとする亜紀。


何を、言う気なんだろうか…


俺は少しばかりの不安に苛まれながら、その言葉を待った…





















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