世界の螺子を巻くのが僕であれ君であれ、きっと世界は変わらず動く。
これはpixivにて借りさせていただいている「なんて気持ち悪い30のお題」(URL→http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=124443)に則った短編集です。
「死ね」
そう言って眉間に銃を突きつけられた。
「じゃあ君も死んで」
私は彼の口の中に錠剤を押しこんだ。
ぐだりと草の上に寝転がって溜め息をつく。私と彼と、二人並んで空を見る。
足の方から水の音。そりゃそうだ、なんったってここは川辺なわけだし。川辺で彼と二人、制服姿で。平日の昼間からこんなのだから、人にジロジロ見られてあー、うっとおしい。
何でこんな時間に学生が? ってまず目を惹かれて、次に男子と女子だから何、カップル? って変な目で見られて、それからあぁ、今平日の昼間だしサボってるのね、なんて呆れられて、最後に彼の横の銃と私の横の薬瓶にギョッと目を丸くして、でその人の視界から私たちは消える。
「何やってんだろうね、私達。あんなバカみたいな演技やって」
「だろうね、大根役者にもほどがある」
「本当、私達って演技が下手。だからうまくいかないんだろうね」
「全部が全部。気持ち悪いよな、俺達は」
ぴよぴよと能天気にヒヨドリが鳴いている。
「ところで、さっきの薬、何?」
彼が聞いてくる。私は傍らに転がしてあった薬瓶を手渡す。
「あぁ、胃腸薬……。あれ、胃腸薬って多めに取って平気だっけ」
私達の常備薬。今日も私は朝食後に飲みました。
「分からない。でも風邪薬よりかはマシなんじゃない?」
「そんなもん?」
「そんなもん」
私達はまた無言になる。空は青く澄み切って……なんかいない。どんよりと曇り空。あぁ、気分が重くなる。まるで今の私のようだ。
「ねぇ、ごめんね。こんなことに付き合わせちゃって」
「いや、俺の方こそ、だよ。ありがとう」
こんなこと。もちろん、学校からのエスケープだ。私は隣の彼とは仲が悪い、ってことになっている。今日も二人で盛大に喧嘩して、そのまま学校の外まで走ってきた。馬鹿みたい、私と彼は協力体制にあるって言うのに。そういう意味では私達は決して大根役者と言うわけではないかもしれない。
「あぁ、もう、面倒だよね」
「そうだな、全部」
「なにもかも」
「面倒くさい」
「消えてしまってもいいかな」
「死んでしまってもいいかな」
そう言って、私は胃腸薬の瓶を手に取り眺め、彼はモデルガンで安全装置を外す動作をする。そしてまた、私は薬を一錠、彼の唇に押し当て、彼もまた私の額に銃口を突き付ける。
周りの人の動きが止まる。今、この河原にいる人たちはみんながみんな私達を注目している。おじさんもおばさんも何も知らない人たちは、一体私達がどうするつもりなのかと、どう行動すべきかを分からずにただ立ち尽くして、こっちを見ている。犬でさえ吠えようとしない。
「まるで私達を中心に世界が回っているみたいだね」
「今、俺達がこうやって拮抗しているから世界は止まっている?」
「そう。世界を動かしているのは私達」
「俺が死んだら、世界は止まる?」
「私が死んでも、世界が止まる」
全てが真っ暗になって何も感じなくなって、そのまま世界は凍って止まる。けれど、私達って誰だろう? 私達の範囲はどこまで?
だからこそ、世界は永遠に動いてしまうのだ。
誰がどうあがこうと、世界と言う舞台は永遠に動き続ける。
――――世界の螺子を巻くのが僕であれ君であれ、きっと世界は変わらず動く。
どうも、玖月あじさいです。
短編集。それも初めてのお題をお借りしての挑戦です。
初めてで30題ってどうよ。って少しだけ思った。後悔も少しだけしてる←
「なんて気持ち悪い30のお題」
全てできたらいいナー。と。
それではー