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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

呪虫

作者: 中田 勘

昔、伊左衛門という男が遠出をしているときのことです。


伊左衛門が山を歩いているとき、とつぜん豪雨が降り始めました。

どこか雨宿りできるところは無いかとあたりを見渡していると、幸いにも山小屋を見つけました。

伊左衛門は喜んで山小屋に入りました。

その山小屋は雨のため湿気を持っていましたが雨漏りもあまり無いところでした。

暖を取るには毛布しかなく伊左衛門はそれに包まっていました。

伊左衛門は寝ようとしましたが表が豪雨なため眠気が来るまで寝ることが出来ませんでした。

昨晩は寝床が無くてはかなわないと早寝を心がけていました。

おかげで今日は寝つきが悪いことも承知でした。


どのくらい時間が経ったでしょうか。

カサカサカサ、という音がしました。

その音は虫が這いずる音によくにてました。

伊左衛門は不気味になって寝返りを打ちました。

すると小屋の奥に多くの目を持った虫を見た気がしました。

伊左衛門は怖くて堪りませんので反対の方向を向こうと寝返りを打とうとしますが体思うようにが動きません。

それは金縛りでなく力で無理やり縛られているようで、動くのに大変な労力を払わなくてはならないのです。

伊左衛門はあきらめて虫を見た方向を見ました。

すると今度は虫が確実に見えました。

それもさっきより近い場所で、そこで見たものは赤い複眼をもってよだれをたらしているクモでした。

伊左衛門には叫ぶ事も、目をつぶることもかないません。

クモを見ていると腹部に強烈な痛みを感じました。

それはまるで害虫の大きな卵を産み付けられたような感覚でしたが胃液が逆流する事がありませんでした。

伊左衛門の苦しみは大層なものでしたが、その姿は周りから見ただけでは目を開けて寝転んでいるようです。

幾分か時間がたちました。

伊左衛門は自害したくなる位に苦しんでいました。

そこへ幸運か不運か、伊左衛門は息が出来なくなりました。

まるで毒を盛られたようでとても疲労しましたので息は荒れてゆきました、しかし息は吐くことしか出来ません。

伊左衛門が最後に見たものは様々な虫でした。


伊左衛門は数日後にあの山小屋で見つけられました。

その姿は悲惨なものでした。

クモの糸で縛られたように白い糸で体の形が変化するほど全身を締め付けられ。

ゴキブリにでも繁殖の場とされたように死体は腐りきって。

蚊に吸いつくされたかのように体は干乾びきって。

蜂の毒にでもやられたかのように全身まっ青で。

カマキリにでも切られたかのように体中に深い切り傷かあり、頭部は縦半分に切られて首の部分で再びくっ付いていて。

アリの万力でやられたかのように全身の骨は俺に折れ。

何者の所業か見当もつかないのですが、眼球がくり貫かれて、全身の皮膚をはがされていました。

あえて言うなら虫の卵が眼のあったところに植え付けられていたような、無理やり脱皮させられたような状態でした。

その殺戮の被害者である伊左衛門は目はなかったものの無表情であったといわれています。


その話を聞いた家族のものは、悲しむ素振りもせずただ一言『やはりそうなりましたか』と口々に言うのでした。

幼少の頃から成人しても虫を娯楽の一環として殺してきた彼の死を、虫の呪いで死んだと言われて信じないものはいませんでした。

伊左衛門の死体は骨になっても回収される事はありませんでした。

きっと今頃地獄で虫たちによって苦しめられている頃でしょう。


ところで家族の話では、伊左衛門の遠出の目的とは今まで虫を殺してきたことを悔い改めるため、虫の神様が祭られている地に訪れることだったそうです。

これで十作品目です。

テレビを見ないためかこの季節でも怪談はあまり見れません。

あえていうなら怪男ぐらいでしょうか。

あと蚊に血を吸い尽くされるのは到底ありえませんよね。

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