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篠田林檎の怖い話語り

Kちゃんの話

作者: 篠田林檎
掲載日:2026/03/21

スタンドマイクで場所を移動せず、ボソボソと語ってる感じでご覧ください。

 この前ね、少し前に大きな事故があった場所に行く用があったんですよ。そしたら急に肩が重くなるから、あーついて来ちゃったなーと思って。

 でもさ、見たいじゃない。どうせついて来てるんならイケメンの方がいいし。

 で、振り向いた訳ですよ。

 急に肩が軽くなりましたよねー。


 ども、篠田林檎です。


 なんかスピーチしてと頼まれたんだけど、どうしようかなーと考えてて。

 よく怪談とか喋ってますけど、私は幽霊って見たことないんですよね。どっちか言うと、避けられてる感じで。

 だから、けっこうネタに困ってるんです。ネタを仕入れようにも、友達少ないし。

 でも、その数少ない友達に、ちょっと変わった子がいて、今日は彼女の話をしようかなーと。


 仮にKちゃんとしておきます。


 Kちゃんは中学の同級生で、お互い友達が少なかったから、いつもつるんでたんですよね。

 それで、Kちゃんがどう変わってるかと言うと、霊感がめちゃくちゃ強い……というか、霊の存在が当たり前だから、別に大したことじゃないと思ってるレベルで。


 何回かKちゃんの家に行ったことがあるんですけど、右手が神社、左手がお寺で、裏が墓地っていう、冗談みたいな家に住んでたんですよ。

 だから、神社の横の児童遊園のブランコで、生首がギコギコ揺れてても、お墓で火の玉が酒盛りしてても、まーそんなもんかなーくらいに思ってる感じで。


 そんなんだから、私も興味があって、Kちゃんに聞いたことがあるんです。

「一番怖かったことって何? やっぱ幽霊?」

 そしたら、

「幽霊は怖くないよ。元は人間だから、『うぜぇんだよ消えろ』って思えば平気」

 って笑うんですよね。それから急に真顔になって、Kちゃんはこう言いました。


「一番怖いのは、山にいる」



 ――――――――



 Kちゃんが小学校の五年生の時の話。

 まぁ、どこの小学校でもあると思うんですけど、キャンプ合宿。

 山の方にある「県民の森」みたいなところに泊まって、カレー作ったりキャンプファイヤーやったりするアレですよ。

 で、一晩泊まった次の日に、森を散策しつつのウォークラリーがあるっつー訳です。


 で、Kちゃんの班も普通にウォークラリーに行ったんですけどね。

 なんか、遭難したらしいんですわ。


 普通、ありえないでしょ。

 小学生が歩くんだし、きちんと整備された遊歩道で、一本道なんですよ。


 けれども、Kちゃんの班はどういう訳か、道じゃないところに入っちゃったんですよね。


 チェックポイントごとに先生が立ってるはずだから、そんなに困らないだろうと、Kちゃんたちは呑気に構えて、適当に歩いてたみたいなんですけど、どこまで行っても全然道に出ないから、やっぱおかしいんじゃ……となったのが、みんなとっくにゴールしてお昼ご飯を食べてるはずの正午過ぎで。

 さすがにバスに乗り遅れたらまずいとなって、Kちゃんたちは慌てたんです。


「おーい」

「おーい」

 と叫びながら、森を歩きました。多分、先生たちも探してるから、見つけやすいように声を出したんですよね。


 でも、全然反応なくて、いつの間にか辺りが暗くなってきた。

 これはヤバいとなって、まぁ、小学生だし、みんな泣きますよね。

 でも、Kちゃんはなぜかあんまり怖くなくて、

「まぁ、とりあえず落ち着こうや」

 てな感じで、リュックのおやつをみんなと交換して食べてたんです。


 そうしてると。


「おーい」

「おーい」


 って、声が聞こえたんですって。

 みんな大歓喜ですわ。迎えが来た、ってなって、大急ぎで声の方へ向かったんです。


 ……そしたら、キャンプファイヤーの真っ最中で。


 先生に、

「おまえら、何やってたんだ」

 と、めちゃくちゃ怒られたみたいなんですけど、Kちゃんたちからしたらポカーンですよね。


 でも、よくよく話を聞くと、昨日なんですよ。


 意味分かります?

 私もどう言っていいかよく分からんのですけど。


 要するに、タイムループ?

 そんな感じみたいで。


 それからまた、Kちゃんたちはキャンプファイヤーをやって一泊して……。

 ウォークラリーはさすがに怖くて、頭が痛いとか適当なことを言って、みんなでサボったって言ってました。


 それで、普通に家に帰ったんですよね。

 そしたら、お母さんがめちゃくちゃ変な顔をしたんです。


「あんた、昨日帰ってきたじゃない」

 って。


 でもまあ、それからは普通の日常に戻ったんですよね。

 で、小学校を卒業した春休みに、早速同窓会があって。同窓会といっても、小学生だから、地元の大きな公園に集まって花見するとか、そんなんですよ。

 で、断りにくくて、一応は参加したんですよね、Kちゃんも。


 その時、キャンプで同じ班だった子に、

「遭難した時は怖かったよねー」

 なんて話をしたら……。


「何、それ」


 って、めちゃくちゃ冷めた返事が返ってきて。

 はじめは、「あんまり怖かったから、忘れようとする心理的な反応だろう」って思ったそうなんですけど、やっぱ気になって、家に帰ってからお母さんに言ったんですよ。


「実は、キャンプの時に遭難したんだよね」


 そしたら、お母さんがこう返したんです。


「だって、あんた、キャンプの後から別人に入れ替わってるもんね」



 ――――――――



 Kちゃんからそんな話を聞いた時、「まーた適当な作り話をしてー」みたいな反応を返したんですよね。

 でもKちゃんは真面目な顔で。

「私も、夢か何かで見たのを現実だと思い違いしてると思ってたんだけど」

 と言って、こんな話を付け加えました。


 山の神様は寂しがり屋で、寂しくなると「神隠し」として子供を拐う。

 でも、拐った子供が死んじゃうと、余計に寂しくなるから、最近の山の神様は、時空を歪ませて、常に何人かの子供を彷徨わせている。


「どこからそんな発想が出てくるの?」

 と私が笑うと、Kちゃんはちょっと首を傾げて、

「ずっと部屋にいる小さいおじさんが言ってた」

 とか言うから、どこまで信じていいか分かりませんけどね。


 でも、確かなことがあって。


 キャンプ後の身体測定で、Kちゃん、身長が五センチ伸びてたらしいです。

 

「多分、『神隠し』されたのは私だけで、私が寂しくないように、班のみんなと一緒にいるっていう幻想を見せられてたんだよ。半日だと思ってたのも、実は何ヶ月か、一年くらい経ってたのかもしれない」

 Kちゃんはそう言ってました。


 でも、ひとつ疑問が残りますよね。


 Kちゃんよりも一日早く帰宅したKちゃんは誰なのか。


 多分、それが本来の時空線でのKちゃんで、今のKちゃんと入れ違いに、山に呼ばれたのかなーって。

 本当は同時に入れ替わるはずだったけど、山の神様が、一日間違えて帰したのかもね、と。


「山はね、そういうところだから」


 Kちゃんのお母さんも、そんなことを言ってたみたいです。

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― 新着の感想 ―
ザ・怪談って感じの1本でした。その意味で言うならば完璧。 分かりにくいって反応もあったようですが、僕は全然そんなことはなかったです。ただ、結構印象としては正攻法できたなと。そのうえで山岸さんの手掛け…
こっわ! いや、でも、面白かったです。 結局Kちゃんの結末って、どっちなんでしょう?  ・Kちゃんは半日のつもりだけど、実は山の神様のところで一年過ごして(彷徨って)帰った  ・山の神様は、別ルート…
何処から現実で何処からが心霊現象か。 その曖昧さがまた一段と怖かったです。
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