第9話 これはイベントではなく、週末の文化である
ここまで書いてきたことを、もう一度振り返ってみる。
派手な企画は、ひとつも出てきていない。
大きな予算も、補助金も、立派な実行委員会もない。
あるのは、
土日限定という区切りと、
キャプテンという役割と、
禁止しないという姿勢だけだ。
コスプレをOKにする。
撮影をOKにする。
店内撮影も、やりたい店だけOKにする。
人が増えてきたら、
トイレと更衣のために空き店舗を一つ借りる。
有償にして、フリーパスにする。
大きめのロッカーを置く。
更衣室には名前をつける。
トランスルーム。
変身するための部屋だ。
音が欲しくなったら、
ピアノを置く。
よみぃさんのように、
場を理解してくれる人に、音を通してもらう。
文化が根付いたあとで、
えなこさんを呼ぶ。
最後に、茅原実里さんが歌う。
すべて、順番の話だ。
最初に人が遊ぶ。
次に文化ができる。
最後に、有名な人が乗る。
逆にしない。
これだけは、崩さない。
この一連の流れを見て、
「それはイベントでは?」と思う人もいるだろう。
でも、イベントには終わりがある。
この企画には、終わりを作っていない。
土日になれば、
キャプテンがいる。
使っていい場所がある。
変身できるトランスルームがある。
音が鳴る日もある。
それが、ただ繰り返される。
週末のたびに、
少しずつ形を変えながら、
街に染み込んでいく。
キャプテンの仕事は、
成果を数えることではない。
人数を報告することでもない。
「今度の土日も、やっていいよ」
そう言い続けることだ。
会長として平日を守り、
キャプテンとして週末を開く。
この切り替えができるかどうか。
それだけが、分かれ道になる。
シャッター商店街を動かすのに、
特別な才能はいらない。
専門家も、コンサルも、必須ではない。
必要なのは、
少しの覚悟と、
禁止しない決心だ。
週末だけでいい。
キャプテンになればいい。
そうすれば、
シャッターの前に、人が立つ。
それはきっと、
街がもう一度、
人の場所に戻る瞬間だ。




