第6話 更衣室の名前は、トランスルーム
人が集まり、設備を用意する段階まで来ると、
次に考えなければならないのは、
その場所をどう呼ぶか、という問題だ。
更衣室、と呼んでしまえば話は早い。
機能としては、間違っていない。
でも、それでいいのか、と少し立ち止まる。
更衣室という言葉には、
どうしても制度の匂いがする。
管理、区分、注意事項、禁止事項。
そういうものが、言葉の裏側にくっついてくる。
この企画でやりたいのは、
制度を増やすことではない。
人が自由に使える場所を、そっと用意することだ。
だから、名前を変える。
トランスルーム。
トランスフォーム、変身。
ルーム、部屋。
それだけの話だ。
でも、この名前にした瞬間、
場所の意味が少し変わる。
服を着替える場所ではなく、
変身するための場所。
日常から、非日常に移るための部屋。
コスプレをしない人にとっても、
トランスルームは意味を持つ。
休憩してもいい。
荷物を置いてもいい。
少し座って、落ち着いてもいい。
機能を限定しないことで、
使い方が自然に広がる。
看板に書く言葉も、シンプルでいい。
トランスルーム
・変身OK
・再入室OK
・ロッカーあり
細かい注意書きは、裏に回す。
正面に出すのは、肯定だけだ。
ここでも、キャプテンの役割が生きてくる。
キャプテンは、名前を決める人だ。
規則を並べる前に、
まず呼び名を与える。
名前がつくと、不思議なことが起きる。
人はその場所を、
単なる設備ではなく、
物語の一部として扱い始める。
「トランスルーム、使ってきます」
この一言が出るだけで、
商店街の空気は、少し変わる。
制度だったものが、
体験に変わる。
更衣室ではなく、トランスルーム。
会長ではなく、キャプテン。
言葉を変えるだけで、
街は少しずつ、遊び始める。
次の話では、
この街に音が入ったとき、
何が起きるのかを書く。
ピアノが鳴る話だ。




