笛吹男再び
「労働力になる奴隷が減ってきたな」
「またあの星に行って奴隷を連れてこよう」
「あの星の住民はいささか気の毒だがな」
「我々の星には他の星のような軍事力も、宝石類のような名産品もないからな。労働力を手に入れようと思ったらあの方法しかないのだ」
宇宙の片隅に存在する様々な色の布を貼り付けたような不思議な色をしたとある星ではそのような会話がなされたあとに、青い惑星へと向けて一台の宇宙船が発射された。
星の色と同じように様々な色の布を貼り付けたような特徴的な服を身にまとったその異星人は青い星をその上空から見下ろす。その手には彼らの星で作られた一つの機械が握られていた。
それは一本の棒のような見た目をしたもので、片一方に口を付けて息を吹き込むことでもう片方から音が出る、いわゆる笛と呼ばれるものによく似たものだった。
しかしこれはただの笛のような原始的な楽器ではなく、複雑な操作盤を動かすことで狙った生き物を自由に動かす作用があるのだ。
かつて彼らはこの笛を使うことでこの星の子どもたちを奴隷として連れ去ったことがある。尤も、それは取引で嘘を吐かれたからであるのだが。
「さて、どこかで都合よくネズミが大量に繁殖してたりしないかな」
異星人はそう呟くと、この星を隅々までスキャンし始めた。そして、ある地域で大量のネズミがいることを突き止め、そこで仕事をすることにした。
異星人は自分の操る宇宙船で帰路を急ぎつつ首を傾げていた。大量のネズミがいる場所に降り立ち、笛を使ってネズミを退治したらなぜかそこの住民たちに半殺しの目に遭ったのだ。
あと少し逃げるのが遅れれば本当に殺されてしまったかもしれない。
「一体どうなってるんだ。昔はネズミ退治であんなに喜んでたのに」
その頃、青い星の上では実験用マウスを大量に殺した犯人探しが熱心に行われていた。
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