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その日私は、授業中にノートを破って央太に手紙を書いた。
小さく折った手紙を、休み時間にそっと央太の筆箱に入れる。
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央太、この前はごめんね。
でも、なんで怒ってるのかわからないよ。
話があるから、今日一緒に帰ろう?
誤解されないように、学校の近くの公園で待ってるから。
奈々
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放課後、私は先に公園についた。
央太、手紙読んだかな。
きっと、来てくれるよね?
11月も終わりに近づき、風が吹き抜ける公園はとても寒い。
石のベンチはちっとも温まらなくて、おしりがだんだん冷えてくる。
寒……。
ベンチに座ってしばらく待っていると、央太がきた!
私はベンチから立ち上がって、央太が近づいてくるのをドキドキして待った。
「央太…。
なんか、久しぶり。
えへへ」
久しぶりの央太に、嬉しくて自然と顔が綻んだ。
「…うん」
対する央太はなんだかぎこちない。
「話ってなに?」
「えっと…この前はごめんね!!
私頭悪いから、なんで怒らしちゃったかわからないんだけど。」
「別に、もう怒ってないよ」
「そっか。良かった」
「それで、えっと、聞きたいんだけど…
央太の好きな子って、…青木さん?」
「…なんで?」
「この前、仲良くしゃべってたから…」
「……奈々ちゃんには関係ないだろ」
また冷たい言葉。
「……………。
関係なくないもん。」
「え?」
「私、央太のことが好きだから」
「……奈々ちゃん?」
「ずっと…央太が好きだったんだもん!」
「……………」
言ってから、恥ずかしくて真っ赤になった。
央太は、私のいきなりの告白にびっくりして固まっている。
告白しても、どうせふられることはわかってる。
だって、央太には好きな子がいるんだもん。
でも、10年間も温め続けたこの気持ちを、せめて知ってほしかった。
じゃないと、この気持ちのもって行き場所がなくて…。
それに、ちょっと央太を困らせたかったのかもしれない。
「ごめんね。
じゃ!バイバイ!」
私はまだ固まっている央太を残して、走って逃げた。
走って走って、家まで帰る。
そのまま、自分のベッドに突っ伏して、思いっきり泣いた。