2
私のこと、嫌いになっちゃったのかな…。
私は昔から、優しい央太が大好きなのに…。
英語の訳を写す手を止めて、じっと央太を見ていると、央太がこっちを向いた。
「なに?
なんかわからないとこでもあった?」
「えっと…ここは…?」
私は適当にごまかした。
「ああ。これはね………」
央太は、丁寧に説明してくれる。
央太って、意外とまつげ長いよね~。
髪の毛サラサラ。
あ、アホ毛見つけた!
かわいい~。
「奈々ちゃん。
…ちゃんと聞いてる?」
私が全然聞いていないので、央太が怒る。
「え?あ~うん。
ごめん聞いてなかった。
ははは…。
もう一度お願い」
「もう。だからね……」
やばいやばい。
ちゃんと集中しなくっちゃ。
私は一生懸命、説明を聞いた。
「……終わりっと。
あ~疲れたぁ。」
私は両手を上げて伸びをした。
「よく考えたらわかるんだから、今度からはちゃんと自分でやりなよ」
「は~い」
私は適当に返事をする。
「じゃあ、俺今からお風呂入るから。
またね。」
「え~。
まだ8時じゃない。
最近、全然央太としゃべってないし、久しぶりにゆっくりしてってもいいでしょ?」
「だめ。」
「え~!
央太、最近冷たいよ~。
私のこと嫌いになったの?」
「別にそういう訳じゃなくて…」
「じゃあなんで?
学校でも、そうやってすぐ私から離れようとするじゃん!」
「奈々ちゃんと一緒にいると、つきあってるとか、勝手に色々誤解されるから」
「別に、誤解する奴には勝手に誤解させとけばいいじゃん。
そんなこと気にするなんてバカみたい」
ハッ!!
「もしかして央太…誰か好きな子いるの?」
央太がパッと赤くなった。
え…マジ???
ガーン…!!!
いきなり、頭を石で殴られたみたいなショック。
「誰?クラスの子???
応援するから、教えてよ」
嘘だった。
応援なんか、できない。
でも、央太の好きな子がだれなのか、気になって仕方なかった。
私は内心ドキドキだった。
央太の好きな子って…
もしかして……私とか…
「……奈々ちゃんには関係ない」
央太は低く冷たい声で言った。
「え………?」
「…俺のことは、もうほっといてよ。
いつまでも小さな子どものままじゃないんだから」
「……央太?」
「もう帰って。」
央太は私を無理やり窓の外に押し出して、鍵をかけてしまった。
私を拒絶するように、シャッとカーテンが引かれる。
私は、あまりのショックに、しばらく呆然とベランダに立ち尽くしていた。